第十七話 領主館の庭園回廊と、初めての朝露鞭打ち
朝の回廊での出来事の後、エリカの身体はすでに限界を超えていた。
膝が擦り切れ、肩を震わせて私の足元に崩れ落ちた。
首輪の革が首に食い込み、首筋の痕が薄紫色に広がり、黒髪は乱れて顔に張り付き、青みがかった瞳は焦点を失いかけていた。
私は鎖を引いて彼女を庭園回廊の入り口まで連れ出した。
朝陽が庭園の薔薇を照らし、露が花弁にきらめく美しい朝だった。
回廊の柱に細い革鞭が用意されていた。
黒く艶やかな革が、朝光に冷たく光る。
「まだ朝の儀式は終わっていないわ、エリカ。……今日は、あなたの身体に、私の痕を刻んであげる」
エリカの瞳がわずかに見開かれた。
唇が震え、弱々しい声が漏れる。
「……鞭……? もう……耐えられない……」
「耐えられないのがいいのよ。……痛みが、あなたの心を完全に折るまで」
私は鎖を柱に巻きつけ、エリカを四つん這いのまま背を向けて立たせた。
腰を高く持ち上げさせ、姿勢を正させる。
朝陽に照らされた彼女の姿が、静かに浮かぶ。
私は革鞭を手に取り、ゆっくりと空を切った。
鋭い音が朝の静寂を裂く。
「まずは……軽く、ね」
鞭の先が、エリカの背中に軽く触れた。
ぴしっ、という乾いた音が響き、薄い赤い線が肌に浮かぶ。
エリカの身体がびくりと震え、鎖がじゃらりと鳴る。
私はもう一度、ゆっくりと鞭を振り下ろした。
今度は少し強く、背中に赤い痕が二本、三本と増えていく。
ぴしっ、ぴしっ……と、規則的な音が庭園回廊に響く。
エリカの息が荒くなり、瞳に涙が溜まる。
「あなたはね、エリカ……元の世界で、私を冤罪で追い詰め、人生を壊した女。今は違うわ。公爵令嬢の前に這い、鞭の痕を刻まれ、過去の罪を償う。この鞭のように、私の忠誠の証を、身体に刻みなさい」
エリカの身体が小さく震え始めた。
私は言葉を続け、容赦なく畳み掛けた。
「あなたはもう、男爵令嬢ではない。私のそばで仕えるだけの存在。毎朝こうして、私の前に這い、鞭の痕を新しく刻み、忠実に仕える。あなたはもう、普通の令嬢には戻れない。私のそばで、忠実に仕える存在に……作り変えられるのよ」
エリカの唇が震え、喉が詰まる。
私は鞭を置き、彼女の肩を軽く押さえて顔を上げさせた。
「言ってみなさい、エリカ。『私はアリアナ様の忠実なメイドです』って」
エリカは首を激しく振った。
涙がぽろぽろと零れる。
「いや……言えない……そんな……」
「言えなかったら……この鞭をもう一度、強く振り下ろすわよ。朝陽の下で、使用人たちの視線の中で、過去のことを思い出しなさい」
私は静かに見つめ続けた。
朝陽が庭園を照らし、薔薇の露がきらめく中、エリカの唇が震え、ついに小さな声が漏れた。
「……わたしは……アリアナ様の……忠実な……メイド……です……」
その瞬間、エリカの肩が落ち、涙が石畳に落ちた。
私はゆっくりと鎖を緩め始め、彼女の額に優しく手を置いた。
「いい子ね、エリカ。……これが、あなたの新しい朝の儀式よ。毎朝、こうして鞭の痕を刻み、皆に見られながら、私に忠誠を誓うの」
朝陽が庭園回廊を優しく照らし続け、エリカの嗚咽が静かに響いていた。
彼女の心は、まだ「痛い……でも……」と小さく葛藤している。
だが、鞭の痕と朝の公開的な場で立場を認めさせられた屈辱を――もう、忘れられなくなっていた。
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