27話 Aランクに昇格した弊害
世界最強の努力家の1巻、今日発売です!
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俺がAランク冒険者に昇格すると『テンペスト』に所属する冒険者が増え出した。
新人だけでなく、いわゆる中堅冒険者も加入するようになったのだ。
今はギルドで昼食中なのだが話しかけてくる冒険者は多い。
「リヴェルさん、随分と有名になっちゃいましたね……」
フィーアが言った。
「ああ。テンペストもかなり賑やかになったよな」
「そうですね。リヴェルさん達には感謝しかないです」
「別に感謝することないのに。俺たちはこうなることを予想してテンペストに入ったんだからさ」
「……ほえ?」
「テンペストは大きなギルドだから評判さえ良くなれば人が来るのは当然だろ?」
「……そ、そんなことを考えていたんですね。で、でも私じゃ評判を上げることなんて到底無理そうですし、やっぱり感謝すべきです」
「真面目だな」
「違いますよ。貧乏じゃなくなったことが本当にデカいんです」
「……あぁ、なるほど」
俺は心の中でフィーアに脱貧乏おめでとう、と祝福した。
そのとき、ギルドの扉が勢いよく開いた。
扉を開けたのは図体のでかい男だった。
背中には大きなハンマーを背負っている。
男が中に入ると後ろから、三人の男が順番に入ってきた。
彼らにギルド内の視線が一斉に集まり、ざわざわと話声が聞こえてきた。
「あいつってBランク冒険者のグストンだろ?」
「ああ、あの背中に背負っているハンマーとあの体格を見れば間違いねえよ」
どうやらあの図体のでかい男はBランク冒険者のようだった。
彼らはギルドの視線を一切気にすることなく辺りをジーっと見渡した。
俺はグストンと目が合った。
「お前がリヴェルか?」
グストンは俺の前にやってきて言った。
「そうだったら?」
「だったら笑いもんだぜ。こんな弱そうな奴がAランクとはなぁ! ガッハッハ! どう見ても俺様の方が強いに決まってるぜ。なぁお前ら」
そう言って彼らはゲラゲラと笑い出した。
やはりこいつらはパーティのようだ。
それにしてもグストンは図体だけでなく態度もでかいみたいだ。
「ちょ、ちょっと貴方達! ギルド内でそういった言動は慎んでください!」
受付からエレノアさんが飛び出してきて、男達を注意した。
流石エレノアさんだ。
一方、フィーアを見るとガクガクと怖そうに震えていた。
「あぁん? 知らねえなぁ。不正ギルドにそんなことを言われる筋合いはねぇ」
「不正ギルドって貴方、言っていいことと悪いことがありますよ!」
「ハッ、何も間違ったことは言ってねーんだぜ? こんな奴がこれだけ早くAランクに上がるなんてありえねえんだわ」
なるほど、俺のAランク昇格に不満を持つ輩もいるわけか。
まぁそりゃそうだよな。
俺も驚いてルイスに理由を尋ねにいくと、
「リヴェルはAランクに昇格してもいいだけの功績は挙げており、Sランクに昇格するための条件に説得力を持たせるためにAランクに昇格させた」
ということだった。
確かにこれは周りから見れば何か不正があったのではないかと疑われるものだ。
「発言を撤回しなさい」
「エレノアさん、大丈夫ですよ」
「リ、リヴェルさん……」
俺は立ち上がり、グストンの前に出る。
「お、なんだ? 自分の不正を認める気になったか?」
「要は実力を示せばいいだけだろ」
俺は魔力を操作し、グストンの前で少量の火魔法を用いてほんの僅かで小さな爆発を起こした。
ポンッ!
「どわぁ!?」
グストンは驚いて、尻餅をついた。
ギルドに笑いが巻き起こる。
「て、てめぇ……よくもやってくれたな……!」
グストンと後ろの三人は俺を睨み付けた。
「Aランクである実力を示しただけだが? お前を驚かすためだけの小さな爆発を起こすには、かなりの技術が無ければならない。それに詠唱が無いことから《無詠唱》のスキルを所持していることも分かるはずだ」
俺がそう言うと、グストンは途端にニヤニヤとした下衆な笑みを浮かべた。
「わりーな、そんな小手先の技術を見せられても実力は分からねーんだわ。お前が本当に実力を示す気があるなら俺たちと勝負しようや」
「「「へっへっへ……」」」
あー、なるほど。
最初から4人は俺と戦いがしたかったようだ。
それも1対1ではなく、4対1の戦いを。
「それならギルドの奥に闘技場がある。ついてきてくれ」
「ああ、ぜひそうさせてもらうぜ……」
俺たちが闘技場に移動を始めると、
「なんか面白そうだな!」
「喧嘩だ喧嘩だ!」
「リヴェルの戦うところが見れるぞ!」
ギルド内は何故か盛り上がっていた。
その証拠に闘技場でグストン達と向かい合わせになったとき、客席にはギャラリーが何人もやってきていた。
「リヴェルはAランクで俺たちよりも強いことは明らかだからよ、4対1ぐらいが丁度良いよな?」
グストンが言った。
人を陥れることを優先しているセコい考え方だ。
「問題ない」
「あと武器はお互いの持つ武器を使うことにしよう。なに、リヴェルは魔法が得意なんだ。怪我をしても自分で回復すればいいよな?」
「それで良いと思えるのは愚かすぎないか?」
「んん? なんだ? Aランクのくせに逃げるのか?」
「いや、お前の考えが愚かだと思っただけさ。別にそれで構わない」
「へっへっへ、かっこいいねえ」
こいつらは最悪殺してしまっても良いと思っているのだろう。
もしくは殺すことが目的なのかもしれない。
そうでなくとも重傷を負わせたいのは間違いなさそうだ。
「おい、てめーら! きたねーぞ!」
「正々堂々戦え!」
観客席からヤジが飛ぶが、本人達は気にする様子は一切ない。
「それじゃあリヴェル、始めようかぁ!」
グストンがそう言うと、4人は一斉に襲いかかってきた。
……俺の返事ぐらい聞いたらどうなんだろうか。
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