29話 緊急事態
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──Aランクに昇格してから1年が過ぎた。
1年の間でクルトはBランクに、フィーアとアギトはAランクに昇格した。
まさかフィーアがクルトのランクを越してしまうとは……という感じだが、実力はクルトの方が上だ。
クルトは冒険者という仕事に全くと言っていいほど興味がない。
「冒険者をやるのは英傑学園に入学するまでだからね。実績を残すことよりも魔法の探求に時間を使う方が有意義さ」
と、クルトは言っており、魔法にしか興味がないような男だ。
しかし、その熱意は凄まじく最近では古代魔法を少しずつ物にしてきている。
俺からの説明だけでよく理解できるよな。
流石は【賢者】の才能を持つだけはある。
クルトは間違いなく同年代でトップクラスの実力を持っているだろう。
そういう訳でクルトはフィーアやアギトに冒険者ランクを抜かされてしまっていた。
そしてキュウは少し成長して大きくなった。
「キュゥ?」
キュウは今も俺の頭に乗る。
だが、キュウのサイズは俺の頭よりも大きく、乗らない方が楽なんじゃないか? って思うぐらいだ。
結構重かったりするので、キュウを頭に乗せているだけで首回りの筋トレが出来てしまう。
正直、有難い。
それで俺はと言うと、この1年間でそれなりの活躍は出来た気がする。
例えば、フレイパーラから少し離れた火山地帯にある村を襲うAランクモンスター火竜を退治したり、
実は火竜を操って悪さをしていた火の精霊イフリートを討伐したり、
港で漁師たちに恐れられていた巨大な海蛇リヴァイアサンを討伐したり、
……とまぁ色々とクエストが回されるようになったので、片っ端から達成していった。
しかし、未だにSランクには昇格出来ていない。
ルイスが示したSランクに昇格する条件は、多くの人間に関わりのある大きな業績を挙げること、と言っていた。
つまり多くの人達に認められる存在になればいいと思っていたのだが、それでは難しいようだ。
現在、Sランク冒険者は世界で現在12名しか存在しない。
その中の一人が『レッドウルフ』に在籍しているシドさんだ。
彼はフレイパーラのダンジョン100階層までの地図を作成するという偉業を成し遂げ、Sランクに昇格したそうだ。
英傑学園の入学試験まで残り2年を切った。
そろそろSランクに上がって、《英知》では知ることの出来ない情報を手に入れなければならない。
そう思っていた矢先、ルイスから連絡があった。
俺は冒険者ギルド連盟に向かい、ルイスと対面する。
「久しぶりだな、リヴェル」
「はい、リヴァイアサン討伐のとき以来ですね」
リヴァイアサン討伐は確か一ヶ月ぐらい前だったかな。
ルイスには色々気にかけて貰っており、大きなクエストを達成する度によく話をする。
「さて、今日お前を呼んだのはある情報を知らせたくてな」
「ある情報?」
「先日、テオリヤ王国の辺境都市の一つが魔物の大群によって滅ぼされた。これはまだフレイパーラで公表されていない情報だ」
「辺境都市が滅ぼされた……? 恐ろしいですね、都市一つが滅ぶほどの規模の魔物の大群ということですか……」
「ああ。そして更に恐ろしいことにその魔物の大群は、王都に向かって進行を続けているそうだ」
「……それって何か妙じゃないですか?」
俺はルイスの言葉に違和感を覚えた。
「ほう。言ってみろ」
「魔物が王都に向かって進行する、なんて魔物が取る行動とは思えません。都市一つ滅ぼしただけで終わるならまだしも……」
「確かにな。俺もそう思うところがあって、色々と調べて貰っている。だが、この問題を解決するには魔物の大群を何とかせねばならん。そこで今日の夕刻から魔物の大群を始末するために全冒険者ギルドへ定員無制限の緊急クエストを依頼する」
「……なるほど、俺が呼び出されたのはそういうことですか」
「ああ。ついにお前をSランクに上げる機会がやってきたわけだ」
魔物の大群が王都に向かって進行しているとなると、多くの都市や村が被害を受けることになる。
大群の始末は一刻を争う。
「もしかしたら俺、そんなに活躍出来ないかもしれませんよ?」
「お前がか? 笑わせるな。活躍しない訳が無いだろう。なにせ大群の討伐隊は騎士団と冒険者によって結成される。お前の好きな子も参加するだろうさ」
「え、アンナが?」
ルイスとは案外仲が良く、俺が強くなりたい理由を知っている。
だからこのように、アンナについての近況をルイスから度々教えてもらっていた。
「お前が好きな子の前で頑張らないはずがない。まぁ討伐隊に参加する人数は騎士、冒険者共にかなりの数になるはずだ。会えるかどうかはお前の運次第ってところだな」
「……もしかして、ルイスさんが今日呼んでくれたのってアンナの事を知らせてくれる為でした?」
「ああ。やる気になっただろう?」
「はい、ありがとうございます!」
「くっくっく、その子のことになるとお前は本当に単純だな」
「……えぇ、そんなに単純ですか?」
「見ていて面白いほどにな。だけど、それがお前の強さの源なんだということも伝わってくる」
うーん、否定出来ない。
「とにかくお前には期待している。この機会にお前の才能を世界に知らしめてやれ」
そして、ルイスとの面会を終えた俺はテンペストに戻り、緊急クエストの連絡を待つことにした。
……しかし、アンナが参加するのか。
ルイスの話によると、学園でかなりの成績を収めているみたいだけど、元気にしてるのだろうか。
もう1年以上会ってないが、運が良ければアンナに会える。
いかん、いかん。
そんな事を考えていたら満足いく結果を残せないかもしれないな。
ちゃんと集中してクエストに臨もう──と、思っていても俺は少しだけワクワクしてしまうのだった。
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