第三話 過去のしわ寄せ
え、ストーカーじゃん。最初に抱いた感想がそれだった。
自分のことを隠れて付け回されていた。
彼女曰く
「一線を越えるようなことはしてないよ。迷惑になっちゃうからね。落ちた髪の毛も拾ったことはあるけどにおいを嗅ぐだけで持って帰ったりしてないし、それに勝手に写真撮ったりもしてないよ。ね、安心できたでしょ」
いや、安心できるか。先ほどまでのときめきはついえ恐怖と困惑に変わっていた。
だがどうしてだろう、彼女からは邪気は感じられない。純粋だからこそ逆に取り扱いが難しいとも言えるが。
それに刺激的な出会いとやらについては何も語られなかった。わざとはぐらかしているようにも見えるし単に忘れているだけかはったりなのか。
何にせよ無視できない状況になってしまった。いっそのこと一線を越えてくれていれば対処も簡単だったのに。
このままにしておいても自分に危害が加えられるようなことはないと思う。ただ知ってしまった以上この関係が続くとお互いにとってよくない。
とりあえず今やっているような行為をやめてもらおう。
「あの、」
「ちょって待って、それ以上言わないでくれるかな」
「え」
「私もね、良くないってことは分かってるんだ。でもね妹たちに・・・・・・」
彼女は自分の言葉を手で制し、気になる言葉の続きをためてから放った。
「もう彼氏ができたって言っちゃったの。えへ」
頬を赤らめながら愛嬌のある笑顔でそう告げる。悪いことをしているという罪悪感もあるようでこちらを見てはいるが視線は外れている。
どういうことだ・・・・・・。心の中で声が漏れる。
彼氏ができたのはおめでたいことだが、その相手が自分だと。
ぐるぐると思考が絡まりショートした。友達もあまりおらず誰かと付き合ったこともないのに急にこんなイベントが起きると、もう限界。
意識は彼方へ散歩に行ってしまった。