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幼馴染のナツシリーズ

どうしようもない幼馴染に惚れている

作者: リィズ・ブランディシュカ




「よう姉ちゃん、ちょっとこっちに来て、一緒に飲まねーかい?」


 会社の飲み会に参加して、端っこの方でウーロン茶をちびちび飲んでいたら、たちの悪い酔っ払いに絡まれた。


 うげ、まじかよ。


 と、女性にあるまじき表情になって避けようとしたが、相手が強引だった。


「ちょとくらいいいだろ? な?」


 ぐいぐい近寄ってくるその男の処理をどうしようかと考えていたら、声がかかった。


「夏希、どうした?」

「見てわかんないの? 絡まれてるんだけど」


 げんなりした顔でふりかえると、そこには幼なじみの男性がいた。


 同じ会社の同僚で、酒に強いからほかの人間の介抱をしていたはずだが。


 夏希こと、ナツは絡んできた男性に、不良顔負けの悪い顔で凄んでいる。


 傍から見たらいいやつなんだけど。


 でも、こいつは本当にたちが悪い。







「ねぇもう、女をとっかえひっかえするのやめなよ」

「うるせ、お前は俺のかーちゃんかよ」


 飲み会が終わった後、ナツと一緒に夜道を歩く私は、はぁとため息をついた。


 私の周辺で、これまで何人女性が泣いてきたか。


 ナツの女遊びにつきあって、フラれていった人間の数は数えきれない。


 それだけなら、勝手にやってればってなるけど。


 フラれた女達の矛先が私に向くこともあるから。


「いい加減付き合いきれないよ」

「そう言い始めたの中学生の頃だったよな。今、何年目だっけ?」

「うるさい。今度やったら絶好だからね。つきあうんなら女性は大切にしなさいよ。あんたのそういうとこ、嫌い」

「へいへい」


 きちんと聞いてるんだか、そうじゃないんだか。


 ナツからはいつも適当な返事しか返ってこない。


 ああ、なんでこんな奴に惚れちゃったんだろう。


 私はいつも内心で顔を覆っている。


 きっと、あの思い出のせいだ。







 小さい頃、近所の子供たちと遊んでいて森で迷子になった事がある。


 携帯なんて持っていなかったから、どこかに連絡するわけにもいかず。


 ずっと泣きながら森をさまよっていた。


 日も暮れてきて、あたりが暗くなっていくという時に、ナツだけが探し続けてくれた。


 他の子供たちは私のことなんて忘れてかえっちゃったのに。


 その後は、色々あって地元住民の捜索隊に保護されたけど、友達だと思っていた子達の薄情さにショックを受けたんだっけ。


 だからだろう。


 女遊びでチャラチャラしてても、きっと根は良い奴なんだって。


 そう思ってしまう。


 私に、いつも優しくしてくれるのは、なんでなんだろう。


 他の女性にはしないよね?






 今だって。


「おっとあぶね。大丈夫か?」

「うっ、うん」


 脇を通っていったバイクが接触しそうになったのを、肩を引いて助けてくれる。


「ありがと」


 そんな時だけは、ちょっと頼もしく見えるんだよね。


 ナツはそんな私の心中なんて知らずに、ヘラヘラしながら、かわいい女の子について話しているけど。


「今度の初詣、お参りした時の流れお願い、これしかないなぁ」

「んっ? なんだよ」

「なんでもない。言うかばか」

「そういえばさっき絡んでた野郎、お前のことずっと見てたけど。知り合いとかじゃないよな。変な男に引っかかるなよ」


 ナツは真剣な顔で、こっちを見つめる。

 私は赤くなった顔がばれないように、そむけた。


「マジな顔、こういう時だけ使わないでよ」

「モテるし、イケメンだからな」

「うるさい。いちいち交友関係に口出ししてくんな、ばか。そういうとこほんとさぁ。まったくさぁ」

「どういうとこだよ。おい待てって」


 今度のお参りは、絶対これを願うんだ。


 ナツがもう少しマシな男になりますように。


 って。


 だって、神様でもないとなおせそうにない。


 筋金入りのチャラさだし。

 私が何年も言っても、全然聞いてくれないんだもん。


 もっと、普通の男性みたいに。

 もうちょっとだけ、寄せてくれたらな。


 そうすれば、普通に恋愛ができるのに。


 ナツ、私がこの年まで誰とも付き合えていないのは、あんたのせいなんだからね。



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