30話 成長する者たち
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魔物の大群によって都市が一つ滅ぼされた事実が公表され、瞬く間にフレイパーラ中に知れ渡った。
そして貼り出された定員無制限の緊急クエストに多くの冒険者が参加するらしい。
命の危険には晒されるが、それ以上に報酬と名誉を選ぶ冒険者が多いようだ。
俺も受けるつもりで依頼書を眺めているのだが、その横でフィーアはガクガクと震えていた。
「まっ、ま、魔物の大群に都市が一つ滅ぼされたって……これめちゃくちゃまずくないですか……?」
『だいじょぶ! キュウも同じぐらい強い!』
キュウは《念話》でフィーアに話しかけた。
みんなキュウに慣れてきているので《念話》で会話しても問題ないだろうと思い、解禁したのだ。
最初はみんな驚いたが、すぐに「リヴェルの従魔だから、別に驚くこともないよね」と納得された。
明らかに納得出来る理由になっていないのに……。
「キュウちゃん……ありがとうございます。でもキュウちゃんは危ないからお留守番しててくださいね」
『ガーン!』
キュウは口をポカーンと大きく開けて、ショックを受けている様子だった。
フィーアに全く強いと思われていなかった。
『今回こそはあるじと一緒に戦えると思ったのに……!』
「もう少しキュウが成長したら一緒に戦おうな」
シクシクと涙を流して、キュウはうなずいた。
良い子だ。
「……でもキュウちゃんのおかげで決心が着きました。私、このクエスト受けます」
フィーアは依頼書を握り締めた。
「さっきまで怯えていたのに大丈夫なのか?」
「ま、まぁ怯えるのはいつもの事ですから……」
「そうだけどさ、今回は結構危ないクエストだし無理しなくていいんだぞ」
「い、いえ! 大丈夫です! 今までだって何とか乗り切ってこれましたし、それに私はAランクですからね! ちゃんと参加して役に立たないとっ!」
「……まさかフィーアがそんなことを言うとは」
「ちょ、ちょっと何驚いているんですか! 失礼ですよ、リヴェルさん!」
「ハハハ、ごめんな。でも出会ったばかりの頃に比べれば本当に強くなってるんだなって思って」
「そりゃそうですよ。私も頑張って特訓しているんですから」
フィーアはエッヘン、と言わんばかりに胸を張った。
「それもあるけど、最初はもっと怯えてばかりだったろ?」
「……言われてみればそうかもしれませんね」
「でも今はちゃんと向き合えてる。凄いことだよ」
「あ、あの……褒めても何も出ませんからね」
「いや、単純に成長しているんだなーって思ったからさ」
「成長ですか……。そうですね、背ももう少し成長してくれれば嬉しいんですが……」
もともと同年代と比べて小柄なフィーアだが、1年経っても変わらないまま。
それをフィーアは気にしているようだ。
「別にいいんじゃないか? 小さい方が攻撃も避けやすいだろうし」
「ま、まぁそうかもしれませんけど……」
「それに小さい方がフィーアらしさがある」
「なっ! それは完全に馬鹿にしてますよねっ!」
「馬鹿にしてないよ。小さい方が可愛らしくて、そのウサミミに似合ってるんだって」
「か、かわっ!?」
フィーアは顔を赤くした。
……そういえばフィーアは可愛いという言葉に弱いんだった。
失言だったか。
「とりあえず俺もクエスト受けるから一緒に頑張ろうな」
そう言って俺は逃げるようにギルドを去った。
◇
そして、その晩。
俺はクルトの部屋に訪れた。
「やぁリヴェル、よく来たね」
「ああ、クルトにどうしても頼みたいことがあってな」
「頼み? いいよ。古代魔法について色々教えてもらっているお礼だ。なんでも聞くよ」
「助かる。まずは一つ聞きたいんだが、クルトは今日ギルドから出された緊急クエストについて知ってるか?」
「もちろん。一応僕も参加する予定だよ。的が多いと魔法を試すのに困らないからね」
多くの冒険者は報酬のため、名誉のため、国のため、それらが目的になっているがクルトは違った。
純粋にただ魔法のためだけに参加している。
こいつは本当に魔法への興味が尽きないようだ。
だからこそ、クルトは強い。
「ハハハ、それでこそクルトだな。──俺はこの緊急クエスト、本気で挑もうと思っている」
「へぇ、リヴェルの本気か。それは興味深いね」
「クルトには俺が本気を出すための手助けをしてほしいんだ。周りの冒険者、そして俺たちの仲間を守ってやってほしい」
「……なるほどね、でもみんなを守るってなると少し不安だな」
「大丈夫だ。不安なだけで出来ないとは言ってないからな。実際、出来ないとは思わないだろ?」
「ふふ、まあね。……でも少し残念だ」
「残念?」
「リヴェルの本気を間近で見れないのは残念で仕方ないよ」
クルトは笑いながらため息をついて、両手を広げた。
「でも本気を出すと言ってもクルトとそこまで実力差はないと思うぞ」
俺は笑いながら言った。
「そんな訳ないよ。なにせ今のリヴェルの実力は僕の物差しでは計れないからね」
「……さぁ、どうだろうな」
「否定しないところが素晴らしいよ。だからこそ余計に残念だ。でもリヴェルからの頼みだ。しっかり守って見せるよ」
「ありがとう」
俺は心からクルトに感謝を告げた。
……しかし、クルトの言っていることは当たっている。
この1年間、強くなるための努力は惜しまずにやってきた。
そのおかげでフレイパーラに来た頃に比べれば、かなり強くなれたと思う。
大会でクルトと戦ったとき、クルトと俺の実力はほとんど拮抗していた。
10回戦えば5回勝って5回負けてもおかしくない。
だが今は正直、1回も負ける気がしない。
《仙眠法》で夜も活動出来る俺は、こっそりとフレイパーラを抜け出して《空歩》を使って上空へ浮かんだ。
そして遙か遠くで蠢く黒い塊を見た。
あれが俺たち冒険者と騎士団が一緒になって戦う魔物の大群。
……これでSランクへ昇格する準備は整った。
後は思う存分暴れるだけだ。
「俺の本気をどれだけぶつけられるか──楽しみだ」
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