魅了の効果
『親愛の日』の翌日から冬休み。
本日はワッツのお宅訪問!彼の私室に集まり、定例会議だ。
21/ 新年イベ
22/ 虐められた子やアレとの好感度を上げるミニイベ
22はあまり重要度が高く無い(というか、もうハーレムメンバーを増やす気がない!!嫁第一!!)ので、主に剣技や魔法をあげていく予定だ。
先月の18/ 魔法を暴走した子を助ける(これも新たな攻略対象出現)だが、結局今まだ出現もしていないし、名前も思い出せていない。別に出ないならいいんじゃない〜?
「皆の者!!今日は12月31日!カウントダウンに、行きますぞ!その後はぁ、日の出を嫁と見るのです!!」
毎年31日、夜11時59分に王城前の大広場でカウントダウンは恒例行事。四組カップルもこれに参加だ。アルフレアは王家の皆とベランダで国民と共に行うのだが、今年はなんと!ナタリィも一緒に参加だ!!いよいよ嫁認知!!
他の三組は国民の群れの中、参加である!
アルフレアが宣言すると、ニヤニヤ顔のワッツが肘で小突く。
「それだけぇ〜〜?ねえねえ〜〜。カウントダウンの後、日の出まで時間あるじゃ〜〜ん?」
すると見目麗しいアルフレアの顔が・・いやらしく破顔した!変顔!!
「そんなもの、決まってますぅ〜〜。嫁と暗闇の中ぁ〜〜・・イチャイチャ三昧ですぞ!!おまえらもだろがぁーー!!」
「「「「ヒュ〜〜〜!!!!」」」」
全員腕を振り上げ、奇声を上げる。テンションがおかしくなっても仕方がない!モテ期無く前世を終了した男子高校生なのだ。
恋人、彼女程度ではない!婚約者、未来の嫁だから!!もうすぐ家族だから!!
「ねえねえ〜アルフレア、日の出まで城にいて良い〜〜?」
「え〜〜?来るのぉ〜〜?」
「そういえば、城の東の塔は日の出スポットだよなぁ」
「おい、あの塔、8人いられるほど広くないよな?」
「そうですぞ!ナタリィと二人で御来光と思っているのですぞ・・遠慮して欲しいですな!」
「チッ。へーへー、じゃあ俺はフラーウと、うちの湖(領地に大きな湖がある!)に船でサンライズクルーズするわ」
「よーし、俺は浮遊でモーリンとイチャイチャ抱っこでお空デートするかな!」
「俺だって自領の展望台で過ごすからいいですよ〜〜だ。この時期は雲海が出るから、見応えあるし」
てなわけで・・
4人は嫁とカウントダウンをして、嫁の用意してくれたあったかい飲み物を飲んだりして時間を潰し、日の出を見ながら祈願したのだった。お願いした内容はお約束。21も完了、1月スチル『新年ご挨拶』もアレとは行かず、婚約令嬢と行ったので、これにて完了だ。
22もアレと会う機会が無かったので、自然と完了となった。
こうして1月はあっさりと過ぎた。
アレも邪魔してこない。剣技や魔術の技も覚え尽くした。あとは体力や魔力をいかに増やすか。
月末のスペシャルランチはビーフシチュー。
スペシャルというだけあって、超高級ビーフを使用している。デミグラスも10日煮込んで仕上げた手間暇かかった物を使用。口の中に入れた途端、肉が蕩けた。旨味満載の、シチューだった。
熱々だったので、嫁達が「ふうふう、アーン」をしてくれた。
この「ふうふう」が御馳走です!!ごっつぁんです!!
デザートはすっきり味のソルベ、口に中が爽やかになりました。
「ああ・・・スペシャルランチ、2月で最後か」
「3月7日には、卒業式だからな。スペシャルランチは月末だし」
「美味しい、嫁と楽しい、本当良い時間を過ごせてるよな」
「2月、最後は何が出るのか楽しみだな」
そう。2月のスペシャルランチをもって、お終いだ。
卒業に向かって、皆ラストスパートとなる。
2月に入ってすぐ、スカルドラゴンの目撃情報がぼつぼつ聞かれる様になる。
そして3月初め、彼等は戦うのだ。
骨で出来た翼を羽撃かせて、スカルドラゴンは城を狙って襲来する。
「絶対に、守るぞ」
「ああ」
「城下に寄せ付けない」
「1人でも倒したんだ、4人なら楽勝だ」
「油断しないで行くぞ」
「「「おう」」」
4人は気を引き締める。
この国を、国民を、愛する嫁を守り切る。
こうしていよいよ2月。
23/ バレンタイン的なイベ 元婚約者と喧嘩する場面も
24/ 突然のスカルドラゴン討伐イベ・・(2月終わり、3月初めなので、とりあえず2月枠に)
23だが、12月に続き、前世に似たイベントがこちらの世界にもある。
2月22日、『ふふふ』の日だ。
女から男にアプローチする日で、好きな男にバンダナを送り、OKなら男の腕だとか頭に巻いたりとか、バンダナを身につけ二人腕を組んで闊歩する。
バンダナを巻いたお爺さんと、腕を組んで歩くおばあさんもいたりして微笑ましい。
だが、彼等はこれから起こるスカルドラゴンの襲来の為、ギルドで依頼をこなして身体強化に勤しんでいる。その間、婚約者達をほったらかしだ。学園にいる間はもちろんイチャイチャしまくる。愛のフォローですよフォロー!
もうすぐ『ふふふ』の日・・そんなある日、事件が起こった。
アレが突如出現したのだ。学園の生徒と関わることを厳禁されているはずなのに、廊下にふらりと現れて、ナタリィの行く手を塞いだのである。数人の友人と話しながらだったので、気付くのが遅れた。
「アルフ様のぉ、婚約者様!今日もお一人なのですか?うふふ」
「!」
アレがナタリィに馴れ馴れしく声を掛ける。アルフレアを呼ぶ言い方も馴れ馴れしい。突然の事で、ナタリィも呆然として逃げることも出来ない。
「アルフ様はぁ〜、土日は何をしているか、ご存知ですかぁ〜?」
「・・・」
「黙るってことはぁ〜、知らないってことですカァ〜?あたしとデェ〜トしているんですぅ〜。学園では冷たいそぶりをしているのは、カムフラ〜ジュでぇ〜。内緒にしているんですぅ〜」
「・・・・」
何だか、不愉快だ・・この娘が発した言葉も大概だが・・彼女の存在?何故だろう、ぞくぞくっと震えが走り、鳥肌が立つ。
黙っていただけで、ナタリィはちゃんと知っている。アルフレアが友人達とギルドの依頼をこなしている事を。
泥だらけの靴、汗で湿ったシャツを見た。稀に顔に傷がついていて、血が滲んでいる時もある。
最近鋭い目をしている事も知っている。
彼女が声を掛けると、微笑んで見せるが、何か隠している様だ。
だからといって、この娘と浮気は全く考えられない。
何だろう・・・邪悪?最近この娘は光属性の力を得た筈。聖女であると発表された事を、ナタリィも聞き及んでいる。
なのにどうしてこうも・・禍々しい?・・のだろう。
・・どうでもいい。馬鹿馬鹿しい事を言う無礼者など、無視に限る。
「そうですか。アルフ様に直接聞いてみる事にしましょう。ではご機嫌よう」
軽く会釈をし、立ち去ろうとするナタリィを憎悪の目で睨むと、アレは豹変した。
「何よ!すましちゃって!!お高く止まっちゃって!!お貴族様が何よ!!この・・!!」
「きゃあ?!」
アレはナタリィに掴み掛かって、力一杯髪を引っ張った。
周りにいた生徒は驚いて身動きが出来ない。深窓の令嬢では粗暴な相手に太刀打ちなど出来やしない。
「や、やめてちょうだい」とか細い声で止めようとするが、アレに睨まれて萎縮してしまう。
アレは更に強く、ナタリィの髪を引っ張る。
「ああっ!」
「あんたもあたしと同じ人間だ、貴族がどうした!庶民だからって、馬鹿にして!!」
「やめて・・」
「ざまあみろ!この髪を、引きちぎって
バァン!!
音と共にアレは吹っ飛んだ。アルフレアが裏拳を振るったのだ。勢いでアレは3、4歩後ろにたたらを踏む。
アルフレアはナタリィを掻き抱くようにしてアレから引き剥がす。
「ナタリィ!大丈夫か!」
「アルフ、様・・」
「君!教師に連絡してくれ!」
「あ、はいっ!」
慌てて女性徒は駆け出した。
「どういうつもりか。彼女は未来の妃だぞ。しかも公爵令嬢だ。度重なる振る舞い・・もう許さん」
「何で・・何でよ!あたしだって、あたしだって!!」
アレの身体から、黒い湯気の様なモノが湧き出して揺らいでいる。
「それは闇だな?光属性では無かったのか?そんなもの揺らめかせて、聖女とはとんだ嘘つきめ」
「うるさーーいっ!!」
「っ、障壁結界!!」
だが遅かった。魅了の波動が、アルフレアに僅かに触れた。
「!!!」
瞬間、頭の中がグラグラする。目が回る。
「アルフ様!!」
ナタ・・いや・・・
彼女では無い。私が、私が・・愛しているのは・・
視線をずらすと・・居た。
私の愛しい娘が。
怒っている。
・・ああ、慰めないと。
腕に抱いていたナタリィを放して、一歩。愛しい娘に近寄ろうとして・・立ち止まった。
頭の中で誰かが叫んでいる。
違うぞ、俺
俺はこんな奴は嫌いだ
自分の思うままに操る
魅了で俺の心を無視して縛ろうとする悪魔
俺、負けるな!
負けるんじゃない!!
お前が一番愛しているのは誰だ!!
黒い服を着た少年が、必死に叫んでいるのが見えた。
・・ああ、俺だ。
高校の学生服姿の俺だ。
すまん、俺。
一瞬だけでも、魅了に負けた。
でも・・もう・・
「負け、ないっ・・な、た・・りぃ・・」
震える声でアルフレアは名前を呼んだ。
彼は震え、強張る手で剣を抜き、太腿を刺した。
「きゃああ!!アルフ様、アルフ様、ああ、駄目、駄目です」
「まだ・・・俺を縛るか、魅了め・・ナタリィ・・ナタリィ・・・ナタ、っ・・」
彼は膝をつき、両手で何とか体を支える。身体が震え、必死で魅了の魔力を堪え、抗う。
ナタリィから離れ、目の前のアレに近付こうとするのを必死の思いで耐えている。
「ナタリィ・・ナタリィ・・ナタリィ・・ナタリィ・・わたし、は・・負け、ないっ!」
愛する娘の名を呪文の様に呟いて、痛みに神経を集中させて、魅了を無視する。
息は荒く、額は脂汗を滲ませ、太腿からは血が流れて地面に滴った。
「アルフ様・・負けないで・・負けないで・・」
「ナタ、リ・・負けないよ・・私は、君がいてくれれば・・ナタリィ・・」
ぐらりとアルフレアの身体は傾き、地面に音もなく倒れて失神してしまった。
「だっ、誰か!!アルフ様を助けて!!アルフ様を、助けて・・お願いぃ・・」
彼女の顔は涙でくしゃくしゃで、彼の頭を抱きしめて大声を上げた。
暫くして息せき切って駆けて来る女生徒が、教師数人を連れて戻って来た。彼女も涙で顔がくしゃくしゃだ。
アレは目の前の二人を無表情で見つめていた。
続く>>
ぼちぼち更新 次回6/11 14時更新予定 全体修正するので、その次の更新は未定です
追記>>番外書いたよ!短編 男子高校生の日常 https://ncode.syosetu.com/n3485hr/




