【5】冷蔵庫から始まる初デートイベント。〜隠しキャラが、家宅侵入して来ます〜
アンジュはじっと遥斗を見つめた。
そして、ゆっくりと言った。
「ハルよ……。
お前の家の冷蔵庫には何がある?」
遥斗が目を見開く。
「れ、冷蔵庫!?」
アンジュが頷く。
金色の髪が、そよ風にふわりとなびく。
「そうだ!」
アンジュの断定に、遥斗は腕を組んだ。
「えーと……うち、両親働いてるし、姉ちゃん大学生だから、色々入ってる……よね。……うん」
アンジュがにこりと微笑み、すっくと立ち上がる。
「ならば、行こう!」
「え!?」
自分で誘ったのに、思わず驚いて固まる遥斗。
「お前は私に、その冷蔵庫の中の物を食べさせたいのであろう!?
今は夕方に近い!
アフタヌーン・ティータイム!
よろしい!
行こう!」
「は……はい……」
そうして二人は歩き出した。
ロクシーは頭を抱えるどころでは無かった。
この場面では①が正解ルート。
凜花は遥斗の本心が知りたくて、
トボトボと遥斗に付いて行くはずのに――
今やアンジュは堂々と遥斗の前を歩いて行く。
遥斗はまるでルシアンのように後ろから、
「次の駅で降りるね」とか
「真っ直ぐ歩いて、次の角を右に曲がって」などと言っている。
遥斗は内心パニックだった。
(アンジュちゃん……変わった!?)
だが、家に誘ったのは自分だと自分に言い聞かし、何とか自宅に着く。
アンジュは遥斗が玄関のドアを開けると
「うむ!ご苦労!」と言って家に入っていく。
そして、エヘンと胸を張った。
「知っておるぞ!
日本では土足厳禁!
この革靴を脱ぐのであろう!?」
「う……うん……。
どうぞ……」
(アンジュちゃん……!!
わざわざそんなこと言わなくてもいいよーーー!!)
そう胸の中で叫びながら、
スリッパを置く遥斗に、またもや「うむ!ご苦労!」と返すアンジュ。
遥斗がポツリと「今、家に誰もいないから」と言っても、アンジュは揺るがない。
「人の気配はしない!
私にも、それくらいは分かる!
どこで食事をするのだ!?」
ロクシーはパソコンを閉じて、オフにしてしまいたい気持ちをぐっと堪える。
そうだよ……アンジュちゃんは美貌のスイーツモンスター……!!
食べることが大好き!!
――でも!!
次……次の選択肢で……!!
遥斗はフッと息を吐くと、
空気を変えるように「俺の部屋、二階だから」と素っ気なく言うと、
トントンと軽快に階段を昇って行く。
アンジュも楽しそうに階段を登って行くと、
遥斗が、ひとつのドアの前まで来るとドアを開けた。
「入って」
「おう!お邪魔します!」
高らかに告げるアンジュに、
遥斗はギターケースを床に置くと、
「適当に座ってて」と言って部屋を出て行く。
勉強机にベッドにテレビや本棚。
アンジュは物珍しそうに、部屋の中を見ている。
中央には小さな丸テーブルもあった。
程なくして、遥斗がマグカップを二つ持って部屋に戻って来た。
「コーヒー淹れてきた。
これ、ミルクと砂糖。
アンジュちゃん、入れる派だよね」
アンジュは立ったまま、
じっと遥斗とマグカップを交互に見ているだけだ。
「どうしたの?
座れば?」
遥斗が不思議そうに訊くと、アンジュはキッパリと答えた。
「コーヒーは苦い!
私はコーヒーなど飲めないし、この部屋には椅子がない!
私は床に座ったことなどない!」
(アンジュちゃん!?)
遥斗の心の叫びは、ロクシーも同じだ。
――アンジュちゃん……!!
そこは、仕方なくミルクと砂糖を入れて、スプーンでかき回そうよ!!
告白した後だよ!?
乙女ゲームだからさあ……ミルクがくるくるとコーヒーに白い渦を巻くのを見つめたりするのッ……!!
すると、アンジュはボスンとベッドに座った。
「これで良い!
それで、コーヒーじゃないものを持って来てくれないのか?」
遥斗が、急に立ち上がり、低く言った。
「……アンジュちゃんも、その気なんだ」
「その気?」
アンジュが小首を傾げると、
アンジュの横に遥斗が座って、アンジュの肩を抱いた。
その瞬間――
選択肢:
①「ハル……!待って!……私は、あの……」
②「ハル……ハルとなら……」
③「サイテー!!帰る!」
ロクシーが思わず「キターーー!!」と叫んだ瞬間だった。
突然、ルシアンが現れて――
アンジュを抱き上げると、ドアのところに下ろした。
「ルシアン?
何をしておる?」
キョトンとしているアンジュに、ルシアンが跪く。
「一ノ瀬くんは、ジャパンの高校生。
アンジュさまとの距離を分かっておらぬ様子。
教えに参りました」
遥斗がまたもや内心叫ぶ。
(……ルシアンくん!?
ルシアンくんって誰!?)
ロクシーは普通に、パソコンに向かって叫んでいた。
「ルシアン!!あんた、隠しキャラでしょ!?
何で勝手に出て来るのよ!?」
アンジュが満足そうに微笑む。
「なるほど!」
「では」
ルシアンはアンジュに一礼すると、遥斗に向かった。
遥斗は驚いて何も言えなかった。
(こんな超渋いイケメン……うちの学園にいた!?
しかも……背が高い!
スタイル完璧!
大人っぽい!
あと……どうやって家に入ったんだよ!?)
ルシアンは無表情で淡々と告げる。
「アンジュさまと二人きりの時は、15センチ以上離れているように」
その圧。
遥斗は17年間の人生で、初めて同級生に本気で震えた。
「……はい」
それ以外、何が言えるだろう。
ルシアンは無表情のまま――
「失礼!」と言うと、走って階段を下りて行く。
玄関の扉の閉まる微かな音が、遥斗の耳に届いた。
そうして――
イレイナは笑いを噛み殺し、ロクシーは次の強炭酸水を開けた。
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