17話 ダンジョンに挑む準備
【書籍化のお知らせ!】
第1巻
出版社:アース・スターノベル 様
イラストレーター:紅林のえ 様
発売日:6月15日
既にネット通販サイトでの予約注文が始まっておりますので、是非ご購入よろしくお願いいたします!
活動報告で『リヴェルとキュウ』のキャラデザを公開しておりますので、気になる方は是非チェックしてみてください!
フレイパーラは地下に存在するダンジョンの上に出来た都市である。
そのことから迷宮都市と呼ばれている。
冒険者ギルドの数がテオリヤ国で最も多く、王都に並ぶほど栄えているのは間違いなくダンジョンの存在が大きいだろう。
ダンジョンでは、大気中に漂う魔力のもと──魔素が魔物や宝箱を出現させる。
宝箱には、魔物の素材、ポーション、装備品、などが入っているものの宝箱自体が魔物である場合もあり、トラップもいくつか仕掛けられているのだ。
魔物や宝箱が魔素によって出現する原理は一切不明。
だが、それらは尽きることのない無限の資源であり、日々多くの冒険者がダンジョンに足を運んでいる。
ダンジョンには解明されていない謎が多すぎる。
だからこそ、ダンジョンに行く前には準備を怠ってはいけない……らしい。
準備といっても俺の場合、あまりすることが無い。
ダンジョンに挑む際にパーティを組めるのだが、定員は4名だ。
このようなとき、多くのパーティは運び屋を1人雇っているらしい。
ダンジョンで獲得したアイテムを運び屋に持たせることによって、残りの3人は戦闘や周囲の警戒に集中できるというわけだ。
だが俺は《アイテムボックス》のスキルを持っているため、別に運び屋は必要ない。
あとすべきはクルトを誘うことだが、日中はどこにいるのか分からないので夜になったらクルトが泊まっている部屋に行く予定だ。
夜になるまで鍛錬の時間にあてても良かったが、
「私、ダンジョンのこととかあまりよく分からないので準備とか手伝って貰えると、とても助かります」
フィーアがそう言ってきたので、俺は頷いてフィーアの準備を手伝うことにした。
「フィーアは最近、魔力枯渇状態にはなっているか?」
「えっ、どうしてそんなこと聞くんですか……」
「いや、ダンジョンは魔物との連戦が続くから魔力は多ければ多いほど良い。最初に会った頃からどれだけ魔力が増えているか知りたいな、と思って」
魔力枯渇状態に1日に1回はなっておくノルマがあったような気がしないでもないが、これは流石に無理があるよな。
普通は魔力枯渇状態になんて誰もなりたがらないのは嫌というほど知った。
好き好んで魔力枯渇状態になる奴なんて、かなり少ないだろう。
増える魔力も微量で1回や2回経験するぐらいじゃ大した変化は無い。
それでも、もしフィーアが毎日続けていれば魔力の量は少し変化があるはずだ。
「な、なってますよ……2日に1回ぐらいは……」
フィーアは俺と目を合わせようとせずに言った。
「2日に1回か。よく頑張ってるな」
「……あれ? え? お、怒らないんですか……?」
「魔力枯渇状態になるのはとてもしんどいことだからな。それを2日に1回もやっているんだ。怒る訳ないだろ」
「……ありがとうございます。ふふ、リヴェルさんは優しいですね」
「そんなことない」
「……あ、あのですね、実を言うとさっきの2日に1回ではなく3日に1回でした」
「えぇ……なんで少し盛っているんだ?」
「アハハ……怒られると思っていたものでつい……」
「まぁいいけどな。じゃあ3日に1回だということを考えれば、魔力はそこまで増えてないか」
「ですね、考えなしにスキルとか使ってるとすぐに魔力が無くなっちゃいますよね」
「よし、じゃあまずはポーションを買いに行くか」
「ポーションを買うんですか……うーん、お金が勿体ない気がしますね……」
「そこで貧乏性を発揮するな。今回はダンジョンの二十階層にまで潜り込まなきゃいけない。五階層とかならまだしも二十階層ともなると、長期戦になるのは間違いないから今のフィーアの魔力じゃ心許ないだろ?」
「そうなんですけど……うーん、ポーションって割と高くないですか?」
「ポーションの品質にもよるが、フィーアは1つにつき銀貨1枚のものを10個ほど買えば問題ないだろう」
「た、高い! 高いですよ! 私、今金貨2枚ぐらいしか持ってないんですよ!」
「じゃあ余裕じゃないか。クエストをこなして結構稼いでるみたいだな」
「全然余裕じゃないですよ! お金はいくらあっても足りません!」
はぁ、こうなっては仕方ない。
一応俺が頼んでダンジョンに同行してもらう形だからな。
俺は《アイテムボックス》から自作した魔力が回復する効果のあるポーションを10個取り出す。
「ほら、受け取れ」
「こ、これはポーションじゃないですか!? えっ、リヴェルさんもしかしてこれ貰っちゃってもいいんですか?」
「ああ。今回はフィーアに同行をお願いしている立場だからな。特別だぞ」
「ありがとうございます! リヴェルさん大好きです!」
調子のいいやつだな、まったく。
◇
その夜、俺はクルトの部屋を訪れた。
「夜遅くに悪いな」
「気にしないで。リヴェルと僕の仲じゃないか。それに僕もリヴェルに見て欲しいものがあったんだ」
「見て欲しいもの?」
「じゃあ早速だけど、見てもらおうかな」
クルトの身体を魔力が凄い速さで駆け巡る。
足元に青白く光る幾何学模様の魔法陣が作成されたと思うと、再びその上にもう一つ魔法陣が浮かび上がってきた。
多くの魔法使いは魔法を使用する際に魔法陣を必要としない。
それは詠唱に魔法を使用するための要素が詰め込まれているからである。
だが、クルトは魔法陣を作成している。
一体どういうことだ?
「これは《多重詠唱》というスキルさ。これを取得するのにリヴェルが教えてくれた古代魔法の知識が役立ってくれてね。お礼をしたいと思っていたところさ」
《多重詠唱》か……。
たしか《英知》で《魔力操作》に関連するスキルを調べたときにあった気がするな。
二種類の魔法を同時に使えるようになるもので、難易度はかなり高かったはずだ。
「お礼なんて気にしなくていいよ。役に立ってくれたなら何よりだ」
「……まったく、リヴェルは本当に無欲だね」
「あ、じゃあ一つだけ頼みがあるんだけどいいか?」
「もちろんだとも」
「実はBランクのクエストを受けられることになったんだが、ダンジョンに行かなきゃいけないものだったんだ。だからクルトにも是非手伝ってもらいたいなって」
「お安い御用さ」
よしよし。
クルトにも手伝ってもらえるとなるとかなり心強いぞ。
そのあと少し雑談をし、クエストの詳細は明日ギルドで説明するということになった。
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