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若サージュ

ぼちぼち。なるたけ週1更新したい・・

ダイヤが勇者の領地に着いたのは3ヶ月前。


旅をしている時は男装していたが、今は年頃の女の子の格好だ。


彼女は元聖女、罪人シルフィーエ、だった。

でも中身は転生した時に入れ替わり、別人である。

とんとん、とドアが叩かれる。


「ダイヤちゃーん、いくよー」

「はーい!」


ワイン工場の同僚が呼びにきたので、ダイヤは寮の部屋を出ると、外で待っていた女の子と連れ立って駆け出した。


彼女は今は勇者一族が経営するワイン工場で勤務している。15歳〜22歳までの女子は、ワイン用葡萄を足でふみふみ潰すのがこの領地での習わしだ。お給料もいただけるので、この年齢の女子は嬉々として参加する。

前世での金銭で言えば時給千五百円といったところか。学生は授業後2〜3時間、暇をしている者は朝から夕方まで。

ここのワインは世界的に有名で、王家にも献上の『王室御用達』。

『アウンワイン』の儲けで領地は大層豊かである。


この地にやってきたダイヤだが、転生してすぐにひとりで自活はそりゃあもう不安であった。

だがすぐにワイン工場に就職出来たし、ワイン工場近くの寮にも入寮出来たし、友人も出来たし・・

今は転生人生を満喫していた。

前世の彼女は21歳の大学生で、ゲーム大好きマンガアニメ大好きラノベ大好きのソフトオタクだったが腐女子では無かった。BLに心揺さぶられる事が無かったのだ。

この世界・・『ローズガーデンゲート』に似た世界に転生したけれどその恩恵はほとんど受けず。

お相手枠の王子と高位貴族達に逃してもらった以外、ゲーム要素は無い。

『ローズガーデンゲート1』ではこの勇者の領地は全く出てこない。

『ローズガーデンゲート2』には出ていた。だって『2』のゲームの始まりがここ『アウン』だからだ。


ゲームタイトルにもなっている『ローズガーデンゲート』は学園の名前だ。2は学園の話では無いのになぜ『ローズガーデンゲート』?

まあぶっちゃければ続編だからタイトルを継承した・・といったところ、深い意味は無い・・とダイヤは考えている。

この世界は『ローズガーデンゲート』の世界観に似ているだけだと。

だって、男主人公達は婚約令嬢達とのエンドだったでは無いか!元のゲームでは、絶対にくっつかなかった。

確か公式ツイ○ター?で、『婚約者とのエンドはないのか』という問いに、スタッフ代表が『くっつきません』と答えていた。だけど王子達は・・

だからゲームと同じキャラクターもゲームと同じ事にはならないのだ。

だって聖女で主人公であるヒロインは、聖女にも関わらず闇堕ちして犯罪者になったではないか!

それにもう『2』になっているのだ、『1』の登場人物の自分は預かり知らぬ、いや関わり無し!

てなわけで、転生人生を満喫すべし!!なわけだ。




「ん?」

「若サージュ、どうしましたか?」


若サージュと呼ばれるのは、サージュの後継者であるアウン領の領主子息、メイヂ・サージュ・アウン。

最近まで名門『ローズガーデンゲート』に寄宿しながら勉強していたが、卒業して帰郷し本格的に領主教育を始めたところだ。

本日は自慢のワイン蔵を見学に来ていた訳だが、今年の春葡萄を潰して搾った果汁樽側に寄ったところ・・不思議な力を感じたのだった。


「なんだろうな?凄く・・波動を感じる。魔力かな?」

「これは昨日44桶で潰した葡萄ですな」

「魔法が使える子がいたのかもな。この樽、チェックしておいて」


教育係でもある侍従・・王家と同じく歴史のある勇者一族には、侍従がいる・・オモトビトマチギミ12世、略して12世が慇懃に礼をする。齢30代の紳士だ。


「かしこまりました。・・潰した女子達も調べましょうか」

「うん、特定しておいて」


魔法の力を持つ娘の潰した果汁で作ったワインは絶大な効力を持つ。さらに珍重される逸品となる。

その娘一人で潰した果汁で作るワインは・・想像するだけでゾクゾクするメイヂである。

肥沃ではあるが、それだけの領地。

観光に?王都からは遠い。

他の産業・・農業以外これといって無い。鉱山もない。森林はあるが、木材を運ぶには不便な場所だ。

ワインだけで繁栄させてきた領地なのだ。

だがそれ以外は?

これからの領を担うメイヂが考えていかねばならない案件だ・・

まずは最高のワインを作る。

魔法の力を持つ女子が潰す果汁で作ったワイン・・10年前に魔法の力を持つ女子が引退し、それ以後後継が見つからなかった。もう在庫も僅かになっていた。


「その子を見つけてきてくれ。早急に、ね」

「はっ」


とりあえず、資金源を確保。

次の案を決めるまででいい。


「葡萄踏みは結構力を使うからね。無理せず・・長ーーく働いてもらわないと、ね」


全ては領民のため。

まあ、他に産業と呼べるのか・・

それはダンジョンだった。

最近魔物が増えたという報告も、領主の館まで届いていた。

冒険者ギルドにも討伐依頼を定期的に募集をしている。


「あ。そういえば・・」

「若サージュ、どうかなさいましたか?」

「俺の同級生達が、8月に来るんだよ。アルフレア王子と愉快な仲間達がね」




続く>>

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