10話 圧倒的な実力差
更新遅くなってすみません。
頑張って3章の終わりまで一気に書いていきたいです(願望)。
……クロエの放つ全力の一撃を受け止めれば俺の勝ち、受け止めれなければ俺の負け、ということか。
クロエから発せられるその魔力を見るに、次の一撃が彼女の全力であることは一目瞭然だった。
しかし、問題はその一撃を俺はどう対処すべきか、ということだ。
模擬戦が始まった当初、自身の入学が取り消されることを危惧して、俺はクロエと学長に気を遣っていた。
可能性はかなり低いが、それでも無いとは言い切れない。
だから俺は無難にクロエに華を持たせ、学長に自分の実力をそれなりにアピールし、この場を乗り切ろうと考えていた。
でも、そんなの彼女に失礼だな。
俺が手を抜いて勝ったとしても、クロエが喜ぶようには思えない。
彼女はとても真摯に強くなろうと努力している。
剣を交え、それが強く伝わってきた。
だから俺がここで手を抜くのは、彼女に対しても、そして自分自身に対しても失礼だ。
「……よくここまでの魔力を練り上げたな」
「貴方に言われるとお世辞にしか聞こえないわ」
「……そりゃ悪いな。だが、安心してくれ。俺も次の一撃でお前を本気で倒しにいく」
「……そう、ならさっき私がした宣言は撤回してもいいよね?」
「ああ、もちろんだ。それにいつでもかかってきてくれて構わない」
「……私は魔力を練り上げる時間があったのに、不公平じゃない?」
「実戦の場でそんな悠長な時間は中々ないからな。俺はこれで構わない」
「……それなら遠慮なく行かせてもらう」
クロエは少しムッとした顔で腰を深く落とした。
魔力と身体を使い、最大限まで力を溜めている。
クロエの剣は非常に柔軟性があり、この状態を例えるなら、長いバネを最大まで縮めているようだ。
縮んだバネを離すと、その先端は勢いよく直進していく。
「──《電光石火》」
驚異的な初速から繰り出されたのは、スキル《電光石火》。
圧倒的な素早さを誇るうえに、クロエの《電光石火》はかなりの魔力が溜められており、一撃で俺を仕留めるのに申し分ない威力だ。
そして《電光石火》は高難易度のスキルで【最上位剣士】の才能を持つアギトでも取得するのは至難のものだろう。
やはりクロエはアギトと同等、もしくはそれ以上の才能の持ち主だった。
面白い……が、どれだけの技を繰り出そうと俺には届かない。
《電光石火》を放ったクロエは驚愕の表情で背後を振り返った。
「……どうして?」
クロエは自分の頭上を見る。
みるみるうちに減っていくHPバー。
そしてそれはゼロに到達し、この試合は俺の勝利となった。
「い、一体……何をしたの? 貴方は何も動いていなかった。なのに斬った手応えも無ければ、逆に私が斬られている……。起きた出来事への理解が追いつかない……」
「何も難しく考える必要はないさ。それに俺がやったことはクロエが話していることと何も変わらない。《電光石火》を防いでクロエに一撃を入れただけだよ」
クロエは理解が追いつかないと言っていたが、俺はよくそこまで状況を把握出来たな、と感心している。
並の剣士、いや、ある程度の実力者なら何かの間違いだと思っても不思議ではない。
それほどまでにクロエは奇妙な一撃だと感じていたはずだ。
「……う、うう、うわああああぁぁぁぁん」
クロエは地面に座り込んで、泣き出した。
目から大粒の涙が流れている。
「ちょ、ちょっと!? だ、大丈夫か!?」
突然のことすぎて俺は慌てながら泣いているクロエのもとに近付いた。
「ぐすっ…………うん、大丈夫。子供の頃からの悪い癖で負けると悔しくて泣いちゃうの」
クロエはしばらく泣くと、段々と落ち着きを取り戻した。
「そうか……負けず嫌いなんだな」
「……誰にも負けたくない……けれど、さっき剣を交えて貴方が私よりも実力は高いことが嫌でも伝わってきた。だから貴方の圧倒的な実力を認めるしかない」
「そこまでのものじゃないよ。実力にそこまで差は無くて、俺の目が良かっただけさ」
「謙遜しないで。ちゃんと認めて欲しい。私と貴方の大きすぎる実力差を」
「……そうだな。もしかしたらそういうことなのかもしれないな」
「本当嘘が下手ね。……それで貴方はどんなスキルを使ったの?」
「スキルは使ってないよ。俺がやったことはクロエが言った通りでそれ以外は何もない」
「そんなことが出来るの……?」
「まぁ慣れだな。実戦経験を多く積めば案外出来るようになるんじゃないか?」
この2年間で倒した魔物の数は優に万を超える。
それだけで強くなった訳ではないが、実戦はやればやるほど自分の実力を把握出来るし、相手の動きが見えてくる。
2年前と比べれば遥かに敵の動きを先読みして行動出来るようになった。
「……私も実戦はそれなりに経験している方だと思っていたけれど」
「もっと必要だってことだな」
「……化物ね。でも貴方が学園に入学してくれるならとても良い刺激になりそう」
「そう言ってもらえれば光栄だ。これからよろしくな」
「うん、よろしく」
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