第一九話 公爵邸への帰還と、最後の完全隷属の儀式
領主館での数日間の出来事を終え、私たちはヴェルモンド公爵邸へと馬車で戻った。
馬車の揺れは穏やかだったが、エリカの心はもう、どんな振動にも敏感に反応するようになっていた。
彼女は馬車の床に膝をつき、首輪の鎖を私の手首に繋いだまま、静かに震えていた。
黒髪は乱れ、青みがかった瞳は虚ろに揺れ、唇からは途切れ途切れの息が漏れていた。
「もう……アリアナ様……わたし……壊れました……」
掠れた声で、彼女は初めて自分からそう呟いた。
抵抗の色は完全に消え、代わりに深い諦めと――静かな服従が混じっていた。
私は鎖を優しく引いて、彼女の顎を上げさせた。
涙で濡れた瞳が、私を映す。
「ええ、壊れたわね、エリカ。でも……壊れたあなたは、私のものよ。完全に」
公爵邸に到着したのは、夜の帳が完全に下りた頃だった。
使用人たちが灯りを落とした静かな邸内を、私はエリカを鎖で引いて、私の私室へと連れて行った。
部屋は燭台の炎だけで照らされ、重厚な天蓋付きのベッドが中央に鎮座している。
窓からは月光が差し込み、銀色の光が床を優しく染めていた。
私はエリカをベッドの前に跪かせ、鎖を柱に固定した。
彼女は膝をついたまま、額を床に押しつけて震えている。
「最後の儀式よ、エリカ。……あなたが、私に完全に隷属することを、言葉で誓うの」
私はベッドに腰を下ろし、静かに語りかけた。
銀髪が月光に輝き、部屋の静寂を優しく包む。
「言ってみなさい。……『わたしはアリアナ様の永遠の忠実なメイドです。心も身体も、すべてを捧げます』って」
エリカの唇が震え、涙がぽろぽろと零れる。
だが、声はもう、迷いがない。
「……わたしは……アリアナ様の……永遠の忠実なメイドです……心も……身体も……すべてを……捧げます……」
その言葉を聞いた瞬間、私は彼女の肩を抱き寄せた。
額に優しく手を置き、静かに頷く。
「これで……あなたは完全に、私のものよ」
エリカは涙を浮かべながら、弱々しく頷いた。
瞳には、もう抵抗の色はなく、ただ深い服従と――穏やかな充足だけが満ちていた。
私は彼女をベッドに横たえ、縄を緩めて自由にさせる。
月光がベッドを照らし続け、二人の影が壁に長く伸びる。
静かな夜の中で、エリカの嗚咽は次第に穏やかな吐息に変わっていった。
「元の世界で私を追い詰めた罪は、もう許してあげる。でも……あなたは永遠に、私のそばで仕えるのよ」
エリカは涙を拭い、静かに頷いた。
これで、復讐は終わった。
そして、新たな主従の物語が、永遠に始まる。
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