第十三話 領主館の地下牢と、初めての鉄枷と蝋燭責め
馬車が領内の小さな領主館に到着したのは、夕暮れが迫る頃だった。
古い石造りの建物は、公爵領の外縁に位置し、普段は地方の代官が管理するだけの静かな場所。
謁見の間での出来事の後、夕闇が完全に落ちた頃、私はエリカを地下牢へと連れ込んだ。
石段を下りるたび、冷たい湿気が肌を刺し、松明の炎が壁に長い影を投げかける。
地下牢は古い領主館の遺構で、普段は使われていないが、私の指示で事前に清掃されていた。
鉄の扉が軋む音を立てて開き、冷たい空気が一気に流れ込む。
エリカは鎖に引かれ、膝をついて石の床に這い進んだ。
謁見の間での屈辱がまだ心に残り、膝が震え、息が荒い。
首輪の革は汗で湿り、首筋の痕が薄く浮かび上がっていた。
青みがかった瞳は涙で濡れ、唇は震えていた。
私は鉄の扉を閉め、鍵をかけた。
地下牢の中央に、古い鉄製の台が置かれている。
四隅に鉄の輪が備えつけられ、冷たく光る。
「ここで……今夜はゆっくりと、あなたと向き合うわ、エリカ」
エリカの身体がびくりと震えた。
掠れた声が、石壁に反響する。
「……もう……皆に見られたのに……まだ……?」
「ええ、まだよ。公開されただけでは、あなたの心は完全に折れていないわ。……だから、今度は誰も見ていない場所で、徹底的に向き合ってあげる」
私は鎖を引いて彼女を鉄の台に近づけ、仰向けに寝かせた。
両手両足を大きく開かせ、四隅の鉄輪で手首と足首を固定する。
カチリ、カチリと重い音が響き、エリカの肢体が完全に開かれた。
鉄の冷たさが肌に触れ、彼女は必死に身をよじった。
「冷たい……鉄が……いや……動けない……」
「動けないのがいいのよ。……あなたはもう、私の思うままにされるだけの存在なんだから」
私は傍らの台に置かれた松明を手に取り、炎を近づけた。
暖かな光がエリカの顔を照らし、影が壁に揺れる。
「あなたはね、エリカ……元の世界で、私を冤罪で追い詰め、人生を壊した女。今は違うわ。公爵令嬢の前に縛られ、逃げられない。この地下牢のように、暗闇の中で過去の罪を思い出しなさい」
エリカの息が荒くなり、瞳に涙が溜まる。
私は言葉を続け、容赦なく畳み掛けた。
「あなたはもう、男爵令嬢ではない。私のそばで仕えるだけの存在。毎日こうして、私の前に縛られ、過去の罪を償う。あなたはもう、普通の令嬢には戻れない。私のそばで、忠実に仕える存在に……作り変えられるのよ」
エリカの身体が小さく震え始めた。
瞳が虚ろになり、唇が震える。
私は鉄輪の鎖を指で確認しながら、静かに告げた。
「言ってみなさい、エリカ。『私はアリアナ様の忠実なメイドです』って」
エリカは首を激しく振った。
涙がぽろぽろと零れる。
「いや……言えない……そんな……」
「言えなかったら……この地下牢で朝まで、暗闇と向き合い続けるわよ。過去のことを、ゆっくりと思い出しなさい」
私は静かに見つめ続けた。
地下牢の松明が揺れ、影が壁に長く伸びる。
エリカの唇が震え、ついに小さな声が漏れた。
「……わたしは……アリアナ様の……忠実な……メイド……です……」
その瞬間、エリカの肩が落ち、涙が石の床に落ちた。
私はゆっくりと鉄輪を緩め始め、彼女の額に優しく手を置いた。
「いい子ね、エリカ。……少しずつ、あなたの心も、私のものになっていくわ」
地下牢の冷たい空気が、静かに続き、エリカの嗚咽を優しく包み込んだ。
彼女の心は、まだ「壊れてしまう」と小さく叫んでいる。
だが、誰も見ていない暗闇の中で、過去の罪と現在の立場を認めさせられた屈辱を――もう、忘れられなくなっていた。
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