4月・嫁とショッピング&歴史レポート
実はこのゲーム、終盤間際に戦闘イベントがあるのだ。
剣と魔法でスカルドラゴン(魔属性・巨大な骨だけの邪悪なドラゴン。全長58メートル、体重550トン)を倒さなくてはならない。しかも巨体が唸るぞ空飛ぶぞ、ってなもんだ。
だから一年かけて剣と魔法を強化する必要がある。強化の方法は、授業選択。
戦う時期は来年3月初頭、卒業式前に。
まあ乙女ゲーみたいな内容のくせに、戦闘自体はハードだ。ゲーム慣れしている4人でさえ何度も戦闘不能に陥ったくらいだ。だがこまめにイベントをこなしていれば、救済措置的なアイテムが手に入ったり、魔法や武器も手に入れられる。さっさとクリアしようとした4人なので、戦闘で苦労することになったがそれも初見だけ、2周目はアイテムも魔法も手に入れて進めばあっさり倒せた。呆れるほど『ヌルゲー』だった。いや親切設定というべきか。
基本、毎月後半に『来月の授業予約』で、剣を強くしたいなら『剣術』の授業を予定カレンダーの日枠をクリックすると、『どの授業にしますか』とメニューが出るから選択をするのだ。
あとはバランス良く『剣術』『魔術』『学問』などを設定するだけ。ざっくり設定。
『学問』は魔法を使う、剣での戦いでの『理解度』を上げるのに必要だ。
カレンダーには大きなイベントも書き込まれているので、それまでに何を上げたら良いかよく考えて設定していけばいい。
イベント日は授業が無い。おまけに土日も授業が受けられないので能力を上げられない。その代わり、冒険者ギルドで依頼を受ける事が出来る。魔法を使えば魔力、剣を使えば剣術と体力が増える。
そして月の最終日・・30日や31日(元の世界の暦と同じだ)に、これまた美麗な絵が出て来るのだが・・アレメインの絵なのだ。ヒロインだから当たり前だが、4人からしたら有難くもない。それが2月まで続く。今月の絵は・・
『このプリン、もーらった!え?食べたいの?うふふ、一口あげる!』
とか台詞も付く。それを見て4人は『うわあ〜〜〜』と情けない声を出しながらのたうち回る。
「お前じゃねぇーー!!我はナタリィのスプーンで、間接キスしたいのじゃー!」
「モーリンたんがスプーンで俺に・・そうだ、アレの顔をモーリンたんで上書き・・」
「達人か!!俺もフラーウと・・・はぁ〜〜〜ん、かわゆい!」
「あ〜〜んとか、サイファはこんな事絶対にしない。照れ屋だから。アレのサジなんぞ、こうだ!」
そしてすぱあーーーん!と手ではたき落とすアクションをしてみせた。
「「「おおおおおおおおお!!お前こそ真の騎士様だぁ!!」」」
・・・以上、生前の一コマでした。
で。
本日は授業を終えると校外に出て、喫茶室で4人はメニューを見ながら・・ワッツがぼそっと呟いた。
「そろそろ月末スチル、くるよな」
「くるんじゃ無いか?・・なぁ、確か4月はプリンだったよな」
「しかもアレしか無い。というか、アレ以外の絵は無い」
「・・ちょっと書き出してみるか」
オニールは紙を出し、4月から始まる月末スチルを書き出した。
4月 プリン
5月 広大な花畑
6月 雨
7月 夏祭り
8月 海
9月 テスト勉強
10月 文化祭
11月 ギルドの依頼
12月 クリスマス的なもの
1月 新年の挨拶
2月 バレンタイン的なもの
3月 卒業(式)
「ちょっとぉ〜〜なんでアレがデデン!と真ん中にいるわけぇ〜〜?いらなくなぁ〜〜い?」
「ま、月末スチル、アレしか無いもんなぁ。一応ヒロインだからなぁ」
「でも俺らにとってはヒロインどころかビッチで悪女なんだなぁ〜」
4人でうんうんと頷いて。
「嫁の絵入れてもええのよ?つーか入れて欲しかった」
「っつーか、嫁(最高)一択を所望するわ」
「このゲームのアレ、そんなに人気なのか?俺には分からん」
「嫁エンドを何故に入れなかったのか・・」
「そらまあ・・悪役令嬢で、追い出すつもりだっやからだろ・・」
「「「「・・・・」」」」
沈黙。胸の奥で怒りがキャンプファイヤーのようにメラメラ・・
「うんにゃ!ぶっちゃけ、スチル描かせるお金なかったんちゃう〜?」
明るくおどけてリーンブルグがニカっと笑った。
「せやな」
「あそここのゲームでこけてつぶれてまえばええねん」
「呪われてしまえ」
「異世界から呪いを込めて、ですな」
「「「「お〜〜〜〜ん」」」」
4人で両手の指を絡めてお祈りポーズ。元の世界にあるゲーム会社を呪ってみた。
「よーし、念を送ったった。さあ、何を食べる?」
「「「「チョコパフェ!!!!」」」」
もしゃもしゃと美味しいパフェを堪能!呪いをお届けしたらなんだか体がだるい〜!
甘さで回復回復〜!
彼らの冗談で送った怨念だが、本当に届いていた!あのゲーム会社はどうなったか・・なんてどうでもいいよね!もう関わりないし!!
とにかくスチルのような出来事が起こるとしても・・
『ま、スキップすりゃ良いんじゃね?』
皆の意見は同じだった。
とりあえず・・・
寮に戻ると4人はお互いの予定に合わせ、予定表に書き込むのだった。
それから10日後。
次のイベントは、街でお買い物!だ。
授業で使うキウイ草のシロップ漬けを買いに行くのだが、どこで売っているかが初めてだと分からない。
4人はもう何度もプレイしているので、魔法グッズショップ『チッチチップ』に行けば売っているのを知っている。
商店街には10店舗のお店があるのだ。3件間違えると『校内売店』画像に変わり、
「なーんだ!校売で売ってたわね!」
となってしまい、お買い上げ特典『チッチチップ』特製キウイジャムが貰えなくなってしまうのだ。
一緒に買いに行く人も選べる。なんと婚約者かヒロインの2択。
ここでヒロインを選んで武器ショップに行くと、ブロードソードを貰える。
最初に手に入る強い武器だ。
「いらねえっ!!そんなもんより、嫁とデートだぁ!!」
モチのロン、4人は同じ答えだった。
だって、一緒にデートなんて、ここ外したら無いんだもん!!
そんな訳で、2店お店に行って、最後3店舗目に『チッチチップ』に向かうのだった。
アルフレアのデートコースだが、
「まず宝飾店でナタリィの好みの宝飾をプレゼント、そして本屋のコースだ。ナタリィは読書家だからな。どんな本を読んでいるかを知って、話を膨らますきっかけにする」
鬼畜眼鏡参謀のリーンブルグは、
「俺は洋服屋行ってから喫茶店。ケーキ好きだからな〜。あれやこれやたくさんの可愛い洋服を着せ替えして堪能もする」
「「「なにっ?」」」
「その手があったか・・」
「フラーウオンリープレタポルテファッションショ〜〜。客はオレだけ〜〜」
すると残り3人が目をキラキラさせて褒め称える。
「すげえ。もしや、リーンブルグ・・貴方はデートマスター?」
「くっ・・!鬼畜眼鏡のくせに!」
「ま、負けないんだからねっ!鬼畜眼鏡なんかにっ!」
「ははっ、いいかげんになさい。人を鬼畜って。本当、あなた方は」
お次の方、ワッツは・・
「俺は花屋でモーリンの好きな花を買って、その後食料雑貨店。プリンを作る食材を買うぜ!花を飾った部屋で、手作りプリンを二人で食べる。あの忌々しいスチルの記憶を上書きしてやる」
「いよっ!上書き屋!!」
前回のスペシャルランチのプリンでも、アレのスチル・・アレの顔に嫁の顔を上書きしている。
おおお〜〜〜〜・・・歓声と拍手に、ワッツは手で会釈で答える。顔はドヤ顔だ。
最後はオニール。
「俺は武器屋!あいつ手ごろな剣が欲しいって言ってたからなぁ〜。そして、お揃いの乗馬ムチ!」
ムチと聞いた途端、残り3人が響動立。
「え?ムチですか?」
「もしや、もしや!!」
「騎乗してからの〜〜?」
「じゃじゃ馬ならし♪」
4人は『ひゃっほ〜〜〜ぃ!!!』とテンションMAXだ。その後はエロい話で大いに盛り上がる。仕方ないね、元は日本の男子高校生なんだもん!
放課後、4人はそれぞれの婚約者と一緒にお買い物に出掛けた。
それはもう!!楽しゅうございました!!
その楽しげな光景を、建物に隠れて睨む人影・・・誰とは言わないが。言わないが!!
このイベント、実は婚約者と出掛けると喧嘩になってしまい、彼女達は帰ってしまうのだ。
で、ひょっこり現れたアレとお買い物を続ける、という展開だったのだ。
でもけんかしなかったよ!めでたしめでたし。
「で。オニールん。ムチはどうでした?」
「ん?んふふ。知りたい?どうしよっかなぁ〜?」
「「「ええ〜〜!教えてぇーー!!」」」
寮で夕食タイム、残り3人がオニールにニヤニヤして問い詰めれば、それはもう眩しい笑顔!
「かる〜くお尻をペチンってやってみました!怒られたけどな!」
「「「う、うわああ、勇者だ!やっぱりオニールんは勇者やった!勇者降臨やぁ〜〜〜!!」」」
3人は平伏、崇め奉るのだった。
数日後。
お次のイベントは月末・・歴史教師からの宿題で、図書館で『我が国の歴史』を調べるのだ。
500年の歴史があるザーフェス王国。
アルフレアの班は、初代国王アルモネアの偉業をレポートする事となった。
図書館の蔵書から該当する本を探すのだ!・・これもゲームのイベントだった。
本は3冊。
マップにはパズル要素で本が隠されていて、パズルを解くと本が回収出来る・・と言った具合のミニゲームになっていて、間違いを3回すると図書館受付に戻されて、
『お探しの本は、今返却されましたよ』と受付の司書さんが手渡してくれるのだ。
このパズルは3回解くと、『謎の鍵』『秘密メモ』が手に入るようになっている。
本来のイベントでは主人公ひとりだけで行くことになっている。まあ仲間4人でぞろぞろと図書館を彷徨くことになるが仕方がない。
出来れば嫁と一緒なら良かったのだが、彼女達は別の班でテーマも違うから別行動だ。
パズルもアイテムも固定なので、一度やったら答えは解っちゃう。
でもやはり文句は言いたくなるのだった。
「なんだよなんだよぉ〜〜。嫁といかせてくれよぉ〜〜。寂しいじゃんよぉ〜〜」
「全くだ。本棚を目隠しにして」
「壁ドン!とか、ああああ!!」
「何やってんだよ!ワッツ!!」
壁ドンの仕草をして、本にドン!したら、向こう側に本がどさーーっと落ちた。
枠だけで仕切りが無い本棚だったのだ・・・
「あ〜〜も〜〜、何してんでちゅかっ!!ワッツかたじゅけなちゃいっ!」
「ほんともうっ!ぷうっ!!」
「ちゅいまちぇんねえっ!ごめちゃっ!!」
「馬鹿だろお前ら、ほんと馬鹿」
「のれよ、付き合い悪いぞオニール」
「そうでしゅ、わかってまちゅかっ!!」
「本いっぱいでちゅっ!大変でちゅっ」
「お前のせいだろワッツ、っつーかキモいアルフレア〜。殿下でしょっ?ちゃんとしてよねっ!」
「もー、男子ったらぁ〜、ちゃんと片付けてよねっ!ワッツ貴様だぞぉ」
「あとちょいあとちょいあとちょい!」
「あ、そーれ!ラスト一冊!!」
何故か赤子言葉になっていたが、最後は全員で!
最近ようやく慣れて、みんな名前を転生したキャラクターで呼び合うようになった。
だけど中身はほら!男子高校生だから!4人で連むとつい、ね。
何時でもかっこいい4人でいるのが、辛い時あるんです。
こんな時はうーんとハッチャケて!
「よっしゃ、終わったぁ!おっしーまーーーいっ!!ヒューーー!!ヒューーー!!」
4人はハイタッチを順繰りでパーン、パーンと軽やかにスキップしながらグルグル回る事暫し・・
ふと、リーンブルグは本棚に何かを見つけて近寄った。
「ん?これは」
「どうしたリーンブルグ」
「図書館ってさ、見つかるアイテムは2個だけだったよな?」
「公式情報まだ出てないからなぁ」
「確か、ここから4つ目の本棚と、通路を向かってこっちの本棚下の棚にアイテムあったよな」
「あー、確かに。まだチェックしてない箇所ほったらかしてたな」
「いるもん取ったら見ないよな、素通りしてたわ」
「おれも」
「鏡か?それ」
本棚には小さな手鏡が乗っていた。
リーンブルグが手に取り、『ポケット』(収納袋的なもの)に入れると。
みょいん♪
4人全員のステータスが表示された。
【リーンブルグ】
名前/リーンブルグ・カーン公爵子息
職業/魔法使い
年齢/17
HP 50/50
MP 50/50
剣技/レベル1
技 /
魔術/レベル1
呪文/
所持アイテム
キウイ草のジャム 謎の鍵 秘密メモ
共通アイテム
真実の手鏡
【アルフレア】
名前/アルフレア・ボゥ・ザーフェス王国王子
職業/魔法剣士
年齢/17
HP 50/50
MP 50/50
剣技/レベル1
技 /
魔術/レベル1
呪文/
所持アイテム
キウイ草のジャム 謎の鍵 秘密メモ
共通アイテム
真実の手鏡
【ワッツ】
名前/ワッツ・ビルホース侯爵子息
職業/魔法剣士
年齢/17
HP 50/50
MP 50/50
剣技/レベル1
技 /
魔術/レベル1
呪文/
所持アイテム
キウイ草のジャム 謎の鍵 秘密メモ
共通アイテム
真実の手鏡
【オニール】
名前/オニール・セイクリッド辺境伯子息
職業/剣士
年齢/17
HP 50/50
MP 50/50
剣技/レベル1
技 /
魔術/レベル1
呪文/
所持アイテム
キウイ草のジャム 謎の鍵 秘密メモ
共通アイテム
真実の手鏡
まだそれほど授業で『剣術』『魔術』『学問』をこなして無いので、最低値のままだ。
「ん?おい、この共通アイテムって・・・なんぞや?」
「前世のゲームでは出てこなかったよな」
「無かったけど、パズルでめくっていない部分があっただろ、1箇所」
「あー。謎のメモと鍵が手に入ったから、放っておいたとこか〜、ここだったのかぁ」
皆で情報を共有しながらゲームを進めていたので、アイテムが取れる場所が分かった後は行かなかった箇所があった。そこにこの『真実の鏡』ってのがあったのだろう。
「で。これなんに使うんじゃろ。選択しても説明出ないぞ」
「さあ・・・発売3日で死んだからなぁ・・攻略情報も全然出てなかったから」
「まあ、進めてけばそのうち判るはずだ」
「そうだな・・あれ?」
ワッツが『ポケット』から鏡を取り出すと、共通アイテムからアイテム名が消えた。
「あー、そういう事?これ、俺達4人で1つ所持って事だな」
「だから共通か」
「4人で一緒の時しか使えないのかな」
「そうだろうね」
『ポケット』にワッツが鏡を戻すと、再び共通アイテムに『真実の鏡』が表示された。
「この情報、調べないとな」
「もしや!嫁とのふたりのエンディングに繋がるアイテムか?!」
「おお・・・それなら分かる。やっぱ条件が足らなかったんだ!」
「よっしゃあ!やる気出てきた!」
不意にかた、と音がした。はしゃいでいても敏感に反応。
瞬時に4人は高位貴族にトランスフォーム。
4人がそっと音のした方を見ると・・・いた。
アレだ、アレがいる。本棚の影からこっそりとこっちを見ている。
続く>>
追加加筆修正どんどこどん
おまけ・ステータスについて
ヌルゲーの乙女ゲーなので、それほど細かい設定はないです。気にしな〜い気にしな〜い
例・【リーンブルグ】
名前/リーンブルグ・カーン公爵子息
職業/魔法使い ←ゲームスタート時に決める事が出来るが途中変更出来ない。
年齢/17
HP 50/50 ←剣術の授業を1つ受けるたびに5増える
MP 50/50 ←魔法の授業を1つ受けるたびに5増える
剣技/レベル1 ←剣士が学問の授業を受けると5回受けるたびにレベルが1上がる。
技 / ←剣士のレベルが上がると『居合切り』『一撃必殺』など技が出来るようになる
魔術/レベル1 ←魔法使いが学問の授業を受けると5回受けるたびにレベルが1上がる
呪文/ ←魔法使いのレベルが上がると『火球』『水銃』など技が出来るようになる
@魔法剣士は学問の授業を受けると8回受けると同じことになるが、剣技・魔術両方のレベルが上がり、術を覚える。
もちろん、剣士も魔法が使えるし、魔法使いも剣が振るえるが、剣士はレベル3魔法が限界、魔法使いはレベル2剣技が限界
でもヌルゲーなので、強化アイテムなどで補填できる
所持アイテム ←手持ちのアイテム
キウイ草のジャム 謎の鍵 秘密メモ
共通アイテム ←4人で一つのアイテム
真実の手鏡
という感じです〜〜