8話 学長室にて
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「それで学長はいつ起きるんでしょうか?」
「そうだな。起こすとなると少し強引だが、やるとしよう」
ルイスはそう言うと、右手に魔力を溜めた。
右手を振りかざすと、5本の氷柱が学長に襲いかかった。
「──何奴ッ!」
学長は両眼を大きく見開き、身体を起こした。
そして鞘に納めていた短剣を取り出し、一瞬にして襲いかかる氷柱を粉々にした。
「相変わらず、老人の身体能力じゃないな」
『……キュ、キュウといっしょ……』
嘘つけ。
「む、何だルイスではないか。久しぶりじゃのう。しかし、その起こし方は何度辞めろと言ったら直るのじゃ」
「普通に起こしていたらまったく起きないからな」
「喝ッ!!!!!!」
学長が大声と共に魔力を飛ばしていた。
その勢いに俺とルイスの前髪が浮いた。
先ほどの短剣の扱いといい、この老人、かなりの実力者だ。
「それぐらいやってみせるのがお主の仕事じゃろう!」
「知らん」
「なんと……! ……ふむ、それでそこにおる少年は誰じゃ?」
やっと本題に入れそうだ。
「初めまして、リヴェルと申します」
「ほうほう、リヴェル君か。最年少でSランク冒険者に昇格したそうじゃな」
「あれ、ご存知なんですか」
「そりゃもちろん。若者の動向は気にしておかねば、英傑学園の学長はつとまらんよ。ホッホッホ」
「なるほど……では、単刀直入にお願いします。僕を英傑学園に入学させてください」
「よかろう!」
学長はキリッと引き締まった表情でそう言った。
「……あの、入学試験とかって無いんですか?」
「うむ。お主の入学を断る理由がないからのぉ」
「……ありがとうございます」
なんだか拍子抜けした感じだった。
入学試験よりも厳しい何か特別な試験を受けることになるのではないかと心構えていたが、まったくそんなことなかった。
「言っただろう? お前の入学を断る理由がない、と」
「そうですね」
確かにルイスの言った通りになった。
しかし、ルイスと学長は親しげな様子で学長の性格もよく理解しているようだ。
入学が決まったと思っていたそのとき、学長室の扉が開いた。
「おじいちゃん、今日も訓練に付き合って欲しい」
現れたのは、英傑学園の制服を着た女性だった。
黒い髪を肩の高さで短く切り揃えている。
瞳の色は赤紫。
学長室を尋ねてきて、おじいちゃん、と呼んでいるあたり彼女は学長の孫か?
彼女は俺とルイスを視界に捉えて、ペコリと頭だけを下げ、すぐに学長の方を向いた。
「おお、クロエ! よく来たのぉ! ……お、そうじゃ。今日の訓練相手はワシじゃなくて彼を相手に模擬戦をしてみんか?」
学長はそう言って、クロエと呼ばれた少女の訓練相手に俺を指定した。
「……うん、強ければ、それでいい」
「それならば決まりじゃ! リヴェル、すまんのぅ。これを入学試験代わりだと思ってくれんか?」
「ええ、問題ないですよ」
「うむ。勝ち負けは関係なく、入学を約束しよう。その代わり真剣にやるのじゃぞ」
「もちろんです」
入学試験は無いのかと思っていたら、急遽クロエという少女と模擬戦をすることになった。