12話 剣聖との手合わせ
【書籍化のお知らせ!】
第1巻
出版社:アース・スターノベル 様
イラストレーター:紅林のえ 様
発売日:6月15日
発売まであと二ヶ月ですね!
WEB版だけでなく、書籍にも興味を持って頂けると幸いです!
金貨1000枚を払ってもらうという提案は確かに魅力的だ。
しかし、この情報に金貨1000枚の価値があるのか。
《真偽判定》より、メアさんは嘘を言っていないが、それでも俺を騙すことは可能だ。
これは嘘を見抜くだけのスキルで、それを本人が嘘だと思っていない場合は効果が無い。
仮に初めて利用する者には情報の対価には高すぎる値段を要求する、という決まり事があるとするならば《真偽判定》では見破れない。
……確認しておくか。
「レクスさんの申し出は嬉しいのですが、俺にはメアさんが提供してくれる情報が金貨1000枚の価値があるとは思えませんね」
「ほう……」
「そうかい。じゃあこの話は無しだ。それでお前は私の情報無しで《ナイトメア》に対抗できればの話だがな」
見放すようで見放していない。
メアさんの脅すような発言から俺はそんな意図を感じた。
相手も商売をやっている立場。
客や依頼を選びはするだろうが、ある程度慎重に行うはずだ。
探りを入れようとしているのは間違いない。
「はい。メアさんの情報があればかなり楽になりそうだと思ったのですが、どうやら自力で何とかするしかないですね」
「自力で何とか出来る相手か? 《ナイトメア》の恐ろしさをお前は知らないだけだ。私からの忠告だが、そこの剣聖の申し出を受けておいた方が身のためだぞ」
「金貨1000枚を払わせるなんて、そんな大きな借りは作りたくないですよ。それに情報屋を今後も利用していくことを考慮するならば1000枚は高すぎます」
「無茶苦茶だな。我儘を言っているだけの子供だ。1000枚は《ナイトメア》に関する情報だからこその値段で不当なものではない」
「ええ。そうかもしれません。でも俺は情報の相場を知らないし、それだけの価値があるように感じられない」
「そうか。バカなやつだ。自分の実力を過信しすぎているんじゃないか?」
「では俺がそう感じるだけの証拠をお見せしましょうか?」
「証拠だと?」
「剣聖レクスさんとの手合わせで俺が勝てば、金貨100枚で《ナイトメア》の仕事を引き受けてください」
「ハッハッハ、物怖じしない姿勢は完全にアデンさん似だね。手合わせするのが非常に楽しみになったよ」
「剣聖に勝つ、か。それがどれだけ難しいことか分かって言っているのか?」
「はい」
「じゃあ負けたときはどうする?」
「そのときは俺が無礼を詫びてメアさんに金貨100枚支払いましょう」
「……フッフッフ、面白い。分かった。その提案に乗ってやろう。剣聖に勝ったとしても八百長のような勝ち方では納得しない。それ相応の実力を見せろ」
「分かりました。ありがとうございます」
正直、今の俺で剣聖相手に勝つ見込みは薄い。
それでもこの条件で手合わせをすることは大事だと俺は考える。
負けたときのこともある程度想定しているが、勝つことが一番楽な道なのは間違いない。
◇
剣聖レクスさんとの手合わせのため、闘技場に訪れた。
ルールは大会のとき同様。
上部に表示されているHPバーがゼロになった方の負けだ。
「じゃあ早速始めよう。リヴェルは僕に負けたら大変なことになりそうだけど、手加減は出来ないぜ」
「はい。そうでなきゃ俺も困ります」
「言ってくれるぜ。しかし、先攻は譲ってやるさ。かかってきな」
レクスさんは手招きした。
俺は走って距離を詰め斬りかかる。
剣撃は当たり前のように防がれる。
余裕の表情。
剣聖ともなると、歴戦の猛者なのは間違いない。
その経験から俺に負けるはずがないという自信が現れているようだった。
だが生憎と俺も負けるわけにはいかない。
俺が攻めて、レクスさんがそれを防ぐ。
剣を打ち合って分かる。
レクスさんの剣術がどれだけ俺の上を行っているか。
圧倒的な差が感じられる。
「こんなものかい?」
「さぁ、どうでしょう」
まぁそれでも負ける気はしていない。
剣士としてなら俺は相手にならないだろう。
しかし、俺はもとから剣士としての才能なんて恵まれちゃいない。
レクスさんの背後から風の刃が襲い掛かる。
無詠唱で発動した風魔法だ。
自分からではなく、魔力を離散させ、特定の地点から繰り出したもの。
完全な不意をついたが、レクスさんは襲い掛かる攻撃の気配を感じ取り、一瞬で俺の剣撃と風の刃を防いだ。
なんという身のこなし。
「……やるね。リヴェルは剣術よりも魔法の方が得意そうだな」
レクスさんの余裕の表情が少し崩れた。
今の攻撃は肝を冷やしたのだろう。
「そりゃどうも」
「よし、反撃開始だ」
攻撃を防いでばかりだったレクスさんは急に攻撃を始めた。
繰り出してきたのは、無数の突き。
剣で防ぐだけでなく、身体も使ってなんとか耐える。
少ない動作で行われる突き攻撃は隙がない。
「まだまだこれからだ!」
そして次は斬撃と魔力を用いてない純粋な攻撃が続く。
スキルも何も使っていない。
ただ持ち前の技量だけでこんなにも強いなんてな。
実力も底が見えない。
父さんと似たようなものを感じる。
負けるつもりはないと言いつつも本気を出していないのは、俺が本気を出すに値しない相手だからだろう。
……つまり、全力を出させる前に仕留める必要がある。
俺の最強の攻撃は《剛ノ剣・改》だ。
隙をつく際にこの一撃を叩き込む。
隙をつくには……今の手札じゃ足りない。
──あのスキルを取得する必要がありそうだ。
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