5話 スキルツリー
今まで《英知》を使って、スキルを調べたことは何度かあった。
でも、取得条件なんてものが見えたことはない。
「取得したスキルだからか……?」
そう思った俺は何かスキルを調べてみることにした。
簡単なスキルで有用なスキルで真先に思いついたのが《筋力増幅》だった。
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◯スキル《筋力増幅》
体力を消費し、一定時間筋肉を膨張させ、強化する。前衛で戦う者は、まずこのスキルの取得することが推奨されている。
◯取得条件
筋肉を酷使し続ける。
or
魔力を放出した状態で腕立て伏せ100回、上体起こし100回、スクワット100回を連続で行う。
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やはり取得条件が分かるようになっていた。
これはもしかして【努力】の能力なのか……?
だとすれば《英知》と相性が良すぎる。
これなら強力でかつ取得可能なスキルを効率良く狙える。
《筋力増幅》の取得条件を見る。
筋肉を酷使し続けるというのは、定量的でないため漠然としている。
だが、後者は分かりやすい。
それに魔力の上限が少し増えた事と《魔力超回復》があれば魔力を放出し続けられるのではないだろうか。
やってみるか……。
──腕立て伏せ100回終了時
「魔力超回復すげえな。ずっと魔力を放出できるし、まだまだ余裕そうだ」
──上体起こし100回終了時
「魔力が切れそう……あ、あ、切れたああああァァァァ!!」
──スクワット100回終了時
「…………お、終わった」
[スキル《筋力増幅》を取得しました]
[スキル《魔力操作》を取得しました]
[スキル《身体強化》の取得条件を満たしたため《筋力増幅》が変化します]
……なんか色々と起こったみたいだが、疲労でそれどころではなかった。
◇
昨日は親曰く、ちゃんと食事をとり、身体を洗い、眠りについたみたいだが一切記憶がない。
魔力の枯渇状態は脳にかなりのダメージを与えるみたいだ。
さて……俺は昨日、《筋力増幅》を取得しようとしたら《身体強化》と《魔力操作》を取得した。
何を言ってるのか分からないと思うが、俺も何が起こったのか分からなかった。
とりあえず《英知》で調べる。
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◯スキル《身体強化》
魔力を消費している間、自身の肉体を強化できる。このスキルを取得したものは魔物を素手で倒せるだろう。
◯取得条件
《筋力増幅》と《魔力操作》を取得する。
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◯スキル《魔力操作》
放出する魔力を操作できるようになる。応用の利くスキルのため、是非取得しておくといい。
◯取得条件
放出した魔力が100を超える。
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ふむ……。
まぁこれは色々とラッキーが重なっただけっぽい。
取得条件が分かるようになったのは【努力】のおかげだろう。
【努力】の才能を授かった人は全くいないため、能力の全貌は明らかになっていない。
これからの経験のなかで臨機応変に使っていく必要がある。
しかし……スキルの取得条件が分かるのは素晴らしいな。
…………待てよ。
《身体強化》の取得条件は特定のスキルを手に入れることだ。
《英知》で取得条件がスキルに関連するものを調べれば、効率良くスキルを取得出来るのではないか?
《魔力操作》は応用の利くスキルだと言われている。
取得条件に広く関わってくるのではないか?
そう思い、俺は《英知》で取得条件が《魔力操作》に関連あるものを調べてみた。
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《能力付与》
《自己再生》
《視力強化》
《魔力循環》
《無詠唱》
《多重詠唱》
《サイコキネシス》
……etc
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「ふっふっふ……」
思わず笑みがこぼれた。
やはり【努力】と《英知》は相性が良い。
普通の人ならばスキルの取得条件が分からず闇雲に努力し、時間をかけてスキルを取得する。
だが俺はすべきことが目に見えている。
それに今の自分にどんなスキルを取得するのがベストなのかも分かるため、無駄なことをしなくていい。
これは俺の唯一のアドバンテージだ。
他の才能は成長するたびに補正が入り、強くなりやすくなっている。
だが【努力】にはそれがない。
強くなるには、いかに効率よく努力するかが鍵となる。
常識にとらわれないやり方で俺は強くならなければいけないのだ。
そして《魔力操作》に関連するスキルは結構な量、存在していた。
一つずつ条件を見ていくと、簡単なものから難しいものまであり、難易度の幅が広い。
簡単に取得できそうなものである《視力強化》を今から取得する。
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◯スキル《視力強化》
目に魔力を宿して、視力を強化する。遠くのものが見えるようになるのは勿論、動体視力も上がるため、動きを正確に捉えられる。
◯取得条件
《魔力操作》を用いて目に魔力を集中させ、1時間維持する。
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《魔力操作》は魔力放出と似たようなやり方で使用できる。
《視力強化》の取得条件は簡単だったので、さっさと取得した。
そして《英知》を使って《視力強化》に関連するスキルを探す。
……なんだこのスキル。
強い。
それに便利すぎる。
──このスキルを取得できれば間違いなくカルロに勝てる。
そう確信させるものだった。