冒険者バジリコ
バジリコはつい先日ダンジョンを一つ消してきたばかりだ。
ダンジョン、それはある日突然出現する。
ごく普通の洞穴や森、山がダンジョンと化すのだ。
そして得体のしれない生き物が闊歩し、時折周辺の住民を脅かしたり殺傷したりする。
そのためダンジョンができればそれを消滅させるためにバジリコのような冒険者がダンジョンに赴く。そして、ダンジョンを構成するコアを破壊すれば消滅するが、ダンジョンコアはダンジョンの最奥にあるのが通常、とにかくダンジョンに生息する生き物は危険なことが多く命がけの仕事だ。
まるで異世界の生き物がやってきたかのようにバジリコの知るいかなる動物ともかけ離れた姿のそれは化け物というにふさわしい。
ごくまれにだが、その生物から貴重な道具が作れたり、或いはこの世界にいない生き物をペットとして珍重する好事家もいたりする。この世界にない物質が発見されたりするので温存されることもある。
異世界という感覚を持っているのはバジリコがこの世界とは全くかけ離れた世界の記憶を持っているからだ。
だが生物相はその世界とそれほど変わらないのでこれはパラレルワールドの一種だろうかとも思っていた。
だがあちらの人間は魔法が使えない。どこから魔法はやってきたのだろうか。
もともとあちらでは古代魔法という概念はあった。機械文明に移らずそのまま魔法文明を発展させた世界なのだろうか。
だとすればダンジョン生物はカンブリア紀から枝分かれした世界の住人なのかもしれないが、それ以上のことはバジリコの頭に余った。
とにかく仕事は終わった。仕事が終わればしばらく休暇を取るのがバジリコの習慣だった。
それなのに報酬を要求するバジリコに冒険者ギルドのマスター、通称ギルマス、本名不詳は無情なことを言った。
「次の仕事だ」
それにはバジリコも納得できない、仕事終わりの休暇はどうしても必要だ。この仕事は体力も気力も必要とされる。身体のメンテは必須事項だ。
「この仕事はお前たちにしか頼めない」
そう言って魔導士バジリコとそのほか。剣士ミント、呪術師ジンジャー、戦士ジャスミンを並べていった。
「なんでこのメンバー?」
ミントが不思議そうに尋ねる。
冒険者は男女比が五対三ぐらいで普通はメンバーは男性のほうが多くなる。
だがここに集められたメンバーは全員女性だ。
「なぜなら、ダンジョン化したのが後宮だからだ」
しばらく言われた意味が分からなかった。