第八話 庭園の月光と、初めての野外放置調教
深夜のヴェルモンド公爵邸の庭園は、満月の青白い光に照らされていた。
薔薇のアーチが影を落とし、噴水の水音だけが静かに響く。
昼間の熱気はすっかり冷め、夜風が肌を撫でるたび、微かな震えが走る。
蝋燭の灯りは届かず、月光だけがすべてを冷たく、妖しく浮かび上がらせていた。
私はエリカを寝室から連れ出し、鎖の先を手に庭の奥深くへと導いた。
彼女は首輪を着けたまま、夜の冷気に震えながら歩く。
手首と足首には昼間の絹紐の薄い痕が残り、肌は夜露でわずかに湿っている。
鎖のじゃらじゃらという音が、彼女の荒い息遣いと重なる。
庭の中央、噴水のすぐ傍に、古い石の柱があった。
かつては蔦が絡まっていたのだろうが、今は剥き出しの冷たい石肌が月光に晒されている。
私は鎖をその柱に巻きつけ、エリカを柱に背を向けて立たせた。
両手を頭上に引き上げ、鎖で柱の上部に固定する。
足は軽く開かせ、足首も鎖で柱の下部に繋いだ。
月光の下で、彼女の姿が静かに浮かび上がる。
エリカの瞳が恐怖で揺れた。
唇が震え、掠れた声が夜風に溶ける。
「……ここで……放置……? いや……寒い……誰かに……見られたら……」
「ええ、そうよ。放置するの。……あなたがどれだけ惨めな立場になったのか、月と庭の薔薇と、通りすがりの使用人に知らしめるために」
私は彼女の顎を軽く掴み、顔を上げさせた。
月光が青みがかった瞳を照らし、涙が一筋、頰を伝う。
「動けないようにしてあげたわ。……夜露に濡れて、冷えて、孤独に苛まれ……それでも過去の罪を思い出すあなたの心を、じっくり味わわせてあげる」
私はゆっくりと後ずさり、噴水の縁に腰を下ろした。
エリカの姿を、遠くから眺める。
鎖に繋がれ、開かれた姿勢が月光に照らされ、彼女の息が白く夜空に溶ける。
夜風が吹くたび、肌が粟立ち、鎖が小さく鳴る。
エリカは必死に身をよじった。
鎖がじゃらじゃらと鳴り、柱に擦れる音が響く。
「いや……寒い……アリアナ様……お願い……戻して……」
「戻さないわ。……あなたは今から、夜通しここにいるの。朝まで、誰にも触れられず、ただ放置されて……自分の罪と向き合うのよ」
私は立ち上がり、彼女に近づいた。
指で首輪の痕を軽く撫でる。
「あなたはね、エリカ……元の世界で、私を冤罪で追い詰め、人生を壊した女。今は違うわ。公爵令嬢の前に鎖で繋がれ、逃げられない。この夜の庭で、孤独に過去を思い出しなさい」
エリカの息が荒くなり、瞳に涙が溜まる。
私は言葉を続け、容赦なく畳み掛けた。
「あなたはもう、男爵令嬢ではない。私のそばで仕えるだけの存在。毎日こうして、私の前に縛られ、放置され、過去の罪を償う。あなたはもう、普通の令嬢には戻れない。私のそばで、忠実に仕える存在に……作り変えられるのよ」
エリカの身体が小さく震え始めた。
瞳が虚ろになり、唇が震える。
私は鎖の結び目を指で確認しながら、静かに告げた。
「言ってみなさい、エリカ。『私はアリアナ様の忠実なメイドです』って」
エリカは首を激しく振った。
涙がぽろぽろと零れる。
「いや……言えない……そんな……」
「言えなかったら……このまま朝まで放置よ。孤独の中で、過去のことを思い出し続ける?」
私は静かに見つめ続けた。
エリカの唇が震え、ついに小さな声が漏れた。
「……わたしは……アリアナ様の……忠実な……メイド……です……」
その瞬間、エリカの肩が落ち、涙が石畳に落ちた。
私はゆっくりと鎖を緩め始め、彼女の額に優しく手を置いた。
「いい子ね、エリカ。……少しずつ、あなたの心も、私のものになっていくわ」
月が中天に昇り、庭園を青白く照らす。
エリカは鎖に繋がれたまま、肩を震わせて泣き続けていた。
彼女の心は、まだ「助けて」と小さく叫んでいる。
だが、夜の庭で放置され、過去の罪を突きつけられる屈辱を――もう、忘れられなくなっていた。
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