【6】寝顔イベント、発生。〜悪魔が踊る通学路〜
遥斗は階段を見下ろす位置に立つと、深呼吸を繰り返した。
ルシアンが突然現れて消えた驚きで、心臓はどくどくと鳴り、息が苦しい。
そして、何とか平常心を取り戻して、自分の部屋に戻ると――
アンジュはなぜか、ロイヤルミルクティーを飲んでいた。
遥斗がポツリと問いかける。
「……アンジュちゃん……そのミルクティーって……?」
アンジュがにこりと微笑む。
遥斗は無意識に後ずさった。
アンジュの笑顔が美し過ぎて。
――アンジュちゃん……!
確かに美少女だったけど……美しさのレベル、変わってない!?
アンジュが屈託なく答える。
「ルシアンが置いて行ったのだ!
ハルは見ていなかったのか?
それに、チョコチップクレープも置いて行ってくれた!」
「……は?」
遥斗が目を丸くしていると、アンジュはニコニコと笑う。
「心配するな!
ハルの家の冷蔵庫のものではない!
ルシアンが持参したのだ!」
ハルは心の中で叫ぶ。
(いつの間に……!?
ていうか……ルシアンくん……何しに来たんだよ!?)
そして、アンジュはカップをソーサーに戻すと、言った。
「お腹がいっぱいで眠い!
私は昼寝をさせてもらう!
照明を消してくれ!」
遥斗は小さく「……はい」と答えると、自分の部屋の照明を消した。
理事長室のパソコンの前にいるロクシーは、黒髪を掻きむしっていた。
「あーーー!!
もう!
最初からこれ!?
ルシアン……本当にいつの間にロイヤルミルクティーとクレープ置いたのよ!?
せっかく初めてのお家イベントが……!!」
すると、イレイナが赤ワインを一口飲み、口を開いた。
「……あら?
でもアンジュはベッドで寝てるじゃない?
このままでも、次の選択肢は出るんじゃないの?」
ロクシーがガバッと顔を上げる。
「……そうだ!
気まずい雰囲気の中、ハルらしからぬ行動を取る!
確かに……アンジュちゃんはベッドでお昼寝してて正解!
よし……来い!選択肢……!!」
ロクシーが祈るように画面を見ていると、遥斗は暗闇の中、アンジュの寝顔をスマホのカメラで撮っていた。
アンジュが目覚めると――
遥斗は勉強机の上のパソコンに向かっていた。
「起きた?」
画面から目を離さず遥斗が言う。
アンジュは欠伸混じりに答える。
「うーん……私はどれくらい寝ていたのだ?
今、何時だ?」
「1時間くらいかな。
今は7時です」
「そうか!
少し遅かったが、お昼寝に丁度良いな!」
アンジュが笑顔で、ゆっくりと起き上がる。
「ねえ、アンジュちゃん」
遥斗が顔だけをアンジュに向ける。
アンジュは制服を整え、「何だ?」と立ち上がった。
遥斗がスマホをアンジュに向ける。
そして――次々と現れるアンジュの寝顔。
「……これ、誤解されると思わない?」
アンジュが遥斗の言葉に小首を傾げると、高らかに言った。
「……誤解?
私はいびきもかかないし、寝顔も寝相もおかしくはない!
普通に眠っておる!」
ロクシーがパソコンの前で叫ぶ。
「アンジュちゃん……!
それこそ普通にね……!
画像にはいびきは映らないの!
お願い……!
もう黙ってて!!」
すると、遥斗が暗い目をして言った。
「アンジュちゃんは分かってないな……。
これ、学校のみんなに見られたら……困るのはアンジュちゃんだよ?」
そして、立ち上がり、じりじりとアンジュに近付いて来る。
アンジュの背中が遥斗の部屋のドアに当たると――
バンッ……。
遥斗がアンジュの顔すれすれに、ドアを叩いた。
アンジュは、ただ、青い瞳を見開いている。
遥斗は無表情で、何の抑揚も無い声で、一言一言言い聞かせるように言い放つ。
「明日、また、この部屋で、会うんですよ」
選択肢:
①通学バッグを持って飛び出す。
②「ハル……いったいどうしたの!?」
③「……は?そんなことで脅すの!?セコいヤツね!」
ロクシーが「キターーー!!選択肢!」と歓喜の声を上げていると――
アンジュはにっこり笑って答えた。
「そうだな!
明日こそ、ハルの家の冷蔵庫の中身を食べさせてくれ!」
ロクシーは一気に脱力し――
無言で強炭酸水をガブガブと飲み、イレイナはホホホと笑った。
翌朝。
駅からの通学路の途中で、アンジュは伊織に転生したルチアーノに会った。
「アンジュちゃん!おはよ~♪」
ルチアーノは学ラン姿で、胸に赤い薔薇のコサージュを付けていた。
アンジュも笑顔で応える。
「おはよう!ルチアーノ!
お前も出番が来たのだな?」
「そう❤️
伊織になりきって高校生活をEnjoy☆
楽しみ〜♪
あ、ソレ!楽しみ♪あ、ヨイショ!楽しみ♪」
ルチアーノが突然ボックスステップを踏み出す。
通学路を通う他の生徒たちは、ポカンとルチアーノを見ている。
男子生徒A:(ルチアーノくん……受験の準備上手く行ってないのかな……?)
女子生徒A:(とうとう……!ルチアーノくんが美を追求して……壊れちゃった!?天才って大変!)
女子生徒B:(……先生に報告した方がルチアーノくんのためかなあ?)
理事長室のロクシーが、空のペットボトルをパソコン画面に投げつける。
「……あの馬鹿!!
早く歩け!
学校に行けッ!!
メリバは回避しても、伊織くんのルートも通らないと、ラストまで行けないんだよ!!」
ルチアーノはひとしきり踊ると、アンジュの通学バッグを掴んだ。
「ルチアーノよ、どうした?」
「実は……俺様のズッ友ルシアンが、昨日のルートで突然現れたんだろ!?
……隠しキャラクターだって隠せない……それは恋心!ロマン❤️
だから、ルシアンが安心出来るように、今日は俺様がアンジュちゃんの騎士になりまーすッ!Woohoo☆」
「ルチアーノよ、ありがとう!
礼を言うぞ!」
「いえいえ❤️
あとさ……今日の宿題写させて❤️
宿題まであるとか、このゲームおかしいよな!?」
アンジュがにっこり笑う。
「よかろう!」
「じゃあ、バッグだけじゃなくて、おんぶもしましょうか?お姫様☆」
ルチアーノがパチンとウインクを飛ばす。
ロクシーの怒りで――
手の中で空のペットボトルが、バキッと音を立てて厚さ1センチに圧縮される。
アンジュは無邪気に青い瞳を輝かせる。
「おんぶ!?」
ルチアーノがふわっと髪をかき上げる。
「肩車でもどうぞ❤️」
「肩車!それは楽しいな!」
アンジュが声を上げて笑う。
そんな二人を遥斗が見ていることに気付かずに。
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