表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
公爵令嬢のメイド奴隷~前世の冤罪は、異世界で立場を逆転させる~  作者: 華咲 美月


この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

6/22

第五話 客間の鏡と、初めての自己奉仕

 夕暮れのヴェルモンド公爵邸は、橙色の光に包まれていた。


 客間の一つ――普段は来客をもてなすための豪奢な部屋――に、私はエリカを連れて入った。


 部屋の中央に置かれた大きな姿見鏡が、壁一面を覆うように立ち、燭台の炎が無数に反射して揺れている。


 絨毯は深紅で、足音を吸い込み、静寂を深くする。


 エリカは鎖に繋がれたまま、膝をついて進んだ。

 膝の擦り傷はまだ赤く、首輪の痕が薄紫色に変わり始めている。


 彼女の瞳は虚ろで、午前から続く屈辱の連鎖に、すでに心が疲弊し始めている。


 私は扉を閉め、鍵をかけた。

 ゆっくりと彼女の鎖を解き、代わりに鏡の前に立たせた。

  「立って、エリカ。……鏡の前に」

  エリカはよろよろと立ち上がった。


 鎖は外れたが、首輪だけは残っている。


 鏡に映る自分の姿を見て、彼女は小さく息を呑んだ。

 乱れた黒髪、涙で腫れた目、傷ついた肌……。


 すべてが、鏡の中で惨めさを映し出している。

  「見てごらんなさい。……これが、今のあなたよ」

  私は彼女の背後に立ち、両手で肩を掴んだ。


 耳元に静かに語りかける。

  「元の世界では、生意気な女子大生だった。誰かを冤罪で陥れて、平気で笑っていた。でも今は違う。公爵令嬢のメイドとして、毎日私の命令に従い、過去の罪を償う存在……自分の姿を、鏡で直視しなさい」

  エリカの唇が震え、鏡の中の自分が、首を振ろうとする。

  「……いや……こんなの……私じゃない……」

  「嘘はつかないで。見て」

  私は彼女の顎を軽く持ち上げ、鏡に向けさせた。

  「あなたはもう、男爵令嬢ではない。私のそばで仕えるだけの存在。首輪を着けられ、逃げられない。『痴漢冤罪をかけた女が、公爵令嬢の前に跪く』……その事実を、鏡で確かめなさい」

  エリカの息が荒くなり、瞳に涙が溜まる。


 私は言葉を続け、容赦なく畳み掛けた。

  「あなたはもう、普通の令嬢には戻れない。私のそばで、忠実に仕える存在に……作り変えられるのよ」

  エリカの身体が小さく震え始めた。


 瞳が虚ろになり、唇が震える。

  私は鎖の跡を指でなぞりながら、静かに告げた。

  「言ってみなさい、エリカ。『私はアリアナ様の忠実なメイドです』って」

  エリカは首を激しく振った。


 涙がぽろぽろと零れる。

  「いや……言えない……そんな……」

  「言えなかったら……もっと厳しくするわよ。この鏡の前で、毎日自分の姿を直視させる?それとも、使用人たちを呼んで、あなたの立場を証明させる?」

  私は静かに見つめ続けた。


 エリカの唇が震え、ついに小さな声が漏れた。

  「……わたしは……アリアナ様の……忠実な……メイド……です……」

  その瞬間、エリカの肩が落ち、涙が床に落ちた。


 私はゆっくりと彼女を抱き寄せ、鏡に映る二人の姿を見せつけた。


 私の銀髪と彼女の黒髪が絡み合い、夕陽に輝いている。

「いい子ね、エリカ。……少しずつ、あなたの心も、私のものになっていくわ」

  燭台の炎が揺れ、鏡の中のエリカは、虚ろな瞳で自分を見つめ続けていた。


 彼女の心は、まだ「こんなの私じゃない」と小さく抵抗している。


 だが、鏡に映る自分の惨めな姿と、過去の罪を突きつけられる屈辱を――もう、忘れられなくなっていた。


最後まで読んでいただきありがとうございます。

よろしければブックマーク登録、広告下の☆☆☆☆☆から評価をお願いします。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ