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1話 転生して……。

転生してから、僕はいきなり前世を思い出したわけではない。

また、ある時に突然思い出したわけでもない。

少しずつ夢や、デジャブなどで前世の記憶が流れ込んできたのだ。


初めは前世の記憶を信じなかった。

ただの幻覚だと思っていた。

5歳になった頃、前世のことを自覚するようになった。

とは言え、精神が未熟だったことと幼かったこともあり、周囲にそのことを言っても相手にされなかった。

言葉では同意されているのだが、それは「幼い子供の戯言に対する対応である」ことがわかっていた。

だから、僕自身も前世なんて無いのだと思っていた。


次に前世を自覚できたのは15歳になる少し前だ。

その頃になると記憶が多く流れ込んで、部分的なパーツではなく、一つの人格として前世を認識できるようになっていた。

同時にそれを打ち明けても周囲は信じないであろうことは、もうわかりきっていたので、それを打ち明けるようなことはしなかった。


僕が住んでいる世界や国に違和感を覚えたのも、この頃だ。

前世の僕という異国かつ異世界に住んでいた記憶があったからこそ、そう思えたのだろう。

この世界も前世の世界と同じく、一般人が魔法などの異能を使えることはない。

ただ、それを使える魔法使いなどは存在しているらしい。

「らしい」というのは、僕自身それを目撃したことがないためだ。

それでも、周囲の人の話を聞いていると、「そのような存在」がいることが当たり前のように話すところを何度も見かけた。

迷信が蔓延っている可能性もあるが、前世とは違い眉唾物の噂話ではないようだ。

だから、この時はとりあえず「存在する」ことを信じることにした。


国についても違和感がある。

小さい頃はそれが当たり前であったが、前世を認識したあとは異常であった。

まず、この国では、確認できる限り、犯罪というものが発生していないのだ。

そんなことは信じられない?

確かにそうだろう。

人というのは、どんなに社会が発展したとしても、それに適応できない異分子は必ず発生してしまうものだ。

それにも関わらず、この国では犯罪が起きていない。

そのせいか、警察などの治安維持組織も存在しない。

戦争も今のところはしておらず、それどころか記憶を辿ってみても、両親、いや、それどころか人々が喧嘩などの揉め事を起こしていることすらないのだ。

あまりにも異常であるため、前世でいうところの秘密警察のような組織がいるのかと思った。

ただ、僕が認識している限りではだが、それすらも確認できなかったのだ。

そんなあまりにも異常な状況に、周囲に聞いてしまったことがある。


「誰もが私利私欲に走らずに、他人を思いやれるのは何故なのだろう?」


すると、聞かれた相手は一瞬ポカンと口を開いて呆気にとられた表情をしたが、すぐに微笑みながら……。


「それはね。きっと、国を守ってくださる魔法使い様のおかげだよ」


そう答えた。

僕が続けて魔法使いについて、質問をすると、どうやらこの国は100年以上前にその魔法使いが作った国で、以来ずっとこの国を管理し続けているのだという。

そのおかげで人々は良い暮らしができているのだとか。


そう聞いた僕は良いことであるはずなのに、なぜか気持ち悪いものを感じてしまった。


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