第六話 浴室の湯気と、初めての洗体奉仕
夜のヴェルモンド公爵邸は、静寂に包まれていた。
客間での鏡前での出来事の後、エリカはもう歩く力すら残っていなかった。
膝が小さく震え、首輪の革は汗で湿って黒く光っている。
私は鎖の先を手に、彼女をゆっくりと浴室へと連れて行った。
大理石の床に湯気が立ち込め、大きな浴槽からは熱い湯が音を立てて満ちている。
壁一面の鏡が湯気で曇り、燭台の炎がぼんやりと反射する。
湿った空気が肌にまとわりつき、甘い石鹸の香りが漂う。
私はエリカの鎖を浴槽の縁に固定し、彼女を膝立ちの姿勢にさせた。
「今夜は……私があなたを綺麗にしてあげるわ、エリカ」
エリカの青みがかった瞳が、怯えと諦めで揺れた。
唇が震え、掠れた声が漏れる。
「……もう……許して……アリアナ様……」
「許す? まだよ。あなたは汚れているわ。……過去の罪で、べっとりと」
私は浴槽の縁に腰を下ろし、彼女の顎を指で持ち上げた。
湯気で濡れた黒髪が頰に張り付き、涙と汗で顔が輝いている。
「まずは……自分で洗いなさい。私の前で」
エリカは首を振った。
だが、私は鎖を軽く引いて首を締め上げ、息を詰まらせる。
「自分で。……ちゃんと、見せて」
エリカの震える手が、石鹸を泡立てた。
肩から腕へ、ゆっくりと泡を滑らせる。
湯気が彼女の動きを柔らかく包み、鏡に映る姿は静かに揺れている。
彼女は鏡に映る自分の姿を避けようとするが、私は顎を掴んで正面に向けさせた。
「見て。……自分がどれだけ惨めな姿で洗われているか」
エリカの息が荒くなり、瞳に涙が溜まる。
私は言葉を続け、容赦なく畳み掛けた。
「元の世界で、私を冤罪で陥れた罪。今は違うわ。公爵令嬢の前に跪き、鎖に繋がれ、私の手で清められる存在……この湯で、過去の汚れを洗い流しなさい」
エリカの身体が小さく震え始めた。
私は立ち上がり、彼女の背後に回った。
自分のドレスを脱ぎ、湯着に着替えた姿で彼女に近づく。
「今度は、私が洗ってあげる」
私は石鹸を手に取り、彼女の背中を滑らせた。
泡が肌を覆い、指先でゆっくりと撫でる。
肩から腰へ、丁寧に、しかし確実に。
エリカの身体がびくびくと震え、鎖がじゃらりと鳴る。
「んぐっ……アリアナ様の……手……」
私は前へ回り、彼女の肩を両手で包んだ。
泡で滑る肌を、静かに洗う。
エリカの膝が崩れそうになるが、私は鎖を支えに彼女を立たせた。
「ほら、もっとしっかりしなさい。……私の手で洗われて、過去の罪を思い出しなさい」
私は片手を彼女の髪に伸ばし、丁寧に洗い流した。
湯気が二人の身体を包み、鏡に映る姿は、完全に主従のそれだった。
「いい子ね、エリカ。……あなたはもう、私の手でしか綺麗になれない身体よ。これから毎日、こうして……清められ、過去を償っていくの」
浴室の湯気が、静かに続き、エリカの嗚咽を優しく溶かしていった。
彼女の心は、まだ「こんなの嫌だ」と小さく呟いている。
だが、この洗体の儀式を――主による清めの時間として、深く覚え始めていた。
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