24話 モンスターハウスの戦果
ダンジョンから帰ると、俺達は『テンペスト』でクエストの報告をしていた。
「……こりゃすげえな」
ロイドさんはぽつりと言った。
ロイドさんの視線の先には、倒した魔物の山があった。
それは《アイテムボックス》で取り出したモンスターハウスの戦果だった。
『テンペスト』に闘技場が無ければ、こいつらを取り出す場所を確保するのも一苦労だったかもしれない。
倒した魔物は以下の通りだった。
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【Cランク】
・トログロダイト(毛深い人型をしたトカゲ) 20体
・リザードマン(人型のトカゲ) 18体
・クァール(黒豹のような外見で両肩には吸盤のついた触手が生えている) 16体
【Bランク】
・バイコーン 12体
・ムシュフシュ (蛇の頭、ライオンの胴体、サソリの尾、四肢以外鱗に覆われている) 10体
・ガルーダ (風を纏った赤色の大きな鳥) 10体
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合計86体の魔物を倒していたようだった。
「実力は既にAランクやSランク並だな」
ロイドさんが言った。
「これだけの魔物を倒してきてくれれば、結構な額になるわね。リヴェル、ぐっじょぶ!」
ラルが嬉しそうに右手の親指を立てた。
『あるじ、魔物いっぱい倒してる! すごい!』
『まあな』
『この鳥おいしそう!』
キュウの視線の先にはガルーダがいた。
『……食べたいのか?』
『たべたいっ!』
『……よし、分かったから勝手に食うのだけはやめておけ。鳥はちゃんと焼いて食べような』
『あい』
あとで魔物の素材を解体したときにガルーダの肉を少しだけもらっておこう。
「それにしてもよくこれだけの数を一人で倒してきたわね」
「……リヴェルさんはおかしいです。モンスターハウスで耐えるという話だったのに殲滅しているんですから」
「途中から相手するのも慣れてきたんだ。そうなると、いけそう! って思うだろ?」
「えぇ……思いませんよ……リヴェルさんってもしかして……いや、もしかしなくても頭おかしいんじゃないですか?」
俺はフィーアの発言を聞いて、自分の行動を振り返ってみる。
……あれ? 否定できない。
「そうね、今回は無事だったから良いもののリヴェルは身の安全をもっと優先した方がいいわ」
「おいおい、俺は十分身の安全を考えて動いてるぞ?」
「ギルドが襲撃されたときのことをよ~く思い出してみて」
ラルはニコニコとこちらに笑みを向ける。
表情とは裏腹に何か怒りのようなものを感じる。
「はい、今後より一層安全には気を付けます」
「よろしい」
……うーん、やはり周りから見たら危ないって思われてしまうものなんだな。
正直、俺はあの状況で自分が死ぬところが想像できなかった。
危険に対する感覚が鈍い訳では無い……と思う。
なにせマンティコアのときは何度も死ぬ、と思ったからな。
まぁ、マンティコア戦を境に感覚が麻痺していることもありえるのだが。
それでも俺はあのモンスターハウスを相手にして死ぬ気は微塵もしなかったのだ。
◇
クエスト報告後は、俺の初Bランククエスト達成を祝して宴会をすることになった。
そう提案してきたのはラルで、何故か宴会の料理人に俺が任命されてしまった。
まぁ別にいいんだけどな。
《料理人》のスキルはまだ取れてなかったので俺としても嬉しかったりする。
でも宴会をするならあいつらも呼びたいな。
納品物を譲ってくれてなきゃそもそもこの宴会がされることはないわけだし。
それに窮地を一緒に乗り切った仲だ。
そう思った俺は『レッドウルフ』に向かった。
『レッドウルフ』の扉を開けると、何人かに鋭い目つきで睨まれた。
ギルド内を見渡すと、アギトが頬杖を突きながら椅子に座っていたのを見つけた。
「よう、アギト」
「あ?」
話しかけると、アギトはめちゃくちゃ嫌そうな顔をしていた。
「これからウチのギルドで宴会をするんだが、一緒にどうだ?」
「何言ってんだテメェ。こっちはお前との戦いに負けてんだぞ。宴会なんてやる気分じゃねーよ」
「いや、お前が納品物を譲ってくれなきゃ俺は負けてたさ。それに俺たちは窮地を一緒に乗り切った仲、もう友達と言っても過言ではないはずだ」
「……くだらねぇ。いかねーよ。それに俺がお前に譲ったのは先にお前が俺に勝ちを譲ったからだ」
「まったく、素直じゃない奴だ」
「ふざけたことぬかしてるとぶっ殺すぞ」
うーむ……これはアギトを説得するのは無理そうだな。
俺はギルドの中を再び見渡す。
お、いたいた。
「カリーナさん、お疲れ様です」
俺はアギトのもとを離れ、カリーナさんに近づいた。
「あ、リヴェル君だ。おつかれ~。それよりどうしたの?」
「実はこれからウチのギルドで宴会をする予定なんですけど、カリーナさんたちも来てくれたらなーと思いまして」
「おお、いいね。最後は競合とか関係なく協力してたもんね。是非行かせてもらうよ」
「いやー、嬉しいです。……あ、それとアギトにも来てもらいたいんですけど、なんとかして来させることって出来ませんかね?」
「ふふ、こちらこそアギトを気にかけてくれて嬉しいよ。何としてでも連れていくね」
「ありがとうございます!」
よし、これでアギトもきっと来てくれるはずだ。
くっくっく……計画通り。
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