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28話 自らを危険に追い込む特訓

世界最強の努力家1巻、発売しましたー!


発売初日の売上は結構良いらしいので、興味のある方は是非お手に取って頂けたら幸いです!

 襲いかかってくるグストン達を冷静に見つめる。

 複数の敵を相手にするコツはモンスターハウスで学んだ。


「オラ、死ね!」


 グストンのハンマーが地面にドスンと叩き落とされた。

 避けていなかったら、タダじゃ済まない一撃だ。


「ほらほら!」


「逃げてばっかじゃ!」


「勝てねえんだよ!」


 グストン以外の三人も絶え間なく、違う角度と方向から攻撃を仕掛けてくる。

 一切の遠慮がないな。


 それに魔物と違って、奴らの攻撃には考えが含まれていることに気付いた。


 勿論魔物にも考えはあるが、連携をしようとする意思があまり無い。

 ただひたすらに急所を狙ってくるような動き。


「……ふふ」


 最初は単なる面倒ごとだと思っていたが、案外良い特訓かもしれない。

 モンスターハウスのときは《領域》を使用していたが、今度は使用せずに挑むとしよう。


「な、なに笑ってやがる!」


 笑ってる?

 ……笑ってるのか俺。

 それじゃあまるで頭おかしい人みたいに思われてしまいそうだ。

 顔を引き締めよう。

 表情筋に力を入れるんだ。


「わ、笑っていられるのも今のうちだ! とっととやっちまえ!」


「「「おう!」」」


 そう意気込んで、4人は攻撃を続ける。

 ふむふむ、少し余裕があると色々と視野が広がるな。

 こいつらが何を考えて、どこを狙っているのか、なんとなく分かる。


 ……でもやっぱり余裕の状態での特訓は効率が悪い。

 余裕なのだから勝てて当たり前。

 特定の状況下、例えば自分が危険に陥ったときに勝てるかどうかが大切なのではないだろうか。


 ならばその状況を作ってしまえばいい。


 俺は背後から一人が剣で斬り込んできたのを察知し、わざと攻撃を貰った。

 左肩から血が流れ、観客から悲鳴の声があがる。

 くっ……流石に分かっていても痛いな。


「へっへっへ、ついに一発貰っちまったなぁ? 体力が切れてきたか?」


 グストンに続くように取り巻きの3人はニヤニヤと笑う。


 ふと、観客席にぽつんとフィーアが座っているところが見えた。

 不安そうな表情でこちらを見ている。


 ……あ、この状況俺的には特訓でしかないけど、周りから見たら結構ピンチに見えるんじゃないか?


 うわ、絶対そうだ。

 フィーア、絶対に心配してるじゃん!

 ……やってしまった。

 周りのことを考えずに、また強くなることを優先してしまった。

 いやー、マジでこれ悪い癖だな……。


「どうだ? これから死ぬのが怖くて何も言えなくなっちまったか?」


 グストンは俺を馬鹿にするのが楽しくてたまらない様子だ。


「いや……自分の愚かさに呆れていたところだ」


「くっくっく、まぁそうだよな。愚かにもお前は不正してAランクに上がり、ここで死ぬんだからなぁ!」


 俺が負傷したこのタイミングでグストンは勝負を仕掛ける気だ。

 グストンの魔力が活性化されている。


「くらえ《水槌・鯨乱打》」


 ハンマーから水が顔面目掛けて勢い良く噴出される。


「ははは! これでもう避けれまい!」


 勝利を確信したのか、グストンは高らかに笑い声をあげながら何度もハンマーを打ち付けてきた。


 なるほど、噴出する水で視界を潰し、攻撃を回避出来なくなったところにハンマーを叩き込む。

 汚いやり方を好むグストンらしいスキルを取得しているようだ。


「まぁ避けられないことは無いんだけどな」


 俺は目を閉じたまま、グストンの攻撃を避け切った。


「は、はぁ!? なんでお前避けれるんだよ! 目閉じてるじゃねーか!」


 目を閉じて避けれたのは《領域》を使ったからだ。

 《領域》で感知した敵の動きを避けるすべはモンスターハウスでの戦いの中で学んだ。

 モンスターハウスでは《領域》を利用した回避を覚えなければ視界外から襲い掛かる攻撃を避けられなかった。


「さあな、俺がAランクの冒険者だからじゃないか?」


 説明するのも面倒だし、こう言っておけばいいだろう。


「こ、このヤロォ〜!」


 悔しそうに顔を歪めるグストンが目に浮かぶ。

 さて、もう特訓することはない。

 さっさと終わらせよう。


「《剛の剣》」


 一度の《剛の剣》の発動で俺は4人の武器を続けざまに破壊した。

 力を抑えることによって、《剛の剣》を一振りだけでなく次の振りにも繋げることが出来るのだ。


「い、一瞬で俺たちの武器を破壊しやがった……」


「分かったか? これが俺の実力だ。分からないようならまだ付き合ってあげられるけど」


「「「「ひ、ひぃ!? ごめんなさいぃ! 許してくださいいいいいぃ!」


 グストン達はそう言って、闘技場から逃亡して行った。

 武器のない4人にもう勝ち目はないので、俺もグストン達と同じ立場なら逃げ出すかもしれない。


 ……いや、そもそもグストン達の立場ならこんなくだらない喧嘩売らないか。


「いててっ……そういえば肩怪我してるんだった」


 右手で左肩の傷口をおさえながら俺は回復魔法をかけた。


 傷を癒して闘技場から出ると、そこにはフィーアが涙を浮かべながら待っていた。


「……リヴェルさん、どうして早く倒さなかったんですか」


 震えた声でフィーアは言った。


「……えっ」


 俺は何故かフィーアの表情を見て、一瞬アンナの泣き顔と重なった。


「……あー、それはだなぁ……ちょっと特訓になるかなーって」


「何考えてるんですか! もしリヴェルさんが死んじゃったらどうしようって凄く心配になったんですよ!」


「……ごめん」


「もう〜! リヴェルさんならすぐ倒すって思ってたら怪我しますし! ……ほ、本当に心配したんですからね……」


 フィーアの目から大粒の涙が溢れた。


「ごめん……いつも心配かけるようなことばかりして」


「〜〜っ! いや、本当ですよ! リヴェルさんは馬鹿です! 大馬鹿です! 何度も反省してるのに全然分かってませんよね! そういうところ以外はすぐに覚えちゃうのにどうして、こういうことだけは全然覚えれないんですか!」


「はい……おっしゃる通りです……」


「もう……! ……あ、そういえば肩の怪我は大丈夫ですか?」


「ああ、回復魔法でほぼ治してある」


「相変わらずですね……じゃあもう言いたいことは言いました。今日は一応怪我したんですからゆっくりしててくださいね」


「分かった。そうするよ」



 フィーアにまた心配をかけれないので、俺は宿の部屋に帰ってきた。



 ベッドに腰をおろして、先ほどのことを少し振り返る。


「何度も反省してるのに全然分かってない、か」


 実を言うところ俺は今日の件もどこかでこうなることを理解していた。

 その証拠に俺は怪我をしたとき、観客席を見渡した。


 観客席に俺の仲間がいなければ、このまま特訓を続行しようと思っていたからだ。

 もしいたら、その時点で戦いを終わらせようと思っていた。


「自分でも気味が悪いぐらい強さに固執しているな」


 なぜ強くなりたいのか? と聞かれれば俺は「アンナのため」と即答出来る。

 そう、アンナのためなら俺は世界最強にだってなれる自信がある。


 そのうえで俺は思うのだ。

【努力】の才能で世界最強になるには狂っていなければいけない、と。


「……それにしてもフィーアを見てアンナと重なるとはな」


 フィーアの不安そうな顔がアンナの不安そうな顔と似ていたのかもしれない。

 ……全く困ったもんだ。



「──英傑学園入学まで少し長いな」



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― 新着の感想 ―
[一言] フィーアにフラグ立ってね? アンナ一筋じゃなかったのか?
[一言] まぁ、修行バカもほどほどにって教訓ですね^^;
[一言] というか、せめて主人公の周りの女の子くらいは 主人公の強さや性格を把握しようと、と思うね。 グストン達なんて、モンスターハウスに比べたらヌルいなんてものじゃいんだから そもそものところ負ける…
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