3話
「情報?」
「俺は次男だろ? 継承権なんて期待できないからさ、情報屋で飯を食っていこうと思ってんだ。俺は友達が多いし、馬鹿話から裏話まで、いろいろな話が勝手に入ってくる。この才能を活かさない手はないだろ?」
「なるほどな……」
「マリーゴールド、お前の実家って『最強の傭兵一族』だろ? いまどことどこが争ってるとか、そういう情報、持ってたりしないか?」
その瞬間、五郎の瞳から温度が消えた。
「――どうしてそれを知っている」
ぱっと見は小柄な黒髪の少女。
しかしその猛禽類のような目には一切の情が感じられず、ただ殺戮のための強固な意志だけで構成されているように見えた。
「こ、こ、こ……」
ザックは蛇に睨まれた蛙のようにたじろぎ、椅子ごと二、三歩後ずさる。
「怖っ……! なんちゅう目してんだよ。パッと見めっちゃ可愛いのに、ギャップとんでもないな! そんなに怒るなって、悪かったよ!」
「……怒っているわけじゃない。自分の意思に関係なく、勝手にそうなるんだ」
五郎がひとつ深く息を吐くと、教室の温度が数度戻った。
ザックはようやく胸を撫で下ろし、苦笑いを浮かべる。
「お前の実家をどうして知ってるか、って疑問に答えると、事前に調べたんだよ。お前だって何日か前に入学名簿、貰っただろ? 生徒の名前はそこに載ってるからな」
「そういえば貰ったな。一度も見てないけど……」
「俺は隅から隅まで見たぜ。全員を調べ終わったわけじゃないけど、同級生とか、気になる奴は軽く調べてる。それくらいやっとかないと、情報屋失格だろ?」
「随分と勤勉だな」
「『楽するために苦労する』、俺の好きな言葉さ!」
「大したことは知らないし、知っていたとしても言えないな。傭兵は信用が第一だ」
「そりゃそうだ。情報屋だって信頼はもちろん大事だよ……たださ、お互いのメリットのための情報交換は、ありじゃないか?」
口調自体は軽いが、そこにはザックの知性が感じられた。
「何でもかんでも秘密にしてたら、そっちが欲しい情報だって手に入らないだろ? 世の中、金で解決できることばかりじゃない」
五郎は、目の前の「情報屋志望」の少年を、値踏みするように見つめた。
「その前に、腕試しさせてもらおうか」
「いいね、嫌いじゃないよ、そういうの」
「……クリスティアン王子について、知っていることはあるか?」
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