10月・衝撃の・・『13』
さて10月は文化祭がある。9月で発生するはずだった・・・
12/ 虐められた子を慰め、好感度が上がる(2) 9月
これは起こらなかった。やはりゲーム通りでは無いらしい。
10月は次の3つが主なイベントになる。
13/ 元婚約者と話す (分岐的なとこ)
14/ アレとポーション作り ポーションを手に入れる
15/ 文化祭 アレと行動 バザーで古いグローブを手に入れる
13は『元』では無いので、多分無いだろう。
14は・・・確かアレにポーションのレシピを教わる、という内容だった。これはなんとしても知りたいレシピだ。最後で戦うスカルドラゴン時に用意したいアイテムだ。
15は嫁と回っても問題無かろう。
バザーでグローブを手に入れるだけの簡単なお仕事、みんなで固まって行動すれば良い。
このグローブは剣用にも良し、魔法用にも良しの万能アイテム。これも是非人数分欲しい。
「ポーション作り・・またみんなで行くか!」
「がっと!」
「ががっと!」
「がーーー、で完成!」
4人は両腕をぶん回してアクション。
「よぉし!作っている間の魅了防御は、リーンブルグに任せますぞ!」
「はっ!!防御結界はお任せあれ!!」
「メモは俺がとります!」
と、ワッツ。アルフレアとオニールはアレのそばでポーション作りのお手伝い・・・王族の嫡男に、未来の王に・・オニールだって高位貴族の嫡男だ。ヒロインは何をしても許されるのか?
「アルフレアと俺はアレになるたけひっつかないように作る!」
「がんばって!アルフレアー!:
「負けないでね、オニ〜ルん!」
「気合入れていこう!!」
「「「「おーーー!!」」」」
本日の会議は終了、それぞれ散って行く。
今日は金曜なので、4人は久しぶりに土日を実家で過ごすつもりだ。
アルフレアは自分の馬を馬舎に置いているので、それに乗って城に向かう。
リーンブルグは乗合馬車で帰るつもり、停車場に歩いて行く。
ワッツは従姉妹がこちらに来ているので、その馬車に乗せてもらう為に喫茶室で待つ。
オニールは辺境伯所属の騎士団が帰る馬車に乗せてもらうので、宿営地に向かった。
そして4人は・・・見てしまう。
アルフレアは貴族の屋敷前を馬で進んで・・ナタリィの家の前に差し掛かる。
『ちょっと挨拶でもしていこうか』と思い立ち、寄ってみたのだ。
ちょうど彼女の姿を見つけたので、声を賭けようとしたが、彼女は誰かと話しているところで。
その頃・・
リーンブルグは停車場の、ちょっと外れの道の奥で見てしまう。
同じ頃、ワッツは喫茶室の奥の席で見てしまう。
オニール、彼も同じ頃、宿営テントの隙間で見てしまう。
そこには・・
婚約者達が、知らない男と親しそうに話しているところだった。
それが、なんだか諍いになってきて・・・
男達は、婚約者に手を伸ばして・・抱き締める。
「あっ」
4人は思わず声が出てしまった。
ふいと・・
婚約令嬢達と4人は目が合った。
別々の場所だけど、4人は同じ様な目にあっていた。
「アルフ、さ・・」
「リーン様」
「ワッツさ、ま・・」
「オニール、ん」
婚約令嬢達は驚いた様子だ。
対する彼等も同じく驚き、4人の男全員同じ思いだった。
(やばい。やばい。やばい。幸せだったのは、もしかして・・・俺(達)だけだったのか?)
声が出せない、呆然としてしまった。
あのエンドを避けようと頑張ってきたのは、無駄だったのか?
もしかして彼女達は、もしかして、もしかして・・・他に好きな男がいたのか?
そして・・・・・
彼等は。
悲しそうに微笑んだ、それしか出来なかった。
この野郎、離せ!と相手の男を殴りかかったって良かった。
でも、心の中の彼等は、恋さえした事の無い高校生だったから・・
嫌われたく無かった。
そして格好付けたかった。
だから踵を返して歩み去るしかなかった。
「ま、待ってください!アルフ様!!」
「リーン様、待ってぇ!
「ワッツ様、ワッツ様!」
「オニールん!!違う!」
ずきずきする胸。待つ?
聞きたく無い、でもここで聞かないのも聞くのも同じ結果なら・・・
「盗み見る感じになってごめんね。それで・・何?」と、アルフレア。
「こんな物騒な所で話すなら、喫茶室で話しなさい。危ないから」と、リーンブルグ。
「楽しそうに話していたね。俺じゃ君を笑わせることなんて無理だった様だ。席に戻るといい」と、ワッツ。
「こんな所でこそこそ話す様な相手が良いんだろう?何が違うんだ?」と、オニール。
男から離れ、彼女達は彼等の元に駆けて来た。
男達が彼女達の名前を呼ぶが、皆振り向かなかった。
婚約者たちの言い分、言い訳は概ね同じだった。
彼等とうまくいかなくなっていた時期、時々相談に乗ってくもらっていた。
うまく行く様になってからは、全然会っていなかった。
会おうと連絡が来たので、今まで相談に乗ってくれた事のお礼を言おう。
ところが、今までいい友人と思っていたのに、物凄く怒りだして急に抱き締められて驚いた。
ふと視線を感じてそちらを見ると・・彼等と目があった。
その瞬間、彼女達はズキンと心が痛んだ。
彼等がとても優しく、そして悲しげな微笑みだったから。
「で。これからどうするの?」
彼等が聞くと。
「ごめんなさい」
彼女達は謝罪する。が。
「どの辺を謝る訳?」
彼等は問い詰める。、まずはアルフレアだ。
「・・内緒にしてたわけでは無いけれど・・」
「内緒みたいなものだよ?これは」
「はい・・」
「で。どの辺?」
「・・侍女をつけて外出・・?」
「宅地内だからね、君は。で、あれ誰だったの」
「近所の伯爵の子・・幼馴染みたいな子で」
「身分はあるのか。で?まだ反省してないよね?分かってないよね?」
「えっと・・・」
「恋愛でも、なんでも!相談するのは、他人なら異性に相談しちゃダメだろう?」
「そうなの?」
「(以前はナタリィは悪役令嬢で、友達いなかったからな)・・婚約者がいるからとか、そう言うの関係ない奴は多いからね?」
「はい・・軽率でした・・」
「そう言うところ見られたら、損するのはナタリィだから」
「はい・・」
「でも、異性と会うときに人目のあるところで会うのは正解。もっと注意しなければいけないよ」
「はい・・ごめんなさい・・」
「さあ、おいで」
「キャ」
アルフレアは彼女を馬に乗せると抱き寄せる格好で、彼女の家の敷地を闊歩する。
「驚いた」
「アルフ様・・」
「浮気していると思った」
「え?」
「・・そう言うつもりが無い様だから、赦す」
「(・・あ!そういう事?)・・ごめんなさい」
「そうだな・・お仕置きくらいしないと気が済まないなぁ(ニッコリ)」
「??」
どうなったかは内緒。
リーンブルグは馬車に彼女を乗せると、はぁーと深く息を吐いた。
そのまま黙って車窓を眺めているが、眉は釣り上がっていて怒っているのが分かる。
「リーン様・・ごめんなさい・・」
だが返事が無い。軽率だったと今考えれば思う。彼が怒るのも無理はない。
このまま返事も、それどころかもう話もして貰えないかも、そしたら涙がこぼれた。
「り、り・・ぐす・・」
ふいに彼の腕が伸び、ひょーい。
軽々と彼女を持ち上げて、彼の膝に横だっこされた。
そしてギュッと抱き締められる。
「離さないから。言い訳など要らない」
「私が大大大好きなのはリーン様だけですから・・信じてください」
「じゃあ、一生掛けて信じさせてみろ」
「はい。頑張ります。だから見捨てないでください」
「努力しろ」
「はい・・リーン様・・好き」
「生憎だったな。俺はお前なんか・・愛している」
「ほわぁ!」
ちなみに、リーンブルグが家に帰ると家の者が執事と女中(二人は夫婦)しかいなかった。
両親と兄弟は急用で数日外出するとかで、使用人も休暇をもらって出払っていた。
「何だこれ。聞いてなかった。フラーウ、君のうちに送ろう」
「あ、あの・・このままいてもいいですか?」
「え」
さあ、どうするどうなる?
さて一方のワッツ達は・・・彼女は安定?のダンマリで、相変わらず話が進まない!!
と言うか、話しかけるのもはばかる雰囲気だった。それはそうだろう。
モーリンと話していたのは幼馴染だそうで・・
彼と話す彼女は・・楽しそうだった。家同士、長い付き合いなのだそうだ。
(俺と一緒になるよりも、そっちの方が良かったのかもな)
今は喫茶室を出て、従姉妹の家の馬車に乗っている。従姉妹は用があるとかで乗っていなかった。
(婚約破棄、してあげた方が良いのかもな。俺との婚約は家同士の繋がりみたいなもんだ)
ゲーム中も大好きだった。この世界に来て、更に好きになった。
(楽しい思いも一杯した。そろそろ離してやるべきか。むしろ良いタイミングだったとも言える)
彼はずっと俯いて考えていて、顔を上げるとモーリンが涙を流しているのを見て・・
ニコッと笑って見せた。
「モーリンは彼が好きなんだな?だったら俺との婚約は解消しよう」
「ワッツ様」
「早く言ってくれれば良かったのに。俺と話すのは面倒だっただろう?すまない、気付かないで。君が不利になる様にはしない。そっと婚約を解消すれば良い事だ。俺は君が幸せになるなら
「ワッツ様!わ、私はそんな、そんな・・ワッツ、様・・私は・・・」
モーリンは彼が話している最中に割り込んで話すも、涙が更にポタポタと、床にも滴って、また黙ってしまった。
「幸せに出来無くて済まない。君も、気心を知った彼の方が良かろう?」
「・・・嫌です。嫌ですっ・・私は、ワッツ様が・・貴方が・・良いのです」
「無理はしなくて良い。家の事で」
「縁談の話が来た時、私が。私が選んだのです。ワッツ様を、貴方を・・」
モーリンは公爵家の令嬢だ。彼は侯爵、少し身分が下がる。普通は子息側に絵姿と釣書が送られ選ぶのだが、絵姿と釣書を見て選ぶ側だったのは彼女の方だったのだ。
「そうだったっけ?」
「そうです」
彼は貴族間の婚姻などこんなものと思っていたので、『婚約者のモーリン嬢だ』『了解』で進めた。
「ではこのままでいいのかい?」
「お願いします」
「・・本当に?」
「はい!」
「分かった。でも二人きりで会うなら、今度から俺も付いて行くから」
「はい」
「いいのか?」
「誤解させてしまった私が、全面的に悪いのです」
「そうか。良かった」
「ワッツ様?」
「どうやら俺は、存外君に惚れていたと分かった」
「・・私もです」
「おや。気が合うね」
「ふふ」
「でもね。本当、さっきは心折れそうだった」
「・・・」
「もっとゆっくりと、君と進める気だったけど、やめた」
ガラガラ車輪音を立てて馬車は行く。
中で何があったのかは、内緒。
最後は出来る子オニール。彼は気が付いたのだ。
「ああ、これが・・・『13』だったか。なんとまあ・・・キツイな(心に)」
「オニールん、だからあの人は、相談してただけで」
「それでも許さない」
「だって、ダンスパーティー、ひとりでいけないじゃん。オニールんは前はエスコートしてくれなかったし。丁度良いところにあの人が」
「そうだね。そこは俺が悪かった。あの頃は君とはちょっと距離取りたかったからね。分かるよね?」
「う」
「なのに婚約者を無視して出掛けてたとか。普通は反省して謹慎するべきだよな?」
「うう」
「さあー、文句があるなら言えよ。言い訳を片っ端から折りまくってやる。ヘイ、カマーン」
「ううう、ごめんなさいぃ」
「なんだ、もうやめるのか?」
「降参ですぅ・・でもオニールんこんな性格だったっけ」
「お前のために厳しくなろうと決めた」
「うううう」
「まずは、こうだ」
そしてオニールはサイファを抱き締める。
「おほっ」
「・・かわゆい女の子が出す声じゃ無いな」
「オニールん、今分かった」
「なんだ」
「好きな人が抱き締めてくれると、こんなに嬉しい事!好き!!」
「ははは、やっと分かったか。ひとつ賢くなったな」
後頭部に手を滑らせ、軽く掴んで逸らして仰け反らせた格好にして、口付けをした。
「今度は何かわかったか?」
「・・オニールんが大好きってわかったぁ〜」
「そうかそうか」
突然目の前の宿舎のテントが折り畳まれて、二人は数名の騎士見習いと目が合う。
「お父上はあちらの馬車でお待ちです、坊っちゃま」
彼らはニヤッと笑った。
月曜、出校した4人は例の会議室に集まっていた。
「あー。やっぱしあれ『13』だった訳ですな」
「ああくるとは思わなかったぞ。ゲームではさらっと終わったのになぁ」
「心抉って来たな、マジ焦った」
「ふぅ・・やはりこれからもゲーム特性は、気をつけるべきと分かった」
「俺達と嫁達(でも好き)との仲を試す様な内容でしたな。で!」
アルフレアがニタリと笑う。
「「「ん???」」」
「皆様、可愛い嫁と何か・・・進みましたかな?(ニヤァ)」
他3人の男供は、そそくさとして目を泳がせる。
「お。おう・・まぁ(かあぁ)」
「うん・・ちょっと(ソワッ)」
「まぁな!(えっへん!)」
「よございますよございます。これを糧に!頑張りましょう!嫁との幸せなエンド、もしくは幸せなスタート目指して!」
「おう!!!」
今回はここで解散。
だって、文化祭が待っているんだもん!
続く>>
6/7、16時あげます。




