すれ違うのは会話だけ?
コウモリが飛び交う洞窟を歩くテツアキとステファ。
ランタンに照らされて、壁に当たった影が揺れ動く。
テツアキは隣にいるステファを見る。
(そういうことか)
靴音と羽音が響く中、テツアキはある結論に至る。
「灯り、持とうか」
テツアキはステファに話しかける。
「大丈夫ですわ」
「そうか。この洞窟の先には何があるんだ?」
「検問所に出ます。国境越えの」
「なるほど、その後の予定は?」
「道沿いに歩いて街に行く予定です」
「そうか……」
テツアキが話しかけても短く答えるステファ。
(会話しようぜ。キャッチボール)
「そこ、クモの巣」
「あら、本当。ありがとうございます」
簡単な会話をしながら、テツアキとステファが歩いていくと光が見えた。
洞窟の出口が近いせいか、ステファの歩く速度が上がる。
テツアキも歩く少し速度を上げ、横に並ぶ。
外に出たテツアキは太陽のまぶしさに目を奪われる。
次第に目が慣れ、周囲を見ると緑が飛び込んできた。
「本当に異世界なんだな」
テツアキは山肌にそって少し道を外れて歩く。。
「空気も良いし、緑も奇麗だし、空も青いし、鳥が飛んで花も咲く――」
「こっちですわ」
すでに先に歩いているステファを見て、テツアキは苦笑する。
(自然の中にいるって実感できたのは、いつ以来だろうか)
テツアキは目の前に広がる道に一歩踏み出す。
そのとき何かがテツアキの髪に当たった。
(小石……?)
「どうしました?」
頭上を見たテツアキをふしぎに思ったのか、道を戻って上を見るステファ。
「――っ!」
パラパラと降ってくる小石にテツアキは駆け出し、ステファの前に立つ。
即座に人が降ってきた。
続いて石や岩も落ちてきて周囲に砂ぼこりが舞い上がる。
「大丈夫か」
「……ありがとうございます」
「なあに。ステファなんかあったら帰りそびれてしまうからな」
テツアキの言葉を聞いて、顔が引きつるステファ
(少しぼんやりしていたかと思えば、機嫌悪くなる……まったく)
肩をすくめたテツアキは、うめき声を聞く。