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「ルシアンよ!」と呼んだら乙女ゲームが崩壊しました。〜メリバ転生した大天使は最強騎士で全ルート救済する〜  作者: 久茉莉himari


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【13】隠しキャラ介入イベント発生。〜メリバルート、強制分岐の瞬間〜

遥斗は一睡も出来ずに、朝を迎えた。


そして、決意していた。


――お泊まり会の前に、アンジュちゃんとの距離を縮めるんだ……!!


強引なのは分かっている。


アンジュに嫌われるかもしれない。


それでも、良いと思った。


アンジュの為に――


その理由は、まだ、誰も知らない。





そんな暗い決意を抱いて遥斗が通学路を歩いていると――

やかましい声が聞こえてきた。


「今日も〜翔太は〜いい波乗ってんね〜!

ハイッ!いい波乗ってんね〜!

ぐいぐい、よしこい!ヨイショッ!」


「翔太のチームも〜いい波乗ってんね〜!

ハイッ!いい波乗ってんね〜!

ぐい!ぐい!ぐいぐい!よしこい!どすこいッ!」


ルチアーノだ。


アンジュの隣で、

アイドルのライブに行くようなうちわを振りながら、

リズムに合わせてコールしている。


アンジュはと言うと――

真剣にルチアーノのコールを聞いていた。


ルチアーノがふわっと髪をかき上げる。


「アンジュちゃん……。

俺様の翔太の試合の応援、これで良いかな?」


遥斗はその場で固まった。


(応援……!?

ルチアーノくん……。

まさか今のコールで、翔太のバスケの練習試合で応援する気!?

審判、激怒だよ!?)


アンジュが「うむ!」と頷き、

青い瞳を輝かせる。


「バスケットボールの試合の応援とやらは分からぬが、

そのコールはとても元気があって良い!


ルチアーノのソロというのも、友愛をとても感じる!

ただ……」


遥斗がホッと息を吐く。


(アンジュちゃんが止めてくれてる……!!)


アンジュは、にこりと笑って、

ルチアーノの持つうちわを指差した。


「この黒に『翔太』のゴールドの文字と、

うちわを縁取るゴールドのふさふさは、

改善の余地があるのではないか?


まるでルチアーノのうちわのようだぞ!」


ルチアーノがうちわでペチンと自分の額を叩く。


「おおっと!!

俺様のリリカルな感性は、

まず俺様に向いてしまう……尊い☆


じゃあ翔太なら、オレンジとかブルーかな?」


「とても良い!

翔太には爽やかな色が似合う!」


遥斗が心の中で叫ぶ。


(色の問題じゃないよーーー!!

まず、そのコールを止めて!!)


だが、その願いも虚しく、

ルチアーノが言った。


「じゃあ、うちわは作り直すとして☆

このコールどうですか?お姫様❤️」


(まだ……!?

まだあるの!?)


遥斗がフラフラとルチアーノに向かって歩こうとするが――


「バースケ!バスケー!

バババババスケットボール!ラブ❤️」


「バスケット!バスケット!

バババババスケットボール!

ハッピーバスケットー!リリカール❤️」


だが、その勢いに精神的にはね飛ばされ、

遥斗は何も言えず、


キャッキャと歩く二人の後方を、

何とか立ち止まらずに歩くのが精一杯だった。





そして、ルチアーノの通学路での馬鹿騒ぎは、

既にクラスのグループメッセージで話題を独占し、

大盛り上がりになっていた。


アンジュはそんなものは見ないし、

ルチアーノは

「俺様ってどこの世界線でも主役か……罪深い男☆」

と、まるで気にしていない。


当の翔太も完全に冗談だと思っているらしく、

「ウケる〜!ありがとう、ルチアーノくん!」

と笑っている始末だ。


だが、ルチアーノの本気を見てしまった遥斗には、分かる。


ルチアーノくんは、絶対にやる、と。


そして、それは――


監視カメラ経由で、

ルチアーノをパソコンで見ていたロクシーも同じだった。





そうして、体育の授業時間になった。


男子ロッカールームで着替えていると、

翔太が言った。


「あれ?ハル、どこ行った?」


ルチアーノが得意げに答える。


「翔太よ……!!

あれを見ろーーー!!」


翔太が窓からグラウンドを見ると、

遥斗は外用の水飲み場で何かしている。


「何だろ?

今日は午後から風が強くなったから、

先生に何か頼まれたのかな?


グラウンドのスプリンクラーも動いてるみたいだし!

俺も先に行くね!」


翔太がルチアーノにニカッと笑って駆けて行く。


ルチアーノも翔太の後を追った。


すると、グラウンドに出たところでアンジュに会った。


アンジュはにこりと微笑むと言った。


「ルチアーノも翔太もどうした?

何を焦っておる?」


翔太がアハハと笑う。


「焦ってないよー。

ハルが、何か先生に頼まれたみたいだから!

手伝おうかなって。


アンジュちゃんこそ、早いね?」


アンジュがエヘンと胸を張る。


「うむ!

私は、体育などやらない!


土の上を走ったりしたことなど無いからな!

だから、先生のサポートをするのだ!」


翔太は、

アンジュが具合でも悪いのかな?と思って、

それ以上は質問せずに、


「じゃあまた後で!」


と笑顔で応えると、

遥斗の元に向かう。


アンジュとルチアーノも翔太の後に付いて行くと――


遥斗は蛇口がズラッと並んだ、

外用の水飲み場にいた。


蛇口にホースを繋いで、

水飲み場をホースを使って洗い流しているようだ。


「ハル、何してんだよ?」


そう、翔太が声を掛けると、

遥斗が振り返った。


「水飲み場を使おうと思ったら土埃が凄くて……。

丁度ホースがあったから」


そして、一拍置いて言った。


「アンジュちゃん、

ちょっとお願いがあるんですけど……」


アンジュが「よかろう!」と前に出た、その時――


遥斗が蛇口を思い切り捻った。


ホースから出る水の勢いが増す。


その刹那――


壁を蹴ってルシアンが現れた。


そして、ホースの方向を変える。


次の瞬間、

ルチアーノは頭から水浸しになった。


「ハル!俺様に何をする!?」とルチアーノが叫び、

「ハル、水止めて!」と翔太も叫ぶ。


ルチアーノと翔太の大声に、

クラスメイトが集まってくる。


遥斗がさっと蛇口を捻って水を止める。


すると――


ルシアンがアンジュを抱きかかえて、

鋭く告げた。


アンジュはルシアンの腕の中でキョトンとしている。


「そのホースの水は、

確実にアンジュさまを狙っていた。


一ノ瀬くん、

理由を聞かせて貰おう」


その問いは、

鋭いだけでは無く、

厳しく威厳に満ちていて、


問われた遥斗だけでなく、

翔太も――

他のクラスメイトも、

先生までもが黙った。


強風が吹き抜ける音だけが、

グラウンドを支配している。


遥斗は直立不動で、

声を震わせ答える。


「俺は、ただ……

アンジュちゃんに手伝って貰おうと思っただけです……」


次の瞬間――


選択肢:

①「……ハル……どうして?」

②「後で話してくれればいいよ……」

③「私をびしょ濡れにしてどうするつもり?」


ロクシーが理事長室で、

歓喜の声を上げる。


「やったー!!大成功!!」


イレイナがホホホと笑い、

『ドメーヌ・ド・ラ・ロマネ・コンティ』を一口飲むと言った。


「つまり……

この一ノ瀬遥斗に対する選択肢は、

ルシアンが居たから出た。


ルシアンが隠しキャクターじゃなくても、

ゲームが成立し始めたのね」


ロクシーがパチンとイレイナにウインクを飛ばし、

「その通り!」と答えると、パソコンにかじりつく。


「さあ……!

アンジュちゃん!

頼んだよ!」


そう、この瞬間こそ、

隠しキャクターでも隠れないルシアンが、

メリバ確定ルートに召喚された合図だった。


そして、アンジュが口を開いた。

ここまでお読み下さり、ありがとうございます(^^)

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