9話 クロエとの模擬戦
【告知】
世界最強の努力家の二巻が9月15日に発売します!
予約販売も始まっております!
ちなみに☆☆☆☆☆より下の方で二巻の表紙が見ることが出来ます!
二巻の表紙もとても素敵で嬉しいですね。
そしてコミカライズも9月にスタート決定!
続報をお待ちください!
英傑学園の中にはフレイパーラにもあったような闘技場が設けられている。
この闘技場は、最上位の魔道具であり、かなり高価なもので肉体に与えるダメージを一定のレベルまで肩代わりしてくれる。
普通の闘技場でさえ、設けることが出来ない学園は沢山ある中で英傑学園は金を惜しまずに注ぎ込んでいるようだ。
そして闘技場の中央に立つ俺とクロエという名の少女。
魔道具である闘技場を利用するのは、フレイパーラの大会以来か。
懐かしいな。
「容赦するつもりはないから、本気でかかってきて欲しい」
向かい合う俺にクロエは言った。
「ああ、分かった」
そうは言うものの、彼女は学長の孫という立場にある。
少しも気を遣わずに瞬殺してしまえば、あの学長は激怒してしまうかもしれない。
学長室で話していた限り、中々破天荒な人だったからな……。
もしかすると入学できないかもしれない、というのはあり得ない話でもない気がする。
そしてここにはフレイパーラの闘技場と同様に観客席が存在する。
学長は観客席でルイスと並んで座っていた。
キュウは学長とルイスの頭上を飛び回っている。
「うむ。それじゃあ二人の好きなタイミングで模擬戦を開始してくれい。ワシはここから見学しておる」
学長がそう言うと、俺とクロエの頭上にHPバーが表示された。
このHPバーが尽きた方が負けである。
「どこからでもかかってきていい」
クロエは剣を構えた。
この構えから既にクロエは剣術の基礎が完璧であることが伝わってくる。
まるで隙がない。
「そうか? それじゃあ、こっちから攻めさせてもらうぜ」
俺はクロエに向けて剣を振るう。
クロエはその剣をしっかりと受け止め、反撃に転じてくる。
反撃を受け止め、また反撃。
剣撃の応酬が繰り広げられる。
クロエの一撃、一撃は鋭く、重い。
繊細だが、力のある剣筋だ。
アギトが【最上位剣士】の才能を授かっているのだとすれば、クロエはそれよりも上位──【剣聖】を授かっているのではないか? と俺は思った。
「……同年代で私と互角に渡り合える人がいたなんて」
戦いの最中、クロエは驚いたような表情で呟く。
「そりゃどうも。だけど、まだ随分と余力がありそうだな」
「……それは貴方も同じでしょう。本気でかかってきていい、と言ったのに」
「ははは、悪い悪い。じゃあ少しギアを上げるぞ」
先ほどよりも全体的なスピードを上げていく。
クロエもそれに応じて実力を発揮していくが、どんどん表情は険しくなっていく。
そして、クロエは大きく剣を振って俺の剣を弾き、後ろに下がった。
「これは想像以上……。本気を出しても勝てるか分からない……。いや、認めたくないけれど、たぶん私は貴方に勝てない」
「さぁ、それはどうだろうな。まだお互いHPバーは何も減っていない」
「貴方、剣術はとても上手なのに、嘘をつくのは下手なのね」
「……ほっとけ」
「でも、それでいい。──今から私は、私の全力を貴方にぶつける。それが貴方に届かなければこの戦いは貴方の勝利でいい」
「ほう」
そう言って、クロエは剣を鞘に仕舞った。
そして、深く膝を曲げた。
クロエの身体全体から膨大な魔力が発せられていた。