章間1
お久しぶりです。
これはもうひとりの主人公のはなしです。
章間
地球、東京
1
パンッ
「ーーっ!!」
乾いた銃声が響く
非日常な出来事、二人は顔を見合わせる。
「お、なんだこ....!!!」
「銃声だ...」
静かな声で俺の大声を塞ぐ親友。彼の表情に冷静さはなく、蒼白な表情だった。
「聞こえる....」
ジャキン
という金属音。これは、銃の装填の音だ。
「逃げるぞっ...!!」
彼は、友人と共に、必死に逃げた。
階段を飛び降りて、暗い裏路地を必死に駆け抜けた。
あるのは恐怖
なにか夢見心地だった。こいつは現実じゃない。こんなB級映画みたいな出来事、ありえない。
だが、体は現実だ、彼の乱れる息と、自分の息、うるさい程近くで響く四つの足音と、そして追ってくる、人。
その足音が恐い、カツカツと聞こえてくる足音が、彼らに恐怖をじわじわと塗り込んでいく。
そして、逃げるという抵抗も、終わりに近づいていた。
「あっ....」
「ぐうっ?」
銃声が何度も響く。
そして、強烈な眠気を感じ。二人は気を失った。
2
「ーーっ!」
目覚める。
だが、体が重い。鉛が乗っかっている様な感覚に顔をしかめながら目を開く。
病室の様な殺風景
そして自分はベットの上に居るんだと気付く。
体を起こそうとするが、感覚が鈍い。
何故ここに居るのか分からない、彼はかちかちかちと固まる思考をゆっくりとほぐしていき。
---確か、裏路地で、何者かに、撃たれたんだっけな...ーーー
思い出す。
あとここは病院じゃない、殺さないなら、運ばれるんだ。
拉致されたということか。
たしかあいつ(・・・)は人生で拉致されるのはこれで二度目なのか。
以外と冷静なんだな。俺は
現実感がないからなんだろう。どこか夢見心地で、夢なのかもしれない浮遊感があった。
きっとこれこそが、夢の逆の現実なんだろう。
こういう現実感のないことが起こると、人間は本能的に拒絶し、夢の中の様な感覚を起こす。
それがいま俺の中で起こっているんだ。
ーと
唐突にドアが開く。
「失礼するよ」
美しい声
高貴な格好の金髪の中年男が入ってくる。
白い衣服、節節に金の装飾があり優雅な輝きを高々と放っている。
薄い青色の鋭い眼光。
「突然の招聘で、面食らっているかもしれないが、ようこそ、『クラッド』へ」
「私は、この総合分子研究所日本支部の所長、ルカン・デア・ヴァルシュチア。君にここへ来てもらったのは...」
言葉が止まる。
「いや、すまない、来てもらったのではなく、連れて来られたんだったね」
微笑をたたえる男、だがルカンに笑いの色素など少しも無かった。
「無理矢理でも連れて行く理由が、君の親友にあってね」
聴く者を魅了するその美声、演説慣れしているんだろう、日本人の寸胴さがなく、彼の完璧な人格がにじみ出る。そんな声だった。
「勝手ながら君も、遺伝子テストに参加させてもらった」
「遺伝子テスト?」
「理解出来なくてすまない。それについては後で説明しよう」
質問せずに聞け、という事だろう。
「遺伝子テストの照合結果、君も君の親友とは違うが、特殊遺伝子投与が可能な体だと判明した」
「君には『クラッド』への搭乗権利がある、ということだよ」
腕時計を見て、しばらく考えるルカン。その行動もどこか彼の完璧さが滲み出ている。
「彼の出航時間のようだ、私はここで失礼するよ。詳しくは、副所長が説明してくれるだろう」
「では、君の正しい結論を待っているよ」
ドアが開き、ルカンが微笑を讃える。
背筋を思わず正していたのか、どっと力が抜ける。
「なんなんだよこれは...」
ああいう雰囲気の男と対面するのは初めてで、体は硬直していたようだった。
3
あれから、十五分程、病室にいる。
「あの音はなんだったんだ?」
五分ぐらい前、この地下施設が大きく揺れ、電気が全て停電して、何かがぶつかったような揺れが一瞬だけ来た。
そしてやがては電気が戻り、揺れが収まった。
窓が無いのは地下施設なんだろう、そしてTVがあったので見ると。『大規模な計画停電にご協力ありがとうございました。』とアナウンサーが言っていた。
その停電とこの施設の組織が関係しているに違いない、と病室で思考を巡らせていると。
また、ドアが開く
今度入ってきたのは、日本人、切れ長の瞳と頭に張り付く様な質の髪。
物腰はさっきの人物とはまったく違う印象だった。
「失礼」
「ボクは知床冷多、総合分子研究所の副所長や」
俺はその後、ギンがクラッドに乗ったのと、世界の滅亡の危機と、クラッドや遺伝子の事を知った。
そして、俺に与えられた、使命。そのすべてを知った。
俺、鈴木尚の使命を...。
章間では、鈴木くんの物語を書こうと思います。
主人公に性格が似ていますが、主人公より好きです