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幸せな番が微笑みながら願うこと  作者: 矢野りと


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49.罪②

後悔に苛まれただ懺悔するのは自己満足にしかならない。今やるべきは馬鹿な自分を痛めつけることではなく、アンをどうするかだ。もう変えられない過去ではなく、これからアンにとっての本当の最善を考えなくてはならない。


私達にとって都合の良い最善ではなく、アンのことだけを考えるんだ。




医師達から処置を受けたまま眠っているアンを黙って見つめ続ける。


 もう遅いかもしれない、今更かもしれないが。

 …愛するアンを助けたい。

 もうあの苦しみから解き放ってあげたい。

 二度と、二度と…彼女にあんな顔をさせない。


 今度こそ…間違えない。

 たとえ何を犠牲にしても。



自分がやるべきことを頭の中で整理していく。どんな過程を経ても最後にはアンが心から笑っている結末に辿り着くことだけを考える。


選択肢がないからだろう、思いのほか考えは早くに纏まっていく。


 そうだ、これでいい。

 これしかないのだから…。

 これならアンはやり直せるはず、きっと笑えるはず。



アンと初めて会った時に見た笑顔を思い出す。家族と手を繋ぎ無邪気に笑っていた、あれこそ彼女の本当の笑顔だと今なら分かる。

 

「アン、初めて会った時のようにこれなら無邪気に笑えるかい…?」

 

やるべきことが決まり、アンの髪をそっと撫でながら話し掛ける。もちろん返事はないが、アンの穏やかな寝顔が私がやろうとしている事を肯定してくれている気がする。




周囲に目を向けると、部屋にいて一部始終を見ていた宰相と侍女達は真っ青になり今にも倒れそうになっていた。

きっと彼らもアンが感じていたこと聞いていたことを直接聞いて後悔に押しつぶされそうになっているのだろう。


当たり前だ、アンの苦しみを知り後悔しない奴なんていやしない。それほど私達は罪深いことをやっていたんだ。


そんなつもりはなかったと許されるはずはないし、許されることを望みもしないだろう。




そんな彼らに言葉を掛けることなく、まだ深い眠りに落ちているアンに再び視線を移すと手当てをしていた医師が容態の説明をしようする。

その果てしなく暗い表情が、話そうとしている内容が私が予想している通りのものだと示している。


…覚悟はしていた、最悪なことしか告げられないだろうと。


受け入れ難い現実に心が裂けようとも私はもう逃げ出すことは許されない、アンに向き合い続けていく。


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