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依頼契約

ぼちぼち。


「あなたにこの任務はお任せ出来ません」


と、ギルド職員ボウ・エレはオニールに告げた。

オニール、そして側でその言葉を聞いた残る3人は目を見開いて、職員・・ボウ・エレをガン見した。


「なんでさ」


理由を聞くしかない。納得いかない。『おぅおぅ、オレ達Bランク冒険者やぞ。なにがあかんのやー、言うてみぃー』

4人は素行の悪い不良がごとく、オラオラと心の中でオラついた。

するとボウ・エレはーー・・


「これはDランクの冒険者向けの簡単な任務です。BランクであるあなたがDランクの任務を奪っていいものではありません」

「あ!あーー、そういう事ね、そりゃ悪かった」


適当な任務を任務掲示板から引っぱがし、列に並んだのは拙かった。なんでもいいから列に並ぼうと思ったが、まさかDランク用依頼とは。

はっ!!

オニールは背中にブワッと汗が吹き出した。ま、まさか・・Bランク用依頼札を取り直して、列に並び直せと言うんじゃないか?!


「あなたにはこれなんかどうでしょう」


と、ボウ・エレは依頼札をオニールに差し出した。

よかったぁ・・オニールだけでない、残る3人もほっとした。オニールの徒労が続くのを見ていられなかったのだ。俺達だって3時間以上並ぶなんて勘弁だ・・後でオニールんには、大好きなチョコパフェを1週間奢る決心をしたのだった。本当は1年でもいいと思ったが、流石にそんなに食べ続けたら飽きてしまう、いや嫌いになってしまうだろう。

チョコパフェではなくてサンデーとかプリンアラモードでも、好きなのを所望してええんやで!

などと思いつつ、3人はオニールとボウ・エレの会話を横からご拝聴・・ボウ・エレの説明は続く。


「これはダンジョンの調査となります。ギルドからの依頼です。Bランク冒険者はなかなかお越しいただけないので、ぜひ受けて頂きたいのです」


オニールは3人の方を向き、『どうするよ?』といった表情で見るので、3人は親指をおっ立てて『『『ええよ!』』』と返す。


「了解しました。オレは4人パーティーで、そこの3人と組んでいます(人差し指でアルフレア達を指す)。全員Bランクです」

「え!!全員ですか!!」


メンバー全員Bランク!最近のダンジョンの様子は不穏・・モンスターが急激に増え、凶暴さも増している。調査依頼を出したいが、実力が無い者を行かせるわけにはいかない。なのでダンジョン入場を制限をしていたのだ。Cランクなら以前は7階層まで行くことも出来たのだが、今は3階層までで引き返してくる。最下層10階層に行った者がここ1年いなかった。制限したせいで、噂を耳にしたBランク冒険者は稼げないから立ち寄ろうともしない。もちろん今まで来てくれていたCランク冒険者さえも来なくなって閑古鳥である。それでもボウ・エレの窓口は相変わらず長蛇の列だが。

だからBランク冒険者、しかも4人が引き受けてくれるのはギルド側としても有難かった。

Sランクはともかく、Aランク冒険者になる者は意外と少なかったりする。緊急依頼を必ず受けなければいけないという『足枷』は、自由を何より愛する冒険者にとって『ほんま堪忍や〜!』な条件なのだ。

Sランクは・・今のところ世界に5人いる。地位も名誉も金も思うがまま、出世欲がある野心家がなる・・らしい。知らんけど。

もちろん、Aランクにもいろいろな特典や恩恵があるが、Sランクに比べれば大したものでもない。なる必要が無い程度。

なので、正直Aランクの実力があってもBで留まる者が多いのである。

とはいうが、Bランクになるのだってそれ相応の実力が必要だ。このサージュ領の冒険者ギルドもかなり規模が大きめだが、Bランクは常駐していない。Cランクメインのダンジョン『だった』。

冒険者もダンジョンで稼ぎたいので、入場制限をしているのを知れば他所に行ってしまう。ギルドも収入源が無いと困る。

早く原因究明をし、入場制限を解除したいところに4人がやって来たのはまさに旱天慈雨。



と、そんなわけで『ダンジョン捜索』の依頼を受けることになった4人は、ボウ・エレが専属担当となった。

あの列に並ばなくても彼と話が出来るという特典を手に入れたのである。

なんたってドル箱であるダンジョンを捜索するのだ、どの依頼よりも優先。当然といえば当然なのだ。彼らもダンジョン巡りは学生時代に経験を積んでいるので、要領を得ている。

窓口を緊急に閉じ、別室で任務内容を打ち合わせる事となったのだが、並んでいた冒険者のブーイングは凄まじかった。ボウ・エレに続いて別室に向かう彼らに暴言が浴びせられた。『そんな貧弱な体で何が出来るんだ』『ガキが調子に乗るなよ』『金渡して横入りしたんだろう』などなど。

ふいっとアルフレアは男どもに振り返ると・・『圧伏』。

権力の頂点、王族は普通の威圧とは一味違うスキル?を持っているのだ!視線を向けられた男どもはびくん!と体を跳ね上げる。体の頭の天辺から足のつま先に、強い痺れが走ったのだ。するとずるずると・・座り込んで、頭が前に倒れ・・土下座のような格好となった。国の王太子に罵声を浴びせたのだ、この程度の『しつけ』で済んで良かったとは思うまい。


「平伏せ、愚民どもが」


アルフレアは一言吐き捨て、友人達の後を追った。

残された冒険者達はしばし呆然・・平伏していた男どもが解放されたのは10分後。

『なんだ今のは』と狼狽、騒然となった。威圧だとは分るが別物だと分かるのも冒険者というべきか。



奥にある別室に5人は入ると、中は応接間で大きなソファーや一人掛けの椅子がいくつかテーブルの周りに置かれていて、ボウ・エレに勧められて各々腰掛けた。


「ギルド証を見せていただけますか」


ボウ・エレに言われ、4人はテーブルにギルド証を置いた。


このギルド証だが、彼らの本当の身分は偽装されている。王都にある冒険者ギルド特製のものだ。あまり身分が知られるのも困る。なのでギルド証を見ても、ボウ・エレには4人の正体は分からない。

アルフレア達は偽名でパーティーを組んでいて、一応ギルドに届出をしている。


「パーティー名は『ナフモサ』・・変わった名をつけましたね」

「出身の街の名です」


・・もちろん嘘である。

パーティー名の『ナフモサ』。ナタリィ・フラーウ・モーリン・サイファ・・嫁の頭文字を並べてみました!・・一応4人で話し合ったが、思いつかなかったのだ。

そして名前・・アルフレアは『ルフレ』、リーンブルグは『ブルグ』、オニールは『ニール』。けれどもワッツの偽名はなかなか思いつかなかった。ワツ、ッツ、ツワ・・語呂が悪い。


「短い名前ですいませんねぇ〜」

「怒るな怒るな」


ぶすうと不機嫌そうに膨れる友人を揶揄いつつ宥めていると、ピコーーン!!オニールんが『閃いた』!


「なになに〜?オニールん!聞かせなさいよぉ〜」

「オニールん、どんな名前、思いついたのぉ?」

「短いなら長くすればええんやで、おまいら」

「「「はっ!!!」」」


目から鱗!さすが我らのヒーローは違う!!


「「で!どんな名なのー?」」

「良い名つけてくれよ」

「君の名は・・」

「「「君の名はぁ〜〜〜?」」」


どこからか、ドラムロールが聞こえる・・多分幻聴だろうが。

ジャン!!!シンバルが鳴った・・気がした。オニールが口を開く。3人は固唾を飲んで待った。


「ホワッツ」

「「「マイケルーー!!!」」」

「「古ーーーーい!!!!」」


アルフレアとリーンブルグは昔のマンガのタイトルとわかった。もちろん、ワッツもオニールもだ。アルフレアの前世の家にあったので、みんなで読んだことがある。これはアルフレアの前世の母が持っていたまんが本だった。ワッツがボソリ。


「やだ」

「えー。マイケル可愛いじゃんよー」

「踊る猫可愛いじゃんよー」

「うるせえ。自分の名じゃねーからってそれになんだよホワッツって。」


と、さらにいぢける。アルフレアの頭の上に、前世の昔風ギャグ・・電球がピカッとな。大真面目にワッツの肩を叩いて一言。


「じゃあホワッツがいやならマイケルはどうだ」

「そこから離れよう、な?」

「「えーーー!!マイケルええじゃんよー」」

「「フォーーー!!」」

「うるせえ!」


今度はリーンブルグとオニールがワッツにつめ寄った。だがふたりは本気で『ええ名前』と思っているからタチが悪い。ワッツ、怒り心頭まであとわずか。アルフレア、またピコーーーン!!


「せや!ワッ()、はどうや?ツをトに変えただけやけど、良い感じやろ?」


もう面倒だ、これでいいとワッツは諦めて『それでええ』と返事。こうして4人の偽名は決まったのである。

横道逸れた・・

今は偽名も使い慣れ、うっかり友人の本名を言わないくらいに落ち着いている。

全員が座ると、ボウ・エレは冒険者ギルド特製マップを4人に手渡した。

見ると赤い丸、青い線など書き込まれている。


「赤い丸は、以前はモンスターがよく出現した場所、青い線は定番ルートです。今はこの地図が全く当てにならない状態になっています。そこを検証、探索して頂きたい」


赤丸の横には『1』とか『2』とか、青い線のスタート部分にも『1』とか『2』が書かれている。


「見ていただければお分かりになると思いますが、このアウンダンジョンは定番ルートが3つランダムで出現、それぞれの番号の位置にモンスターが現れていて、実に中級者に優しいダンジョン、ここで修行をしてさらに強いダンジョンへーーという流れでした。でもここ1年ほど前から、モンスターは強くなり、ルートも逸れる事も多くなっていたのです」

「なるほど。マップの確認と修正なんですね」

「はい。お願いしてよろしいでしょうか。宿代も生活費も出しますので、これが報酬となります」


細かい規定やらなんやらが書かれた依頼契約書の下の方に、報酬が書かれていた。

金貨400枚・・前世で言えば100枚で2000万円!これ、ギルド本気や・・4人はごくりと喉を鳴らした。



こうして契約は恙無く完了。

明日、5日から早速ダンジョンへ潜る事となったわけだ。


ダンジョン探索を受けたことを若サージュ・・メイヂに使いを送って連絡し、3時間以上立ちんぼをしたオニールをチョコパフェで労い。この日も早々に部屋に戻り、就寝。


今夜は出てこんでくださいよ、女神・・俺たちを働かせたいなら・・

4人は寝床でお願い?をし、眠りについた。



続く>>


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