9月は剣術大会とテストですぞ!
こうして夏休みは瞬く間に過ぎて・・・
9月、いよいよ新学期が始まった。
学園の話題は、剣術大会の話で持ちきりだ。
4人は去年も1〜4位に入賞しているので、当然参加である。
それぞれの婚約者達も応援してくれるとあって、去年より更に気合が入っているのだ。
「今年も優勝メダルを頂戴しますぞ。そしてナタリィにメダルを『カプッ』と齧って貰うのですぞ」
「くっ・・・今年は魔法を爆上げして、剣はあまり力を入れていない・・負ける」
「今年こそ1位を奪って、モーリンに捧げたいっ」
「やばい・・サイファがマジで出たがっている・・・俺当たったらどうしよう・・」
「ほぅ?俺は忌憚なくぶちのめすからな。勝負に性別は関係無い(キリッ)」
「ぎゃーー!!やめろーーー!!」
「オニールん、コユコト甘やかしちゃだめネ。きちんと手綱は締めヨ。じゃじゃ馬ならしネ」
「どこのあちゃらさんだ、お前」
「まあ、オニールんは嫁を鞭で躾けるんだったな」
「しねえよっ!!とにかく出たがっていて、我がままなところがまた出てきちゃって」
アルフレアが華やかな笑顔でウインクした。周りの客がフニャッフニャになっている。
「ふむ!ではこうしよう。今度俺達が練習相手になってやると!この未来の王が、直々ですぞ。だから彼女に参加は断念しろと言っておきたまえ」
「え!良いのか?」
「だって、いつも頼りになるオニ〜ルんの為だもの〜」
「そうよ、オニ〜ルんの力になってあげる〜」
「ファイト!オニ〜ルん!」
「ありがとう!お前等、チョコパフェ奢ってやる!」
「ひゃっふ〜!」
かくして月の半ばまで過ぎたが、11番目に該当する出来事は起こらず、いよいよ剣術大会当日となった。
順当に勝ち進み、今回も準優勝まで勝ち進んだ4人だ。
A枠はアルフレア対ワッツ、B枠がリーンブルグ対オニールだ。
「頑張ってください!アルフ様!」
ナタリィの声援に、次の試合を待つB枠陣が『!』と気付いた。
「な、なんと!省略呼び・・・?」
「あー、分かったぁ。アレに馴れ馴れしく呼ばれたからだ!しかも今までは公では『アルフレア殿下』だったのに、こんな大勢の前で!ほぅほぅ」
「ああ、アレは『アル様』だったか?ちょっとどころか不敬罪並みの馴れ馴れしさだったよなぁ」
などと言ってると、モーリンの声援が。聞き取れないほどか細い。でもワッツには大声援に聞こえた。
「ワッツ様、ふれぇ〜、ふれぇ〜・・」
弱々しいというか、ちょっと力が抜ける声援、だが彼女にしたら大声なのだ。
「はうっ・・!ゔ〜〜〜、俺の嫁(声ちっちゃ)ががゔぁゔぃゔぃ〜〜っ!!」
もう勝たなくて良い、すぐにでも行って抱きしめたいっ!!
ワッツはさっさと負けました。そして嫁の所へ、終了の礼もそこそこで退場した。
次の試合はB枠、リーンブルグ対オニール。
「リーン様ぁ〜〜、頑張れぇーーっ!!フレーフレー!」
フラーウがミニスカート(この世界にしては短い)でチアリーダーで応援だ。
「フラーウ!!そんなはしたない格好で!足が丸見えではないですか!!」
血相を変えたリーンブルグは会場の枠をひらりと飛び越え、
「すまない!!危険だ!、じゃない棄権だ!!」
彼女を小脇に抱えると、一目散に応援席ゲートに消えた。
観戦客達は呆然として、会場はシーーンと静まり返る。
「・・・じゃ、アルフレア・・決勝するか」
「そうだな・・去年と同じ組合せですな」
「負けねーぞ?」
「こっちもですぞ」
ようやくちゃんとした試合となり、接戦の末勝ったのはアルフレアだった。
勝った時のおねだりの『メダルかぷっ』もやって貰いましたとも!
肝心の優勝の剣は、当然アルフレアが手に入れた。
他の男子達には『御守り』が貰えた。HP回復(中)の効果が付与されている。
「それ戦う時に地味に便利なんだよなぁ。良いなぁ」
「アルフレアは滅竜の剣だろ?それ、アンデッドにも効くじゃないか」
「そうそう。欲をかかないかかない」
「主で戦ってもらうから」
「仕方ないでござるな」
アルフレアは早速帯刀している。良いのよ?真剣を帯刀して良いのは、王族だけだから。
「これでいつ襲ってきてもぶった切ってやるデスぞ」
「おおおーーーっ(拍手)」
「では、チョコパフェで労いして差し上げよう」
「きゃー!だから大好き!!オニールん!!」
「わぁ!ありがとうございます!オニールん様!」
「「「「ゔぇ?」」」」
声にした方を全員『ギュン!』と振り向くと・・アレがにこやかに笑って、居た。
(な、なんで?なんで笑ってるんだ?・・はっ!!)
「障壁結界!!!」
「きゃあ?!」
リーンブルグは瞬時に結界を張る。
「おい!魅了は?大丈夫か?」
「そ、そうだった・・うっかりしていた・・」
「二度目の魅了ポイントだった・・・ここだった・・忘れてた・・」
「とにかく今は逃げろっ!!ここからすぐに離れろっ!!魅了は術者からすぐに離れるが鉄則だ!」
「おう!!!!」
ダッシュで4人はアレから離れる。
「あ、いたぁ・・」
障壁結界に当たってアレは倒れたようだ。
「大丈夫?」
「すみません」
そこに通りかかった誰かがアレに手を貸し、立ち上がらせている。
「ありがとうございます!」
「・・あ、いや・・」
そして・・・ふわぁん・・薄いピンクのモヤが彼を包んだ。
そのモヤはハート型になるとしゅうぅと消えた。彼の顔は・・・目がハート、緩んだ笑顔。
魅了にかかってるーーー!!!!
「シュウ、お待たせ!」
彼の恋人?女の子が駆け寄ったのを、彼は手で払う。
「なんだ。なんの用だ・・ああ、ごめん。こいつは友達で」
「えっ・・・シュウ?何を」
「うるさい、向こうに行けよ」
や、やばい!!早速犠牲者が!!
「・・チッ」
「アレから引き離すぞ!」
アルフレアは男に駆け寄ると、腹パンで気絶させて男を抱えると、ダッシュしてアレから離れる。
ワッツは女の方を抱き上げて、アルフレアを追う。
リーンブルグは睡眠をアレに掛けると、アレはこてんと廊下に転がって眠ってしまう。
オニールは教師を呼び、アレがまた魅了を掛けた事を連絡しにいった。
保健室に男を連れて行き、べそをかいている女の子に彼の症状を説明している所に、校長と教師数人がやってきた。
「王子殿下!ご無事でしたか!」
「校長先生。彼女にはほとほと困りますよ」
「彼は彼女の魅了に掛かっているんです」
「!!・・なんと・・」
廊下で寝転がっていたアレを教師達が回収し、起きてから尋問となったのだが・・
魅了を俺達に仕掛けるつもりは無かった、ただ仲良くなりたかった。
せっかく友達になったんだから。
・・だそうだ。
これには4人も表情が固まった。そして身体をブルッと震わせた。
「友達?庶民が、私・・王子と?無礼すぎない?ねえ、無礼じゃない?」
「まだ俺達は何も許してはいないのだが」
「前向き?・・恐っ。魅了調整出来ないならもうどこかに隔離するべき」
「しれっとチョコパフェ食べるメンバーに入る気だったのが、もうキモい」
暫くして目を覚ました男は、魅了に掛かったのが短い時間だったせいか術が解けていた。
魅了ににかかっていた時のことも覚えていて、彼女にひたすら謝っていた。
「自分の思いや考えと違うことを言って、君を邪険に扱って・・本当にすまなかった!」
「良いの。目が覚めてくれたなら」
グスグス鼻をすすりながら涙する彼女に、彼は土下座で謝っている。
男主人公4人は、商店街の喫茶室でチョコパフェを食べながら、先ほどの出来事を検証していた。
「1分と掛からなかったのに、この威力・・やばいぞ、アレの魅了」
「でもさ。校長とかは魅了に掛からないな。何かアイテムつけてるのか?」
「いや、そんな事は言っていなかった・・」
「あっ」
急に声を上げたので、3人は彼を見る。
「んっ?どうしたオニ〜ルん。いつもの閃きですかな」
「いよっ!とんち小坊主!」
「一休さぁーーん!」
「はぁーーーい!・・・ったく。あいつ、多分・・」
「多分?」
「年齢選り好み。恋人にしても良い年齢で、魅了かけてる。もしかしたら、男前なら40でも掛けるかもしれんが・・結婚相手にしたい奴とか」
「ゔあ」
「さいってぇ〜〜〜!」
「好みはお前にもあるが、相手にもあるという事を考えてねーな」
「しかも魅了で操ってるとか」
「人類の敵だな」
「ほんそれ」
「あいつを野放しにしたら・・・最悪エンド待った無しだ。気を引き締めて行くぞ!」
「「「「おおおーーーーっ!!!」」」」
いつもの如く、月末スチルは9月・テスト勉強。
婚約者のお嬢様達を定例会議で使っている会議室にお招きし、8人でお勉強会だ。
アルフレアは侍女を呼び、お茶を用意して優雅にテスト勉強。
結果も上々。アルフレアは定番の1位、2位オニール、8位リーンブルグ、12位ナタリィ、13位ワッツ、18位モーリン、22位フラーウ、31位サイファ。ここまでは良かったのだが・・アレはなんと・・4位だ。
この結果を見て、4人の男どもは背筋がゾクゾク・・として震えた。たかが市井でちょっと勉強をした程度(と聞いている)で、貴族学校の上位に収まる事が出来るものだろうか?やはりゲームのヒロインだからなのか?
そんなことはほっておけ!今月も月末ランチ、8人で!美味しくいただきました!!
デザートあ〜んはいつもの事だが、今回はステーキ!一口サイズに切って、あ〜ん。
それはもう!!美味しゅうございました!!
こんなにラブラブで、幸せなのに・・・何故これほどに不安なんだろう。
あの魅了が恐ろしい『毒』で、愛する嫁を弾糾するかもしれない恐怖。
自分の意志にかかわらず、攻撃してしまうかもしれない。泣かせるかもしれない。
仲良しカップルでさえ、僅かの時間でおかしくしてしまう威力。
負けるものか。絶対。
続く>>
ちょいちょい追加修正 次回は6月6日16時更新予定




