2話 入学試験が既に行われていた件
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テオリヤ王国への門を抜けた先には町が広がっていた。
俺とラルは久々の再会で会話がよく弾んでいた。
「そういえば何でテオリヤ王国は入国者を制限してるんだ?」
「ああ、そっか。リヴェルは知らないのね。リヴェルが解決してくれた魔物の大群騒動があるでしょ?」
「俺だけで解決したわけじゃないが、まぁそうだな」
「あれから段々と他国との交流を少なくしていって、今じゃこの有様よ。まぁおかげで商人はこの時期に結構稼がせてもらってるけどね」
「なるほど」
魔物の大群は誰かが悪魔と契約して意図的に引き起こしたものだったからな。
あの騒動からテオリヤ王国への攻撃は始まっているのだろう。
ま、俺の知ったことではないが。
「てか、それよりもリヴェルがあんなところにいたのは驚いたわ」
「経緯は話しただろ。俺が間抜けだっただけだけど」
「いや、それもまぁあるんだけど……もしかして知らない?」
「ん? 何がだ?」
「英傑学園のこと」
「何かあったのか?」
「入学試験」
「もう少しで始まるな」
「あちゃー」
「……なんだ、そのもう既に入学試験が終わっているかのような反応は」
「ええ、その通りよ」
「……ははは、またまたご冗談を」
「マジよ」
「…………マジ?」
コクリ、とラルはうなずいた。
「例年よりも入学試験を行うのを早めたらしいわ」
「まさかそんなトラップがあるとはな」
「ええ、だからあそこでリヴェルを見たときに色々察しちゃったわよね」
「……ちょっと待て。じゃあお前は気付いててこれだけ溜めたということか?」
「ふふふっ、正解」
「ハァ〜、お前って奴は……」
「ごめんごめん、久しぶりにからかってあげなきゃと思ってね」
「ハハハ、確かに懐かしいよな、こういうの」
「それでどうするの?」
「どうするって何がだ?」
「英傑学園に入らないとダメなんでしょ? 諦めるの?」
「バカ、これぐらいで諦められる訳ないだろ。色々と対処してみるよ」
アンナと再会の約束を破るわけにはいからないからな。
中等部に入学するのは我慢してもらったんだ。
高等部はどんな手を使っても入学してやらないと。
「その諦めの悪さ、なんかリヴェルって感じがするね」
「懐かしいだろ?」
「ええ、凄くね。──おかえり、リヴェル」
おかえり、か。
どことなく良い響きだな。
俺はフッと笑って、
「ただいま」
と、応えるのだった。
……さて、再会を喜ぶのはこれぐらいにして今は目の前の問題を解決しなきゃな。
「よし、じゃあラル、今から王都まですぐに向かうぞ」
「それは流石に無理でしょ。ここから馬車で10日はかかる距離よ?」
「そうか、じゃあ今日の夕暮れには到着出来るな」
「ハァ!? なんで!?」
俺は空を指差した。
「飛ぶんだよ」
《空歩》と風魔法を利用して、空を飛ぶ移動方法はかなり便利だ。
飛行速度も速いが、それ以上に直線距離を進むことが出来るのはかなりでかい。
「……リヴェル、会わない間に頭おかしくなっちゃったの? ……いや、もともとおかしいか」
「今も昔もおかしくないからな……?」
「あはは、半分冗談よ」
ということは半分本気らしい。
「とりあえず、馬車ごと《アイテムボックス》にしまうな」
俺は馬車をひょいっと持って《アイテムボックス》に収納する。
「相変わらず平然ととんでもないことをしてくるわね……。それで馬はどうするの?」
「この町の厩舎に預けておこう」
「待って、本当にやる気なの?」
「当たり前だろう。それにラルも10日かかる距離を1日で進めてお互いに得じゃないか」
「まぁそう言われればそうだけど……」
「じゃあ決まりだな」
はいはい、とラルは返事をした。
どうやら諦めてくれたようだ。
ありがたい。
馬を町の厩舎に預けたあと、飛ぶためにラルを背負う。
「うっ、ちょっと恥ずかしいわね。……胸とかリヴェルの背中に当たっちゃうじゃない」
「大丈夫だ。俺は気にしない」
そう言うと、ラルは頭を手のひらで叩いた。
「少しは気にしろ!」
「気にされても困るだろ?」
「気にされなさすぎても腹立つのよ」
理不尽だった。
「よーし、それじゃあ飛ぶぞー」
「キュッ!」
キュウはもう慣れっこなので、頭の上でかなりリラックスしている。
というか、キュウはドラゴンということもあり、飛ぶのが好きだ。
《空歩》を使って、浮き始める。
「わわ!? すごい……本当に浮いてる……」
ラルは驚きながらも感心しているようだった。
「しっかりつかまってろよー」
「う、うん」
ラルが両肩をギュッとつかんだ。
それを確認した俺は、あまり怖くないように徐々に速度を上げていった。
「……ぷはぁっ、ちょ、ちょっと、なんで向かい風がないの?」
ラルは飛んだことによる向かい風を警戒してか口をしっかりと閉じていたらしい。
「向かい風とは逆向きの風魔法を発生させているんだ。だから向かい風を感じないようになっているよ」
簡単な原理としては、風魔法Aで向かい風対策に小さな空間を作って、風魔法Bでその空間ごと運ぶっていう感じだ。
「……なるほど、確かに便利ね。これ」
「だろ?」
ラルは少し不服そうだったが、この移動方法の便利さを認めてくれた。