第七話 寝室の燭台と、初めての拘束調教
夜更けのヴェルモンド公爵邸、私の私室は深い静寂に包まれていた。
重厚な天蓋付きのベッドが部屋の中央に鎮座し、四隅の柱には太い絹の紐が用意されている。
壁の燭台に灯された無数の蝋燭が、橙色の揺らめく光を投げかけ、部屋全体を暖かな色に染め上げていた。
空気には甘い蝋の匂いと、微かに残る浴室の石鹸の香りが混じり合っている。
エリカは鎖に繋がれたまま、私の足元に跪いていた。
浴室での出来事の後、彼女の身体はまだ疲弊し、肌は汗でしっとりと輝いている。
首輪の革は湿って柔らかく、首筋に薄い痕を残していた。
彼女の瞳は虚ろで、すでに心が疲弊し始めている。
私はベッドの縁に腰を下ろし、鎖をゆっくりと引いた。
「今夜は……ここで、ゆっくりとあなたと向き合うわ、エリカ」
エリカの唇が震え、掠れた声が漏れた。
「……もう……限界です……アリアナ様……」
「限界? ふふ……あなたはまだ、私のそばにいることを受け入れていないわね」
私は彼女の顎を軽く掴み、顔を上げさせた。
青みがかった瞳が涙で潤んでいる。
「まずは……動けないようにしてあげましょうね」
私はエリカをベッドに押し倒した。
彼女の両手を頭上に引き上げ、四隅の柱に張られた絹の紐で手首を優しく、しかし確実に縛りつけた。
次に両足を軽く開かせ、足首も同様に固定する。
X字に開かれた姿勢が、燭台の光に照らされて静かに映る。
エリカは必死に身をよじった。
紐が肌に軽く食い込み、わずかな抵抗が彼女の息を乱す。
「いや……こんな……動けない……」
「動けないのがいいのよ。……あなたはもう、私の思うままにされるだけの存在なんだから」
私はベッドに上がり、彼女の横に腰を下ろした。
銀髪が背中を流れ、燭光にきらめく。
「あなたはね、エリカ……元の世界で、私を冤罪で追い詰め、人生を壊した女。生意気で、傲慢で、弱い者を踏みつけるのが好きだった。でも今は違うわ。公爵令嬢の前に縛られ、逃げられない。この紐が、あなたの立場を思い出させてあげる」
エリカの息が荒くなり、瞳に涙が溜まる。
私は言葉を続け、容赦なく畳み掛けた。
「あなたはもう、男爵令嬢ではない。私のそばで仕えるだけの存在。毎日こうして、私の前に縛られ、過去の罪を償う。あなたはもう、普通の令嬢には戻れない。私のそばで、忠実に仕える存在に……作り変えられるのよ」
エリカの身体が小さく震え始めた。
瞳が虚ろになり、唇が震える。
私は紐の結び目を指でなぞりながら、静かに告げた。
「言ってみなさい、エリカ。『私はアリアナ様の忠実なメイドです』って」
エリカは首を激しく振った。
涙がぽろぽろと零れる。
「いや……言えない……そんな……」
「言えなかったら……この紐を解かないわよ。朝までこのままで、過去のことを思い出し続ける?」
私は静かに見つめ続けた。
エリカの唇が震え、ついに小さな声が漏れた。
「……わたしは……アリアナ様の……忠実な……メイド……です……」
その瞬間、エリカの肩が落ち、涙がシーツに落ちた。
私はゆっくりと紐を緩め始め、彼女の額に優しく手を置いた。
「いい子ね、エリカ。……少しずつ、あなたの心も、私のものになっていくわ」
燭台の炎が揺れ、二人の影が壁に長く伸びる。
寝室の静寂に、エリカの嗚咽だけが響いていた。
彼女の心は、まだ「助けて」と小さく叫んでいる。
だが、縛られた状態で過去の罪を突きつけられる屈辱を――もう、忘れられなくなっていた。
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