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41話 エピローグ

 緊急クエストの戦果が受理され、俺はめでたくSランクに昇格した。

 赤竜騎士団が悪魔討伐の証人になってくれたおかげで、昇格はとてもスムーズなものだった。


 そしてSランクに昇格した俺は王都に向かった。

 王都には、秘匿された書物が所蔵されている秘密書庫があるのだ。

 ここへは国に認められた者しか入ることが出来ない。

 Sランクを目指していたのは《英知》では知ることの出来ない秘密書庫に訪れたかったからだ。


 秘密書庫は厳重な警備がされていた。


 俺は許可を貰い、秘密書庫へ立ち入る。


 人は誰も居なかったが、書庫の中は清潔で書物もしっかりと管理されている。

 不思議な場所だ。


 中を見て回ると、年季の入った書物が多い。

 俺は特に本を選ぶようなことはせず、手当たり次第に書物を読み漁っていく。


 歴史について書かれたものが大半だが、伝承スキル、秘術、禁術、など様々な書物が保管されていた。

 もっとも、歴史の中にも強くなる手掛かりになり得る情報はあった。


 ……よし、欲しい情報は手に入れた。


 そして王都からフレイパーラに帰ってきた晩、俺はある決心をした。



 俺は、冒険者活動を休止する。



 もちろん、ルイスへの許可を真っ先に貰いに行った。

 Sランクに昇格するために協力してくれた恩人だ。

 ルイスがダメだと言うなら、俺は素直に諦めるつもりでいた。

 しかしルイスは、


「冒険者は自由な職業だ。俺に止める権利は無い。……ただ、1年前ならダメだと即答していただろうな」


 と、言ってくれた。

 ルイスさんには本当に感謝してもしきれない。

 ルイスさんに感謝を告げ、握手をした。

 そして俺はテンペストに向かった。




「ええ!? リヴェルさん、冒険者を辞めちゃうんですか!? 急すぎますよ!!」


 テンペストで休止することを告げると、みんな大騒ぎだった。


『あるじ!? どっか行っちゃうの!?』


 キュウも驚いていた。

 いや、お前には昨晩に言っていただろう。


「世界中を回ってもっと強くなろうと思ってさ」


「ちょっとちょっと! リヴェルが辞めちゃったらテンペストはどうなっちゃうの!」


 ラルが詰め寄ってきて、俺を睨む。


「お前の手腕ならいくらでも儲けることが出来るだろ? フィーアもAランクでフレイパーラの冒険者の注目の的でクルトもBランクで実力はかなり高い」


「ハハハ、照れるね」


「笑い事じゃない! いいの!? リヴェルがいなくなっちゃっても! クルト、あんたもリヴェルに魔法教えて貰ってるんでしょ! 止めなさいよ!」


「もう沢山教えてもらったさ。今は僕なりの理解を得るためにじっくりと咀嚼しているところだよ」


「あんたに聞いた私が間違っていたわ……」


 ラルは右手で頭を抑えた。


「私は反対です! リヴェルさん、行かないでください〜!」


 フィーアは涙を流しながら俺の左足に抱きついた。


「ほら、フィーア泣いてるじゃない」


「そういう引き止め方はずるくないか!?」


「ずるくないわ! それに強くなるならフレイパーラでも出来るでしょ!」


「そういう訳にもいかないんだなぁ。これが」


 秘密書庫で手に入れた情報によると、世界各地にはまだまだ強くなれる場所が存在する。

 フレイパーラでじっとしている訳にはいかない。


「リヴェルさん……! 俺、マジで悲しいです!」


 目から滝のような涙を流すウィル。

 ウィルとはフレイパーラ新人大会後に加入してくれたメンバーでもう長い付き合いだ。

 俺を慕ってくれている部分もあって、度々一緒に修行をしたりもした。

 その度にウィルは体力の限界まで俺に合わせようとするからよく嘔吐していたけど……。


「リヴェルさん程の逸材は中々いませんよ。辞めてしまうなんて少し勿体ないですね」


 受付嬢のエレノアさんも悲しそうだった。


「ハッハッハ、お前はそんなところまでアデンにそっくりだな!」


 ロイドさんは豪快に笑った。


「父さんにそっくり?」


「ああ、アデンもみんなと仲良くなったってのに、もっと世界を見て回るとか言って急に出て行っちまったんだよ」


「父さんもか……」


 やっぱり俺は父さんの息子なんだなって思ってしまった。


「悲しいなぁ、全く。でも止めれねえのも俺は知ってる。だからギルドマスターである俺から言えることは、ただ一つ。

 ──リヴェル、お前はクビだ」


 ロイドさんはニイっと笑って、白い歯を見せた。


「ちょっと父さん!?」


「ロイドさん何バカなこと言ってんの!」


「ギルドマスター! あんた何考えてんだ!」


「この能無しギルドマスター!」


「年中酔っ払いじじい!」


 ギルド職員、冒険者、ここにいる全員にロイドさんは罵声を浴びせられた。

 でも……俺はロイドさんの心遣いが胸に染みた。


「ありがとうございます!」


 ロイドさんに向かって、俺は深々と頭を下げた。


「ハァ、まぁ分かってはいたけど、やっぱり止められないか」


 ラルが諦めたように呟く。


「うぅ、本当に悲しいです……。でも止められないんじゃ仕方ないですね……」


「あ、そうだ。こんなときこそ、今話題の魔導具の出番じゃない!」


 ラルが何か思いついたようだ。


「今話題の魔導具って?」


「いいからいいから! リヴェルはアギトとか呼んできなさい! さっきの報告もまだしてないでしょ」


「お、おう。分かった」


 ラルに背中を押され、ギルド『テンペスト』から追い出された俺はギルド『レッドウルフ』にやってきた。


「──と、いうわけなんだよ」


「ハァ!? てめェ勝ち逃げするつもりかァ!」


「まぁ、まぁ。もう『テンペスト』で許可は取ってあるみたいなんだからアギトが怒っても何も変わらないよ」


 カリーナはアギトを落ち着かせるように言った。


「それにしても今話題の魔導具って言えばアレしかないよね。早くテンペストにいこっ!」


「カリーナは知ってるのか?」


「まあね」


「どんな魔導具なんだ?」


「それは戻ってのお楽しみだよ」


 アギトとカリーナと一緒にテンペストに戻ると、ラルが手に黒色の箱みたいなものを持っていた。


「それが話題の魔導具か?」


「うん。魔導撮影機って言うんだよ。まぁどういうものかは使ってみればすぐに分かるわね」


 そう言って、ラルは黒色の箱をこちらに向けた。

 パシャリ。


「何したんだ?」


 黒色の箱の下から何か紙が出てきた。

 その紙には、なんと俺が写っていた。


「凄いでしょ」


「ああ、確かに凄いな……。これが話題になるのも納得だ」


「そうそう。それ写真って言うのよ。これでリヴェルとの最後の思い出を作ろうってわけ」


「最後って……大袈裟だな。いつかまた会えるだろ」


「だね。僕らは英傑学園で2年後に会うことになるだろうし」


「誰でも英傑学園に入れる訳ないでしょ、バカね」


「やれやれ、バカはそっちだろう?」


「待て待て。こんなときに喧嘩してどうするんだよ」


 なんとか俺はクルトとラルが喧嘩する前にお互いを止めた。


「そういや英傑学園とかあったなァ。クックック……そこに入りゃてめェにリベンジ出来るって訳か」


「確かに……。私も英傑学園を目指してみようかな……」


 どうやらアギトとフィーアも英傑学園を目指す気になったようだ。


「おおー! 俺も目指しますよ! リヴェルさん!」


 ウィルもやる気になっている。


「いいな、みんなで行こうぜ。英傑学園」


「ほらほら、分かったからみんなそこに集まって」


 ラルが場をまとめて、みんなを集める。

 なるほど、こうやってみんなとの写真を撮る訳だな。


「ん? 俺が真ん中でいいのか?」


「当たり前でしょ! 誰がいなくなると思ってんの!」


「いなくならなかったとしても真ん中はリヴェルだけどね」


「そうですよ! リヴェルさんがいなきゃテンペストはここまで持ち直したりしてませんからね! ……本当、ありがとうございました……!」


「お、おい泣くなってフィーア」


「だ、だってリヴェルさんがいなくなるのは寂しいですよ〜」


「泣いてちゃせっかくの写真が台無しよ。ほら、みんな笑って!」


「ッハ、誰が笑うかよ」


「アギト〜? ちゃんと笑わないとダメだよ」


「アギトは僕のように笑顔に自信がないからね」


「ハァ!? なんだとクルト!」


 ……なんか変なところで喧嘩が始まってるし。


「ん、これ押せばいいのか?」


 ロイドさんは言った。

 ロイドさんはみんなの前に立って、魔導撮影機を手に持っている。

 撮影役はロイドさんのようだった。


「よーし、じゃあ撮るぞー。お前ら笑え〜」


 パシャリ。


「ロイドさん! もう1枚撮って!」


「ん? まぁ何枚でも撮りゃいいだろ」


 パシャリ、パシャリ、パシャリ。

 撮れた写真を見ていく。

 ラルは流石商人と思わせる笑顔でフィーアは泣いているのか笑っているのかよく分からない表情。

 クルトは自信満々の笑顔でアギトはぎこちない笑顔。

 アギトの隣でカリーナはいつものような笑顔を浮かべている。

 そして、ウィルに至っては号泣していた。


「はい、これ」


 ラルがみんなで撮った写真の1枚を俺に渡した。


「いいのか? 貰って」


「当たり前じゃない。たまにはその写真見て、私たちのこと思い出しなさいよね」


「そうですよ、英傑学園に入学してもリヴェルさんに忘れられてたら泣きますからね……!」


「忘れる訳ないだろ。それにフィーアは今も泣いてるし」


「な、泣いてません!」


 フィーアは右腕で目元を擦った。


「……この写真、大切にするよ」


 俺は写真を《アイテムボックス》にしまう。


「そこにしまっちゃえば絶対無くさないわね。ハァ〜、本当便利よね」


「まあな」


 そう言って、俺はギルド内を歩き出す。

 冒険者になってから本当に色々なことがあった。

 今では立派なギルドに復活を遂げた。

 職員も増えた。

 ギルドメンバーも増えた。

 本当に楽しくて騒がしい日々だった。


 扉の前で立ち止まり、俺は振り返る。

 そこには沢山の仲間がいた。


「みんな、今までありがとう! またいつか会おうな!」


 みんなからの別れの言葉を胸に俺はテンペスト、そしてフレイパーラを去って行った。


 これから英傑学園入学まで強くなるためにやることは山積みだ。

 なにせ俺が目指すのは、世界最強。

 立ち止まってはいられない。


 《アイテムボックス》から貰った写真を取り出す。


「ふふ、また会えるさ」


 貰った写真を眺めながら俺は自然と呟いていた。

 そして《アイテムボックス》に写真をしまうと、俺は前を向く。

 仲間との再会を楽しみにしながら、俺はまだ見ぬ世界へ一歩を踏み出すのだった。

これにて第二章、そして「冒険者編」はおしま〜い!


いかがだったでしょうか!

皆さんが面白く読めたかどうか自信はありませんが、僕は面白く書けました!


次章からは「英傑学園編」です。


ここまでの物語を読んで、


「面白かった!」

「続きが気になる!

「更新応援しています!」


少しでもそう思って頂けたら、


下にある「☆☆☆☆☆」を「★★★★★」にしてくれると執筆の励みになります!


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[良い点] 面白いです。 本当に、読んでいて楽しいです。 続きが楽しみです。 [一言] とても楽しく読める、面白いお話。。。これからも楽しみにしております。
[良い点] 世界中を巡って強くなると言うのがとても良かったです。 [気になる点] 特にありません。 [一言] 1話から一気に読みました。 とても面白かったです。 続き期待しています。
[良い点] とても作品の世界観に潜入出来て面白かったです また最近のやつみたいに主人公が鈍感じゃなくて良かったです [一言] 更新2章までお疲れ様でした 3章の更新も楽しみにしてます 学園編………
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