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5話

 


 一段落ついたところで、ザックが少し言いづらそうに、しかし持ち前の好奇心に負けた顔で切り出してきた。


「ところでさ、気分を害したら言わなくていいんだけど……お前んちの祖先って、昔は『盗賊』だったって本当か? いや、マジで言いたくなければいいんだけどさ」


 マリーゴールドは、迷いなく頷いた。


「ああ、それは本当らしい。親戚が集まると、最後はだいたいその話になるな」


「ほうほう………」


「金持ちを襲う一方で、貧乏な農民は襲わない。むしろ施しをしていた『義賊』だったって、酔っ払うたびに爺さんが誇らしげに語ってるよ。というか、よくそんなことまで調べたな。今じゃ、知ってる人間の方が少ないはずだぞ?」


「俺の諜報能力を舐めないでもらえるかな? 新入生のなかでも、お前は目立って面白そうなやつだから、念入りに調べておいたのさ」


 ザックは、得意げに鼻を鳴らした。


「……ところでさ。お前、俺に対して全然ビビってないよな? 」


 マリーゴールドの顔を覗き込むようにして言う。


「自分で言うのもなんだけど、俺は一応、貴族の次男だぜ。普通、平民の特待生なら、もう少し腰を低くするもんだけど……なんか、俺の方が腰が低くなってないか?」


 ザックが自嘲気味に笑う。


 マリーゴールドは、無表情のまま答えた。


「それは……赤ん坊の時から、怖い奴らに囲まれて育ったからじゃないか?」


「ああ、そうか! 傭兵一族だもんな。周りは全員、戦場帰りの猛者ばっかりか! そして、お前もそうなんだもんな。やっぱり世の中、見た目で判断しちゃいけないな」


「今度、一族総出で、お前の家を取り囲んでやろうか?」


「ちょっと待て、それはマジで勘弁してくれ! 俺は争いごとと、怖いのが大嫌いなんだよ!」


 ザックが本気で慌てふためく様子を見て、五郎の口角が、わずかに上がった。


「冗談だよ」


「……お前なぁ、目が怖すぎて、冗談がマジに聞こえるんだよ! 心臓に悪いぜ」


 最高峰の教育機関に選ばれた、エリートたちの教室。


 だが、その喧騒は、前世で見た日本の学生たちと、何ら変わりはない。


 笑い声と、無責任な噂話が飛び交う中で、マリーゴールドは心地よさに包まれながら、入学の日の学校を終えようとしていた。





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