2.運命の出会い①
私が生まれたこの国は何世代も前から獣人と人間が共存する平和な国だった。
お互いの文化や習性を理解し尊重し、次第に種族を超えて愛を育むようになった。その結果、混血も進み外見だけではどちらか分からないことも多々あった。
だがどちらかの種族に優劣をつける事も無く、自然の流れに任せて人々は生きてきた。
それで特に問題も無かった。王もその時代で最も優れている者が選ばれるので、それに種族は関係なかった。
そして今の王は竜人で長命な種族なので齢三百歳を超えている。珍しく純粋な獣人で武力・知力だけでなく人格も優れ『稀に見る賢王』だと評価されている人物だ。
そしてその人が私の運命の人『番』だった。
10年前に街で両親や兄と一緒に買い物していたら偶然巡り合った。
竜王は一目見て私を『番』だと分かり、両親から奪うようにして自分の住む王宮に連れて帰ったのだ。
私はその時まだ六歳と幼く、外見は人間そのものだが獣人の血が少し入っているので彼が私の『番』だとなんとなく分かったので、抵抗することなく抱き締められていた。
両親や兄と離れ離れになるのは寂しかったが、それよりも『番』と一緒の安心感のほうが勝っていて連れて行かれる事に疑問を持たなかった。
竜王は私を連れて行くときに優しく抱き締めながら、
『お前は私の大切な番、唯一だ。これからはずっと一緒だ、絶対に離さない。なにがあろうとこの愛が変わることなど絶対にないからな』
と甘く囁き髪を優しく撫でてくれていた。
まだ幼かった私は彼の言う言葉の意味が良く分かっていなかったけど『好きだ』と言われて素直に嬉しかった。
頷くだけでちゃんと言葉を返すことは出来なかったけれども、心の中で『わたしもすき』と思っていたし、なんとなくそれだけで大丈夫だとそう思っていた。
彼の腕の中で安心していた、何の不安もなかった…この時は。
幼くても番の傍はなによりも安心できる場所だったのだ。
何とも言えない心地よい安らぎを与えられ、体力もなく幼い私は気づかぬうちに眠りに落ちてしまった。
そして目覚めた時には私の番は傍にはもういなかった。
天蓋付きの豪華なベットから飛び出して広く可愛い部屋を探し回るけど見つからない。知らない大人達に囲まれ私は泣きながら訪ねた。
「ここはどこ?わたしの番はどこにいるの?どうして一緒にいないの?」
「ここは番様がこれから暮らしていく離宮ですよ。竜王様はお仕事でここにはいませんがすぐに会えますから大丈夫です。泣かないでくださいませ、可愛い番様」
慰められながら私の番は竜王という立場で忙しいのだと教えられた。
周りにいる大人の人達は素敵な玩具や美味しいお菓子を次々と差し出してきた。見たこともない玩具や特別な日にしか食べたことのないお菓子はとても嬉しかった。
でもそれは最初だけで……。
番のいない淋しさをそれらが埋められるはずはなかった。それに家族もここにはいない。
――泣き疲れては眠る日々。
何日も何日も良い子にしていて待ったけれども、番は私の前に姿を現さなかった。
 




