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スカルドラゴン

保健室に友人が見舞いに来た。

今ナタリィは席を外しているが、ずっと看病をしてくれている。


「大丈夫か?アルフレア」

「う〜〜・・まだ頭の中が変だ・・宇宙遊泳、ってかんじ・・いや、重いインフルに罹ったみたいな・・」


いつも元気なアルフレアがぐったりとしているのを見て、友人たちは改めて魅了の効果の恐ろしさを思い知った。


「アルフレア、お前足の怪我が治るまではここを離れていた方がいい」

「アレと距離を取ると正気に戻るみたいだしな」


心配する友人の言葉に、思わず怒りで飛び起きた。が、まだ体に力が入らなくてフニャリと崩れながらも怒鳴る。


「何故私が学園を出なければならぬのだ!?もう直ぐ卒業だぞ?それにドラゴンも来る。出て行くのはアレの方だ!!」

「ああ、すまない。お前が正しい。今度こそ、学園側も対応するだろう。王子に魅了、婚約者には暴行だもんな」

「まだ行動しないなら・・王家権限で死刑にしてやる・・私を悪く言うなら言えばいい・・アレはナタリィの綺麗な髪を、ぐいぐいと握って引っ張ったんだぞ!赦さいでか・・!」


ギリギリと歯を食いしばり、怒りを露わにする。

彼らも自分の嫁がそんな目に遭うのを目撃したら・・アルフレアは王子だから帯刀を赦されている。多分自分達ならそのまま切り捨てていただろう。今ならアルフレアも怒りのまま切り捨てればよかったと思っているが。


「落ち着け・・死刑かぁ。それが一番だが、アレには『とある』なんちゃらが付いている様だ」

「何だ『とある』って」

「なんか聞いたところ・・新興宗教?最近勢力を伸ばしていて、貴族を含めて多くの信者がいるらしい。まあ国の役に立っているらしいし、すぐに排除は難しいようだね」

「ふん、正体なぞ知る気はない。国の役に立っているなら構わん。でもアレは駄目だ・・絶対だ」


友人たちも強く頷き、同意したのだった。




王子が怪我をした知らせは直ちに王城に届き、状況を聞いた王も王妃もそれはもう・・・怒りを露わにしたのだった。当然である。入学最初の魅了、一度は赦しはした。無自覚の魅了なら、使わないように訓練をするべし、そう『とある』なんちゃらにも厳しく命令をした。それがどうだ。王子は魅了に抵抗するために、己の足に剣を突き立てたと言う。

息子である王子の強い意志に感心もするが、そうせざるを得ないほどの魅了の力に戦慄したのだった。

すぐさま『とある』幹部を呼び出し、アレをどうにかせよと宣告した。


この事件によって、『とある』の聖女・・広告塔として扱う事はもう出来ない・・『とある』でもアレは用無しとなったのだった。




翌日、アレは学園から何処かに連れて行かれた。どこに行ったのかは不明だ。


アレが去ってからは、アルフレアの頭の中はスッキリして落ち着いた。

この事態に父である国王は激怒、アレをどこか遠くへ幽閉した様だ。光属性の力がどれ程のものか調べ、役に立たない様なら即刻死刑か流刑になるらしい。王子と未来の王妃に、大変な所業をしたのだから当然だ。


このまま卒業まで、いいや、俺たちが生きているうちは目の前に現れなければ良い。

やれやれと4人は思った。

もうすぐスカルドラゴンが現れるのに、こんな事で煩わされるのは勘弁だった。




2月22日、「ふふふ」の日がやって来た。ほんわかイベント、気分もほんわかハートフル。

可愛い嫁達がバンダナを手に、現れた。


「アルフ様、よろしいですか?」

「ああ、頼む」


太腿の怪我は、ポーションを使用し、神官達が回復の術を使用したのですっかり治っている。

ナタリィは彼の頭にバンダナを結んだ。紺色で彼女の髪と同じ色だ。


リーンブルグは黄色、フラーウの金髪に似せた色のバンダナを首に付けている。


ワッツはモーリンの髪に似せたグレーのバンダナを、二の腕に巻いてもらっている。


オニールはサイファの髪色に近いオレンジのミニバンダナを右の手首に巻いていて、サイファはオニールと「お揃い」とばかりに、同じく右腕に巻いている。


4組のカップルは、他の人々に混ざって公園を歩いて行く。


3月も間近、卒業式はもうすぐだ。

既にお互いの家では、結婚式の準備も始まっていた。

貴族の結婚式の準備は、半年から1年を費やすものだ。

嫁達のウエディングドレスも2ヶ月前には仮縫いを終えていた。

レース製のベールは手織り、それから刺繍、宝石などを施していく。まだまだ完成までは遠い。

このベール作りが一番時間が掛かるのだ。だって花嫁が主役だもんね、仕方がない。


晴れの日を迎えるには・・倒さなければならない。でももうすぐだ、巨大な骨の塊の襲来は。




と、そ・の・ま・え・に!

恒例月末、スペシャルランチのお時間ですぞ!

しかも最後の晩餐ランチだよならぬ、学生生活最後のスペシャルランチ!!

作る側の気合、めっちゃ入ってます。食堂のコック達の無駄に凄い技術です!!

ミート&フィッシュ・スペシャルグリル。

まあいうてなんですが、ステーキとサワラの鉄板焼きですわ〜〜。

低温調理のステーキはシャトーブリアン、すーーっとナイフが入ります。サワラは味噌ダレで!

いつものように、嫁達があ〜〜ん攻撃。反撃は不可能!!モグモグするだけで精一杯です!

そしてデザートは、4人の大好きチョコパフェ!!

いっちゃいっちゃして交互にあ〜んですわ〜〜。はふ〜〜、周りの皆さん『ご馳走様』って顔してます!



4人ゆるゆるのお顔ですが・・そろそろです・・・







3月1日、早朝。


遂に・・・現れた。

禍々しい巨体、スカルドラゴンが飛来したのだ。

結局『イチヂク浣腸』は何に使用するかは分からず、『真実の鏡』も同じく不明だった。


「お前ら!ポーションは持ったな!」

「ああ。俺は魔法で弾幕を張る」

「街に近付けない様に!」

「まずは地面に引き下ろしてやるか!」


4人は城下町から離れた高台で、スカルドラゴンを迎え撃つ。


「火帯!!」


リーンブルグはオーロラの様に幅広の火の幕を展開、スカルドラゴンの前方を塞ぐ。

だがそのままドラゴンは進み、火が体を覆う。


「もう一度!火帯!!ついでに火拡散!!」


再びドラゴンの前方を火帯が塞ぐと、ドラゴンは先ほど食らった火帯でダメージを受けたらしく、目の前の火帯を旋回して避けようとする。

もたついた所に火拡散が体全体に当たり、骨を次々と砕く。だがまだ上っ面のダメージらしく、余裕がある。

火拡散は、50センチほどの火の玉が数百飛んで敵を殲滅する火系の中では最大の全体魔法だ。


「もう一丁!火拡散!!」


流石に2度目の火拡散は効いたらしく、動くが鈍重になって羽ばたきながら空中で停止した。


「よし!動きが止まった!」


浮遊でドラゴンに接近していたワッツが術を解除、落下速度を利用して突っ込む。


「片羽、頂く!!」


バキィ!!

右肩に剣を叩き込み、3分の2程切れ目を入れると、重さで残りも折れ、ドラゴンは落下して行く。


ごおおおおん・・・


泣き声というよりも管楽器の低音の様で、この一帯に響き渡る大音量だ。


「んがあっ!!耳が痛えっ!!」


スカルドラゴンから一番近くにいたワッツは直撃、どうやら耳が聞き取りにくくなってしまった様だ。


「(ポーションを)飲んどけ!」


オニールが手でゼスチャーして見せると、ワッツは頷いた。

片羽状態のスカルドラゴンは地響きを立てて墜落、アルフレアは剣を構えてオニールに叫んだ。


「オニール!援護してくれ!」

「じゃあ・・さっさとドラゴンに近寄ってもらおうか」

「待て待て待て!!援護だっちゅーとろーが!!何を術唱え・・まさか」

「風上!!さあ、ドラゴンまで飛んで行けー!!」


術は風上。風で物を浮かせて飛ばす・・アルフレアはものすごい勢いで空中へ舞い上がった。


「だーー!!くそっ」


オニールの風魔法で体が浮き、アルフレアはそのまま吹っ飛ばされる。

手に握るのは滅竜の剣、竜骨・・頭蓋骨を叩き斬る事が可能になる。


「滅す!!」


頭蓋骨ど真ん中を剣は捉え、パァンと良い音がして、真っ二つになった。


「頭の中の、魔石を砕け!」


頭蓋骨と共に落ちて行く黒く光る石を、オニールが剣で割った。

割れたと同時にスカルドラゴンの体の骨がばらけ、崩れて地面にどすんどすんと落ちて行く。


「さすが4人係りだとあっという間ですな!」

「よく俺達ひとりで挑んでたよなぁ。まあゲームだからだろーけどね」

「あー・・耳痛てぇ・・終わったのかな?」

「終わった終わった、待つために早起きしたからな、眠い・・」


アルフレアは皆の顔をぐるりと見渡して・・


「これで、ほとんどのイベントは終わりましたな」

「そうだな。後は卒業パーティーを残すのみだ」

「アレも居ないし、すんなり行く筈なんだがなぁ・・」

「イチヂク浣腸と鏡は結局何に使うんだ?」

「そういえばもう一人の攻略対象は、どうなったのですかな?」

「もう良いじゃないか。数ヶ月経ってるし、これでお終いで」

「そうだな。やるべき事はやったな」

「ま、気を抜かないでいようか」


皆は互いの顔を見合わせ、晴れやかに笑い合う。


「この前、私の花婿衣装の仮縫いしたぞ。挙式は今年の11月予定だ。卒業後は父から統治を習う日々が待っている」


リーンブルグはふうと溜息を吐いた。


「俺達はまだしばらく結婚しない。フラーウが魔法学校に行きたいってな。3年くらい?俺も一緒に行こうかな?」


ワッツは両手を首の後ろで組みながら、


「父が新婚旅行も兼ねて、外国へ商談に行く時モーリンを連れて行けって。4月から半年」


オニールは空を仰ぎつつ・・


「俺は王城所属の近衛騎士団に入団。親父殿が『外の飯を食って来い』ってさ。2年くらいかな?その後だな、結婚は」



それぞれの道が、目の前に開けていくのを感じた4人だった。





続く>>


とりあえず更新。6/17 16時まで追加修正しますので、更新ちょっとストップします。

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