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6話 カルロとの試合

 カルロと戦う日がやってきた。




 俺はこの3日間、死ぬ気で努力したが果たしてどうなることやら。




「逃げずに来たみたいだな。褒めてやるよ」


「まぁ約束したからな」



 俺とカルロは道場の中央で向かい合っている。

 ここにいる全員、カルロの勝利を確信しているはずだ。

 なにせカルロの才能は【上位剣士】だ。

【剣士】との差はもの凄く大きい。

 そして【努力】の俺とはもっと大きな差があることだろう。



「俺はこの日を楽しみにしてたんだぜ? 憎たらしいお前をボコボコに出来るこの日をよぉ!」


「あー、うん。なるほど?」


「バカにしてんのか! 俺をバカにしたこと、後悔させてやるからな」


「バカにしたつもりはない。悪いな」


「調子に乗りやがってぇ〜!」


 カルロは、かなり怒っている様子だ。

 ボコボコにしてやる、と言われて何て返事をするのが正解だったのだろうか。

 純粋に疑問に思う。


「両者、構え」


 俺とカルロは互いに竹刀を構える。


 審判はカルロ父。

 流石に門下生達の手前、公平な審判をしてくれるだろう。

 ……するよね?



「始め!」



 その合図と共にカルロは俺に接近してくる。

 速い。

 才能を貰う前とは大違いだ。



「しねぇ!」



 掛け声と共に竹刀を縦に振るカルロ。

 受け止めるが、かなり重い一撃だ。

 《身体強化》を使っていても、カルロとかなり力に差があることを感じた。



「能無しのくせに受け止めてんじゃねーよ!」


「受け止めないと試合にならないだろうが」


「うっせえ! 口答えすんな!」



 言いたい放題だな。



「いけー! カルロー!」


「リヴェルをぶっ飛ばせー!」



 他の門下生達はカルロを応援している。

 こいつに人望があるのか、それとも俺が嫌われているのか。

 分からないことだが、アウェーなのは間違いない。



 ……しかし、どうしたものか。



「オラオラ! 守ってるだけじゃどうにもならないぜ?」


「くっ──」



 弄ばれている。

 実力の差は歴然だ。

 カルロの攻撃を耐えるのに精一杯。

 今の俺の実力はこの程度なんだ。


 カルロは今、剣士程度の実力だろう。

 それに敵わない俺は下位剣士ぐらいか?

 先は、まだまだ長い。




 ……さて、魔力の残量を考えるとそろそろだな。




 今の俺の実力じゃカルロに勝てない。


 それは明確で、ハッキリと分かった。





 だが俺じゃないものを()()したら──?




 魔力は、まだある。


 この3日間にそれだけ魔力を増やしておいたからな。



「ッ! なに!?」



 今までカルロの攻撃を防いでばかりだったが、俺は防ぐのをやめ、ステップで避ける。




 これは俺の実力じゃない。



 父さんのものだ。



 ────────────────────


 ◯スキル《模倣》

 任意の人物の動きを模倣することができる。模倣した動きは魔力を消費し、再現できる。


 ◯取得条件

 このスキルを意識しながら《視力強化》を用いて、任意の人物の動きを理解する。


 ────────────────────



 取得条件に任意の人物の動きを理解する、とあるが剣聖である父さんの動きは全く見えなかった。

 だから実力を落として上位剣士ぐらいの動きを見せてもらった。

 それでギリギリ、スキルを取得できたのだ。


 ちなみに道場での出来事を話すと、父さんは笑って、


「実戦経験が積める良い機会だ。頑張れよ」


 と言っていた。




 《模倣》を使用後はカルロの攻撃を竹刀で防ぐ機会は最小限に抑えられた。

 身体が足をうまく使っているため、絶妙な距離感を保ちつつ攻撃を避けていく。



「避けたぐらいで良い気になってんじゃねーぞ!」



 なってない。

 俺が思うに他人の実力で勝つことほどむなしいものはない。


 カルロの太刀筋が段々と単純になっていくのを感じる。

 怒りに身を任せて、力を込めるだけの一撃が続く。



「クソッ……!」



 そして集中力が切れて出来る隙を《模倣》は見逃さない。


 パンッ!


 竹刀がカルロの胴を直撃した。



「……チィッ……一本、リヴェルの勝利」



 一瞬、カルロ父は悔しげな表情を見せて俺の勝利を告げた。



「マジかよ……カルロ負けちまったよ……」


「いやいやそれよりリヴェル強すぎだろ……」


「俺らバカにしてたのめちゃくちゃ気まずいな……」


「俺、明日からどんな顔して道場に来ればいいんだ?」



 ざわざわと門下生達が騒いでいる。



 あれだけ俺をバカにしていたのは、絶対に俺が勝てないと思っていたからだろう。

 それが勝ってしまったのだ。

 気まずい気持ちなのは間違いない。

 でも安心して欲しい。

 俺は今後、道場に来ることは無いだろうからな。



「これはなにかの間違いだ! 俺がリヴェルなんかに負けるはずない!」



 カルロが騒ぎだした。



「もう一回だ! もう一回勝負しろ!」


「カルロ、辞めなさい。見苦しいぞ」



 意外なことにカルロ父がカルロを叱っていた。



「カルロ、安心してくれ。俺はもう道場に来ないから」


「当然だバーカ! まぐれで勝ったぐらいでいい気になるなよ!」


「なってないなってない」



 このカルロの態度を見て他の門下生達は、



「あいつ負けてたのに何であんなこと言えるんだ?」


「きっとバカなんだよ。バカが自分なのに気付けないんだ」


「才能はあるのに頭が悪いのか、かわいそ〜」



 と、手のひら返ししているようだったが、当の本人であるカルロは怒るのに夢中で気付いていないようだ。



 俺が道場を出ると、何人かの門下生達がやってきた。



「リヴェル、ごめん! お前がバカにされてるのを見て見ぬフリしてたよ」


「お願いだ、許してくれ。だから道場にはちゃんと来てくれよ」


「カルロはバカだからお前に負けたと思ってないだけさ。門下生の中でお前が一番強いよ」



 俺は最初から怒ってはいない。

 それに俺のことを思って、こうして謝りに来てくれたし、道場にも誘ってくれている。

 でも──。



「そう言ってくれるのは嬉しいけど、俺の才能は【努力】だ。道場で剣術を習っているだけだと強くなれない。だから俺は俺なりの努力をするよ」


「……やっぱリヴェルってカッコいいな」


「昔から努力家だったよな」


「頑張れよ。応援してる」


「ありがとう」



 道場で努力しているだけでは圧倒的に効率が悪い。

 俺は周りと同じことをしているだけだと強くなれない。

 身体に負荷をかけ、それに見合うだけの結果を追い求める必要がある。


 さて、とりあえず目先の問題は解決したことだし、元気が無いであろうあいつの様子を見に行くとするか。

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[気になる点] 今のところキャラに魅力がないし設定も努力とか関係ないスキル取得チート物になっちゃったって感じ。
[気になる点] 主人公や両親、モブの言動がやたらと鼻に付く。 もっと努力した描写を増やさないと、英知スキルが凄かったって話にしかならないですね。 チートレベルの才能があって最小の努力で成果が出る環境…
[気になる点] >俺とカルロは互いに竹刀を構える。 >《模倣》を使用後はカルロの攻撃を木刀で防ぐ機会は最小限に抑えられた 竹刀が木刀になっています
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