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生存者あり?

 ジンジャーが読んできた医者により、パールはさっさと連れていかれた。

「手当が終わったら話はできるかね」

 ミントが呟く。

 もしパールが中級妃なら、奥のほうから脱出してきたことになる。守護の腕輪があったとしても相当な悪運だ。

「そうね、どの程度の情報がとれるかわからないけど、さっきよりはましな話が聞けそうよね」

 ジンジャーが同意する。

「でもさ、もうすぐ三週間だよ、何食べてたの?」

 後宮内に備蓄食料があったのだろうか。あったとしてもおかしくないが。

 バジリコは後宮内の地図を用意するようにと依頼したがあっさりと断られた。なぜなら後宮の建物が完成すると同時に廃棄したからだという。

 後宮内は許された宦官が隅から隅まで記憶しているという。ならば案内人にその宦官を貸せと言ったがそれも断られた。

 実にやさしくない依頼人たちだ。

「処置が終わったとのことです」

 メイドさんがやってきた。

「話はできそう?」

 ジンジャーが代表として聞く。

「はい」

 先ほどのシトリンより上等な部屋にパールはいた。

 パールは銀髪に抜けるような白い肌。そして赤い目をしていた。

 アルビノという言葉がふとバジリコの脳裏に思い浮かんだ。その珍しい容姿ゆえに後宮に収められたのだろうか。

「私は、自分の意思で後宮を出てはいけなかったのに」

 パールは自責するように呻く。

「とどまらねばならなかったの」

 いや無事に逃げ延びることができて運がよかったと思わないのか。

 その場にいた四人の心が一つになった。

 いきなり立派な格好をした人たちの一団が飛び込んできた。

 パールは身を伏して謝った。

「申し訳ありませんお父様、私は命惜しさに家を危うくしました」

 そう言って泣き伏す。

「ああ~」

 ミントが小さく手を打った。

「多分中級妃あたりは人質も兼ねているんだろうね、下級貴族なら家の規模もたかが知れている。単なる人数合わせだから出入りは多少の制限で済む。でも規模の大きい家なら妃が勝手に出るのは謀反を疑われる可能性があるってとこか」

 ミントは没落したお嬢様上がりだ、政治というものに一番詳しい。

 愁嘆場が終わるまで聞き取りは中断した。

「インペリア様、パパラチア様、バライバ様のいらっしゃるところは防御陣が張り巡らされているため無事です。そこにこもっている者達もいますが。後、食堂も何故か無事です。もしかしたら結界が帳られているのかもしれませんわ」

 これには心底びっくりした。本当にいたよ生存者。

「そんな丈夫な結界が張られている場所があるの」

 ジャスミンが何か引っかかった顔をした。

「それで具体的な地形とかは?」

「覚えておりません、私も進むときは無我夢中で」

 その言葉にがっくり来た。

 せめてそのインぺリア様やバライバ様パパラチア様とやらの居住空間の具体的な場所を聞いておきたかったが。

「多分大分迷ったと思います、最初に宦官の案内で連れてこられた倍以上歩いたと思いますし」

 そう言われてしまえばどうしようもない。

 そこで話を終えようとしたところでまた立派な衣装を着た人たちが現れた。

「うちの娘を知らないか?」

 息せきっている。

「薔薇をかたどった腕輪をした遺体を見ましたわ、顔はつぶれていたけれど、あれはコーラルの腕輪でしたね」

 パールは無情に答えた。


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