13話 《縮地》
【書籍化のお知らせ!】
第1巻
出版社:アース・スターノベル 様
イラストレーター:紅林のえ 様
発売日:6月15日
既に予約注文も始まってますので、是非よろしくお願いします!
戦いの最中で取得できるスキルは明確な条件がないものだ。
多くのスキルは特定の動作を何回することで取得できるというものだが《剛ノ剣》や《空歩》のように、自らの持つ技術が取得に必要となるスキルも存在する。
俺が今回取得するのは、その後者で《空歩》の派生となるスキル。
その名も《縮地》だ。
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○スキル《縮地》
目にもとまらぬ速さでの移動を可能とする技術。
○取得方法
足の裏に巡らせた魔力を瞬間的に増幅し、破裂させることで推進力とし、移動する。
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《空歩》の取得は15分ほどで出来た。
その応用となる《縮地》をこの場面で使う。
それもぶっつけ本番でな。
自分でも馬鹿げている発想だと思うが、そうでもしなきゃレクスさんを倒せない。
レクスさんは間違いなく対応してくるだろうが、今までのスピードよりも一気に速くすることで僅かに反応に遅れが生じるはずだ。
その遅れの度合いが大きければ大きいほど《剛ノ剣・改》が効く。
「どうした? 考えごとをしている暇なんてないぜ!」
「くっ……」
俺の思惑を見透かしているように、レクスさんは攻撃の手を緩めない。
「動きが少し鈍くなってきたな、リヴェルの実力はこんなものか?」
レクスさんの言うように、俺の動きは少し鈍くなってきていた。
その原因は分かる。
剣聖を相手にするプレッシャーで身体が強張ってきているのだ。
剣を交えるうちに実力の差を実感したからこそ起きる現象。
強張る身体では、最大限のパフォーマンスを発揮できない。
……そういえば、マンティコアのときも同じような状況だったが、なぜか緊張はしていなかった。
実力以上のものを発揮できていた。
なぜだろう、と俺は理由を考えてみる。
……なるほど。
すぐに理由は分かった。
理由を考えたとき、アンナの笑顔が脳裏をよぎった。
次に浮かんできたのはギルドのみんな。
ラル、クルト、フィーア、ロイドさん、そして新しく加入してきた仲間たち。
俺は自然と納得し、気づけばプレッシャーは感じなくなっていた。
「まだまだ!」
声を張り上げて、剣を大きく振るい、間合いをとった。
足の裏に魔力を巡らせ、それを瞬間的に増幅させる。
この技術は《剛ノ剣・改》で用いた魔力の波を増幅させるものを用いる。
段階をちゃんと踏んでいけば《縮地》から《剛ノ剣・改》に綺麗につなげることができそうだ。
まずは足の裏に巡らせた魔力を増幅させ《縮地》を発動する。
そして次にそれを全身に切り替えることで《剛ノ剣・改》に移行する。
……いける。
俺にはそれが出来るはずだ。
やり方は分かった。
あとはその通りに動くだけ──。
◇
リヴェルは剣を大きく振り、後ろに下がった。
何か企みがあるようだ。
リヴェルはアデンさんの息子だけあって剣の基礎がしっかりしている。
才能を貰う前からずっと継続して剣を振り続けてきていたことが分かる。
この歳でこれだけの実力があるならば、将来は俺を超えるのは間違いない。
……ひょっとするとアデンさんも超えてしまうぐらいリヴェルのポテンシャルは高い。
だからこそ、その企みを見てみたくなった。
リヴェルは俺に臆せずに全力で勝ちを狙いに来ている。
だが俺も負ける気はない。
リヴェルの全力を見た上で、それを斬る。
「いきますよ、レクスさん」
ご丁寧に攻撃を知らせてくれるらしい。
何も言わずに攻撃を仕掛けるのが最も勝率が高いだろうが、リヴェルはそれをしなかった。
俺が少し待っていたことをリヴェルは理解しているのだろう。
正々堂々と戦うところもアデンさんにそっくりだ。
やはり、アデンさんの強さをリヴェルはしっかりと受け継いでいるらしい。
「来い! お前の全力を見せてみろ!」
そう言うと、リヴェルは高速でこちらに詰め寄ってきた。
今までとは比べものにならない速さだ。
これだけの力をまだ隠していたとは……!
だが、それだけで俺は倒せない。
スキル《見切り》を使い、リヴェルのスキルが《縮地》であることを判断し、また次の狙いを把握する。
《剛ノ剣》だと!?
この短い期間にこれだけの高難度スキルを使用するつもりか!
面白い……!
その《剛ノ剣》に合わせて俺が後の先を仕掛ける。
俺のもとにやってきたリヴェルが見せた一撃。
剣を振るった瞬間に俺は気付いた。
これは《剛ノ剣》ではない──。
《剛ノ剣》よりも強力な一撃だ。
これでは刃を避け、斬り返すことなど不可能。
気付くのが少し……ほんの少し遅れてしまったばかりに俺は防ぐしか選択肢が無くなったわけだ。
見事だ──リヴェルは俺の予想を遥かに超えてきた。
◇
[スキル《縮地》を取得しました]
き、決まった……。
魔力の制御を強引にやったせいか鼻血が出ていた。
……でもレクスさんのHPはゼロになっていた。
「リヴェル、君の勝ちだ」
レクスさんはそう言って、満足そうに笑った。
勝った。
でも実力の差はかなり開いていることが分かった。
だからだろうか。
勝ったけど、悔しい。
俺はまだまだ強くなる。
いや、強くならなければいけない。
レクスさんとの戦いの経験は俺に足りない多くのことを気づかせてくれた。
『ナイトメア』の情報よりも貴重なものを貰った気がする。
「ありがとうございました!」
俺は頭を下げてお辞儀をした。
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