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8月1日

さあ、4人が始動!

日々は過ぎ・・8月1日。



男子(だーんしぃ)〜、元気してたぁ〜?」

「相変わらずか。アルフレア元気そうだなぁ」


勇者(サージュ)の領地の首都『アウン』にある高級ホテルの一室に、4人はいた。


「久々のバカンスだもんね、あー、王太子教育と帝王学で参ってしまってたんだよ。休まないとやってられまへん〜」

「まあ世継ぎだもんな、ガンバ」

「お前がしっかりしてくれんと国が滅ぶからな」

「有能だから期待してくれ。お前らも側近に取り立てる所存ですぞー。お前らも頑張って欲しいなり」

「オレは防衛だな。辺境伯子息だし」


と、オニール。


「俺はお父上の後を継ぐかは分からん。宰相は有能な奴が就任するべきだからな」


これはリーンブルグ。父親は宰相だ。


「おれの父様は外相(外務大臣)だけど、リーンブルグと以下同文」


ワッツはけろっと言う。


「なになに男子ぃ〜、オニールん以外はなんでそんなに非協力的なわけぇ〜?」

「いやぁ、俺は魔法で身を立てたいし。まあ、魔法相(魔法大臣)は狙おうかな」

「おれとしては、商売を広げたいなぁ〜。大臣職なんかやってらんねぇ」


アルフレアはくわっと般若顔になってワッツを睨んだ。


「ワッツ〜、そういうこと言ってると、申請許可出してやらねえぞ」

「うわ!横暴だぞぁ」

「税金も加算してやる〜〜」

「やめろーーヒィ〜〜」


4人はぎゃははと笑う。相変わらずの仲良し、ずっ友だから!


アルフレアと愉快な仲間・・若サージュが言っていた4人組は、8月1日にここ『アウン』で再会を果たしたのだった。

ここの特産ワインをサングリアにしてゴキュゴキュ飲みながらの歓談・・



「こんにちわ・・お久しぶりです、皆様」


其処にちょっとビクビクしながら元聖女、今の名はダイヤが合流した。


「おお、おひさ。でも同じ顔でも中身が変わるとほんと別人だよなぁ」

「今は髪を変色、オプションもつけているからね」


オプションとは黒子だ。

彼女の性格も滲み出ているからか、あの頃感じていた嫌悪感も全くない。


「どう?今の暮らしは」

「はい、結構充実して楽しんでます」

「そりゃよかった。何か困ることがあったら言ってよね。資金的なものも渡そうか?」

「ありがとうございます。あの時もらったお金、まだ残ってますから大丈夫です」


ダイヤも同席し、5人は『これからの事』について会議を始めた。

彼女にも夢で女神に『厄災を防げ』と言われたことを説明し。


「まあ知ってる部分でいいから、教えて欲しいんだ。どんな敵が・・ラスボスが出るか知ってるか?」

「えーと・・パッケージには・・なんか、こう」


テーブルの上にそのパッケージの絵をざざっと描く。

まず楕円を中央に。それが主人公であるヒロインの立ち絵、それを囲むように男のカット・・丸が5つ取り囲んでいて、丸の中に名前を書き込んだ。

そしてぐにゃぐにゃとその後ろに線を囲む。


「この線が、多分ボスだと思うんだけど、青黒い色でぼんやりとしてて。あまりしっかり見てないの・・レジに持っていって、並んでたら『火事だーー』って・・ううっ」


そう。彼女はゲームを買いに行って、火事で死んだのだ・・

『2』の情報は雑誌の前予告のみ。


「でもパッケージの情報だけでもありがたいよ。ありがとな」

「ぐすっ・・大きな影みたいなイメージ画だったから、ドラゴンとかなんか・・大きな奴だとは思う」

「じゃあ、今度はゲームの登場キャラクターを教えて欲しい」

「うん」


そして彼女は紙に描き起こす・・


「「「「おおおお」」」」


上手だった。さすがソフトオタク姉さん。さらさら〜とゲームキャラを描いていく。


「これが主人公のアデレード。こんな感じの髪型で、色を染めるけど基本髪型はこんな感じ」


セミロングで少し癖っ毛、ピョンとアホ毛が跳ねている。さすがヒロイン、目もパッチリだ。


「次が男キャラ。それぞれの身長もこれくらい、かな?雑誌でこんな立ち絵が載ってたの」


主人公の右に3人、左に2人、身長対比を描く。ヒロインはすらとした体格で、女の子のわりに背が高い。冒険者設定だからだろう。細かな設定も描き込んでくれている。

男たちの髪型も『こんなふうに髪が右に流れていて片目が少し隠れている』など、実に細かい。人相描きにも使えそうな出来栄えだった。


「絵、上手いなぁダイヤ」

「友達と本出してたからね」

「ほほーー」

「このゲーム、友達と楽しみにしててー・・・・」


友達とゲームを一緒にする予定だったことを思い出し・・ダイヤの目が潤んだ。

自分がゲームを買って、彼女の家でプレイする予定だったのだ・・

死んだことを知って、友達はどう思っただろうか。本当は、翌日に一緒に買いに行こうと友達は言っていたのだ。早く手に入れたかったから、わたしは先に買いに行って・・・友達の言うことを聞いておけば・・


「リコちゃん・・ううっ・・うっ・・」


描きながらぐすぐす泣くダイヤを、4人は黙って見つめるしかなかった。

慰める術などありはしない。ただ、ダイヤが自分で立ち直るのみ。




本日の会議はこれでお開き。ダイヤも寮に戻って行った。目がまだ赤い・・ひとりにしてあげよう、4人の男どもが出来る事はない。

明日また会おうと解散したのだった。



「さて。この男キャラを探そう」

「これだけ特徴があれば、すぐ見つかりそうだな」


ダイヤが描いてくれた『キャラの設定資料集』に、ワッツの報告書。

すぐにでも見つけられるのは、ギルド勤務のボゥ・エレだ。

顔を見ておこうと、4人はギルドに向かった。

繁華街側にあるので通りも賑やかだ。だが賑やかというよりも喧騒・・何か揉めている様子だ。


「アルフレア、ここで待ってろ」


護衛役のオニールが前に出て、騒がしい人混みを掻き分ける。

見ると数人の男たちが怒鳴り合っていて、見ているうちに殴り合いが始まった。

『こんな往来でなにやってんだ』オニールははぁ、と一度大きくため息。

そして大きく息を吸いーー大声で叫んだ。


「何をしている!申し開きをせよ!」


騒ぎが一瞬止まり、一斉に声の主を目が追う・・そこには騎士(オニール)がいた。

オニールのマントは王家の護衛しか許されない鈍色、銀刺繍の王家の紋。

騒ぎを起こしていた者たちは、紋を見たとたん押し黙った。騒ぎをみていた野次馬も然り。

オニールも一人で捕物をする気はない。


「言わぬのなら構わん。さっさと散れ」


しっしっと手を振ると、男達はへこへこ頭を下げながら四方に去って行き、ギャラリーもそそくさと散って行く。

人の散る様を悠々と見ながら、ゆっくりとアルフレア達はオニールの傍にやって来た。


「オニール、流石だな」

「まあ護衛騎士だからな。お仕事お仕事」

「ごくろーさん、オニールん」

「王家守護のマントの御威光よ」


リーンブルグはオニールのマントをちょんと突く。


「ほんそれ〜すごかろ〜?」

「でも何を騒いでいたんだろうねぇ」

「女を取り合いしてた、とかかねぇ?」

「どんなええ女やねーん。オレのサイファには負けるやろ」

「俺のモーリン「おれのフラーウ「ナタリィこそ至高!!」


いつもの嫁自慢は通常運行である。


今回アルフレアはお忍びスタイル、ちょっと良いとこの貴族子息風の装いだ。オニールは護衛のマントを羽織っているが、近衛騎士団員も各地方都市に駐屯しているのでこのマントを羽織る者がいるから無問題。リーンブルグとワッツも貴族の子息の格好だ。高位貴族ではない、少しランクを下げた服装である。


「さあて、冒険者ギルドに突撃ですぞ」


アルフレアはギルドの重厚な扉を押し開いた。



続く>>

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