【17】魔女が仕組んだお泊り会、強制イベント開幕。〜5分で完成する要塞テント〜
アンジュがふわりと地面に立ち、高らかに告げる。
「『もちろんだよ……!』
『……うん❤️』
『……ここ、玄関だよ?』
『ルシアンよ!』
『よろしい!ではルシアンは成すべきことをせよ!』」
ルシアンはいつの間にか、学ラン姿でアンジュの前に跪いていた。
胸に手を当てて「……御意……!」と答えると、
素早く立ち上がり、
ロングリムジンの荷台を運転手に空けさせ、
次々と荷物を取り出している。
遥斗は――
喜びでいっぱいだった。
(アンジュちゃん……『もちろんだよ!』って言ってくれた!
『……うん❤️』って言ってくれた……!)
そこで、ふと考える。
(でも……『……ここ、玄関だよ?』って言ってたな……。
やっぱり玄関はNGか?
部屋でゆっくり聞きたいのかな?)
その間にも、ルシアンはテキパキと作業を進めていた。
縦長のテントのような物を、
遥斗の家の庭のデッドスペースに立て、
荷物を次々と収納している。
アンジュはと言うと――
そんなルシアンの様子を物珍しそうに見て回っている。
ロクシーはパソコン画面でその光景を見ながら、
無言でごくごくと強炭酸水を飲むと、プハッと息を吐く。
――意味が分からん!
選択肢が増えたけど……全部答えるってどういうこと!?
しかも、このメリバ確定ルートは進んでる……!
そして、ロクシーが一気に500ミリリットルの強炭酸水を飲み干すと、
ドレスを翻す音と共に、イレイナの声がした。
「あら……上手くいったわね❤️」
ピキーン……!!
その一言でロクシーは状況が飲み込めた。
イレイナを、キッと睨み付ける。
「イレイナ……!
選択肢を増やしてたのってイレイナなのね……!
何でそんなことするのよ!?」
イレイナは一人掛けのソファに座ると、
『ドン・ペリニヨン P3』が入ったシャンパンフルートを優雅に傾け、言った。
「『何で?』ですって?
私たち、契約を交わしたわよね?
私は"尊い"アンジュ画像と動画だけじゃない。
"萌え"のアンジュも水晶玉に記録するの!
先行投資よ。
このお泊り会イベントが成立しないと、
この先のルートのアンジュの萌え画像と動画を逃すことになる。
違う?」
ぐぬぬ……となっているロクシーが、
何とか言葉を絞り出す。
「じゃあ、あのハルのスマホからルシアンの声がしたのも、
イレイナの仕業なわけ!?
アンジュちゃんはともかく、
クラスメイトの女子生徒たちが不思議がらなかったのも……!!
"萌え"と関係ないじゃん!」
イレイナはシャンパンフルートの『ドン・ペリニヨン P3』を一口飲むと、
鋭い声で答える。
「あのね……!!
私たちがこの乙女ゲームのメリバ確定ルートに、
異世界転生した時のことを忘れたの!?
ルシアンは大天使の恩寵を持ってるのよ!
私だって普通にまじないが使えてるでしょ!?
ルチアーノだって、そう!
神谷伊織の部屋をまじないで、
アイツのアホらしいセンスで部屋を変えてるの!
でも、ルチアーノはジャパンの高校生活をEnjoy☆したいから、
学校では最低限のまじないしか使っていない。
中庭のセッティングとかね!」
ロクシーが腕を組み、トントンと指先で腕を叩く。
「あの時は――
アンジュちゃんの仕事がオフで、
私がアンジュちゃんのハリウッドの家は遊びに行ってた……。
そうしたら、アンジュちゃんがソファで眠った瞬間、
ルシアンが現れて……。
ルチアーノもいつものように、
ルシアン特定追跡水晶玉でそれを見てやって来て、
イレイナも現れた……。
その時、光の渦に巻き込まれて、気が付いたら、
この乙女ゲームのメリバ確定ルートにいた……。
……ん?
何でイレイナはハリウッドまで来たの?」
イレイナがホホホと笑う。
「もちろん、ルシアンが地上に降臨したからよ❤️
アンジュの隣に立って、
この地球上で一番映えるのはルシアンだから!
つまり、ルシアンとアンジュが揃ったの!
その瞬間から撮るのは当然でしょ?」
ロクシーが次の強炭酸水を開けると、低く言った。
「……いつもみたく水晶玉で撮れば良いじゃん……!」
イレイナが『ドン・ペリニヨン P3』をシャンパンフルートに注ぎながら、
妖しく笑う。
「それはね……。
ルシアンの状態をこの目で見る必要があったのよ。
ルシアンが密かにアンジュを、
今も"永遠の恋人"と思って、
確実に恋をしているかを、ね❤️」
ロクシーの目がギラリと光る。
軍師モード・オン。
「……なるほどね。
あの時、ハルのスマホからルシアンの声がしたのは……
ハルのスマホをアンジュちゃんが持っていたから!
ルシアンは自然と警戒した……!
何故なら、恋するアンジュちゃんが、
ハルのスマホを"ハルと二人で一緒に"持ったから!
そしてハルのとどめの一言、
『明日から、二日間、一緒だね』で、
ルシアンは自分が返事をすることで、
アンジュちゃんの答えを制した!」
ロクシーはグビッと強炭酸水をあおり、続ける。
「そして……
アンジュちゃんとルシアンが普通にスマホ越しに話していたら、
女子生徒たちは、ハルのスマホの状態なんてどうでも良い!
どこにいるのか分からない"白鳥学園の騎士"と話せるチャンスだから……!」
イレイナが満足気に微笑む。
「そういうこと!
それに、あの大天使ミカエルと最前線で戦える最強大天使の戦士ルシアンが、
乙女ゲームの世界のジャパンの高校生相手に、本気で恩寵を使うと思う?
今までは自分の能力だけで済ませていた。
でも……あのハルの一言に、恋心が揺れたのね。
良い画が撮れたわ❤️」
ロクシーが軍師の目線でパソコンを見る。
「……ルシアン!
このルートは回避出来ないよ。
重要イベントのきっかけだからね……!
さあ、どうするの?」
一方――
ルシアンは1分もかからず、
1メートル四方、縦2メートルの縦長のテントのような物を建てると、
その中に全ての荷物を収納し終えていた。
その間、5分。
ハルも好奇心に勝てず、質問する。
「ルシアンくん、これ何?」
ルシアンは至極真面目に答える。
「このテントは特殊な素材で出来ている。
風速100メートルの暴風にも耐えられるし、
完全防水で、
湿度と温度も完璧に保たれる。
この中には、アンジュさまの土日に必要不可欠な物が入っている」
ハルは頭を抱えそうになるのをぐっと堪える。
(風速100メートル……ってそんな風吹くことある!?
百歩譲って完全防水は分かるよ!?
でも、湿度と温度も完璧って……。
たった1分で建てたテントが!?)
すると――
アンジュが二人に向かって言った。
「勉強をしなくて良いのか?」
ルシアンがさっとアンジュに向かって跪く。
「お待たせして申し訳ございません……!」
そして、顔だけ遥斗に向けると言った。
その顔は真剣そのもの。
「一ノ瀬くん!
お宅にお邪魔してよろしいか!?」
ルシアンの迫力に、
ハルは逆に気が抜けたような返事になってしまう。
「えーと……どうぞ……」
そうして――
勉強会と言う名の、お泊まり会が始まった。
ここまでお読み下さり、ありがとうございます(^^)
明日も17時更新です☆
Xはこちら→ https://x.com/himari61290
自作のキービジュアルやキャラクターカード貼ってます♪
〈ルシアンとアンジュ(ガブリエル)をもっと知りたいあなたに…〉
【完結】大天使と“ズッ友”になりたい地獄の王。 〜柄物スーツに一目惚れしてから、すべてが始まった件〜
https://ncode.syosetu.com/n5195lb/
【完結】大天使ガブリエル、地上に爆誕!〜神の命がふんわりすぎて、祈ろうとしたら迷子になりました〜
https://ncode.syosetu.com/n2322lc/
【完結】大天使たち、日本昔話に異世界転生する。〜初恋成就作戦を決行するポンコツ地獄の王に振り回されています〜
https://ncode.syosetu.com/n7024ld/
【完結】大天使ルシアン、最強捜査官になる〜神の沈黙と愛の証明〜
https://ncode.syosetu.com/n5966lg/
【完結】大天使と最強捜査官のクリスマス戦線 〜セレニスに集う者たち、愛か使命か〜
https://ncode.syosetu.com/n9868lk/
【完結】大天使と最強捜査官のクリスマス戦線〜聖夜の余白の物語〜
https://ncode.syosetu.com/n9097lm/
【完結】地上でいちばん可愛い正月旅行〜天使と悪魔も福来たる、温泉・TOKYO・バタフライ〜
https://ncode.syosetu.com/n5279ln/
【完結】大天使、悪魔のお見合いを阻止せよ!?〜地獄の王がお見合いを断ったら、大天使に婚約者が爆誕!〜
https://ncode.syosetu.com/n2903lp/
【完結】地上でいちばん難しいバレンタインの贈り物〜天使が天使に恋してます!?悪魔と軍師も混ざる秘密の奇跡〜
http://ncode.syosetu.com/n2458ls/
【完結】大天使の初恋を、妖精王が台無しにする物語。 〜永遠の恋人は、まだ恋人未満〜
html:// ncode.syosetu.com/n3048lu/
【完結】大天使と呪われた雛人形 〜ひな祭り、初恋は断罪される〜
https://ncode.syosetu.com/n1999lw/
を読んで頂けるともっと楽しめます(^^)
こちら単体でも大丈夫です☆




