25話 異常事態の原因
『世界最強の努力家』の1巻発売まであと6日!
発売されてから一週間が勝負なので、何卒よろしくお願いいたします!
よし、宴会用の料理が出来上がったぞ。
あとはアギト達が来てくれるのを願うだけだ。
そう思っていたとき、ギルドの扉が開いた。
「やあリヴェル君、ちゃんと連れてきたよ」
現れたのはカリーナさんだ。
その横には不機嫌そうなアギト、後ろにはパーティにいた二人がいた。
アギトの顔には、なんで俺がこんなところに来なきゃいけねーんだよ、とまるで書いてあるようだった。
「ありがとうございます。今日の料理は腕によりをかけて作ったので是非召し上がっていってください」
「ええー! リヴェル君は料理まで出来ちゃうの? ……ちょっと完璧すぎない?」
「そんなことないですよ。昔から料理を作る場面が多くて慣れてるだけです」
「飯なんて食えればどれも変わんねーよ。食ったらとっとと帰らせてもらうからな」
「おう。多めに作ったから腹一杯食って行ってくれ」
さて、無事アギトが来てくれたようだしみんなを呼んでこよう。
「……俺たち影薄くないか?」
「バカ、そんなことねーよ……たぶん」
後ろの二人がそんなことを小さな声で話し合ってるのが何故か聞こえてきた。
◇
みんなが揃った。
事前にアギト達が来ることを伝えてあるので、特に驚くことはなかった。
カリーナはすぐに場に馴染んでいた。
これもAランク冒険者としての実力なのだろうか。
……いや、関係ないか。
「カリーナさんって、あの人だったのね」
ラルが俺に話しかけてきた。
『レッドウルフ』でアギトと揉めていたときに止めてくれたのがカリーナだ。
それをラルも目撃していたので、見覚えがある顔だったのだろう。
「ああ」
「面倒見がいいんでしょうね。私、アギトって人がちゃんと来るなんて思いもしなかったもの」
「そうだな、カリーナさんは凄く優秀な人だよ。Aランク冒険者で実力も申し分ない」
「なるほど、やっぱりカリーナさんと仲良くなっておくに越したことはないわね。これから交流する機会も増えてきそうだし」
「商人っぽいな」
「ええ、商人ですから」
なんか流石だなーと思わされた。
一方、アギトは黙々と俺の作った料理を食べている。
めちゃくちゃ食べるなコイツ。
「あ、あの……アギトさん……。その料理私も食べたいなー……なんて」
「あ?」
「ひいっ! す、すみません!」
アギトの鋭い目つきで睨まれたフィーアはペコペコと頭を下げた。
「ほら」
「……へ?」
「食えよ」
「……あ、ありがとうございます」
アギトは料理を独り占めするのではなく、ちゃんとフィーアにも分けていた。
なんだかんだアギトは優しいのかもしれない。
「リヴェル君、ありがとうね。アギトがあれだけ必死になって食べてるの初めて見たよ」
アギトが食べている様子を見ながらカリーナは言った。
「普段はあんな感じじゃないんですか?」
「うん。もっとだるそうに食べてるよ」
「あー、なんか想像できますね」
「リヴェル君の料理が美味しいからいっぱい食べたくなっちゃうんだろうね」
「それなら頑張った甲斐がありました」
「……てめえら何こっち見ながら話してんだ。聞こえてんだよ」
アギトはそう言って、立ち上がった。
「どうしたんだ?」
「帰るんだよ。必死になって食ってたのはとっとと帰るためだったからな」
「なるほど。それじゃまたな」
アギトは一人で帰って行ってしまった。
仕方ない。
あんな会話聞かされたら俺も恥ずかしい。
「……ごめんね、私のせいで帰っちゃったよ」
「全然そんなことはないです。カリーナさんがいなかったら、そもそもアギトは来てくれてすらいないでしょうから」
「ありがとう。あんな子だけど、これからもアギトと仲良くしてあげてくれたら嬉しいな。ウチのギルド以外では印象悪いからさ」
「勿論です」
アギトが長居するとは最初から思ってはいなかった。
これを機に少しずつ仲良くなっていければいいさ。
宴会はその後も続いた。
キュウはやっぱり人気者でみんなから可愛がられていた。
『あるじ……おなかいっぱい……』
キュウの腹はパンパンになっており、苦しそうだった。
『俺の方から餌付けしすぎないように言っておくけど、キュウもちゃんと腹八分目ぐらいで食べるのやめておけよ』
『わかった……げぷ』
◇
その日の夜、俺はベッドに横になって眠りにつこうとすると、視界が歪んだ。
もしかしてこれって……。
その先を考える間もなく、俺はすぐに意識を失った。
そして俺は既視感のある何もない白い空間に立っていた。
「久しぶりですね、リヴェルさん」
「……はい、お久しぶりです。神様」
以前、アンナがマンティコアに襲われたときに手助けをしてくれた神様だ。
こうして俺を再び呼んだということは、またアンナに危険が迫っているのかもしれない。
念のため覚悟しておこう。
「心配ありませんよ。アンナさんに危険は訪れていません。平和に学園生活を送っていますよ」
……杞憂だったようだ。
「そうでしたか、よかったです……」
ホッと一安心すると、俺はこの前助けてもらったお礼を言っていなかったことを思い出した。
「この前は神様の助けがなかったら、今頃アンナはこの世にいませんでした。本当にありがとうございます」
「礼には及びません。あなたの心の強さがマンティコアに打ち勝ち、アンナさんを救ったのですよ」
「そんなことないです。神様がいなければマンティコアと戦う機会すらありませんでしたから」
「ふふふ、リヴェルさんらしいですね。さて、今回リヴェルさんをお呼びしたのは一つご連絡したいことがあったからです」
「連絡?」
「はい、先ほどリヴェルさんが遭遇したダンジョンの異常事態、その原因は私です」
ダンジョンの異常事態……モンスターハウスのことか。
確かに、あの魔素の流れは自然的なものとは到底思えなかったので神様が原因となれば納得がいく。
「……どうして神様がそんなことを?」
「リヴェルさんのお役に立てれば、と思いまして。勝手ながら少し手助けをさせてもらいました」
「凄く役立ちましたよ。複数の魔物を相手にするときの良い特訓になりました」
「お役に立てたのなら光栄です。……ですが、それはまだほんの序の口。これからリヴェルさんを取り巻く環境は徐々にですが着実に変わっていきます」
「環境なら才能を貰ったときと比べればかなり変わってますよ。それでも俺の目標は変わりません」
「やはり余計な心配だったかもしれませんね。その言葉が聞けてとても安心しました。リヴェルさんが更なる成長を遂げることを期待しています」
神様はそう言うと、俺の意識は再び遠のいていき、眠りについた。
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