7話 Cランクのクエスト
7個のクエストを終わらせた俺は翌日、エレノアさんから
「では次、Cランクのクエストを5個ほど終わらせましょう! そうすればBランクのクエストのご提案が出来ます!」
そう言われ、テーブルに何枚もの依頼書が並べられた。
依頼書の右上に【推奨ランク:C】と書かれている。
並べられた依頼書に目を通す。
Cランクで提案されたクエストのほとんどは、魔物の討伐依頼だった。
「ジャイアントスライム5体の討伐、場所はヘリミア村ですか」
ヘリミア村はフレイパーラから少し離れたところにある村だ。
村の近くの平原にジャイアントスライムが出没したので、討伐してほしいとのことだ。
ジャイアントスライムはCランクモンスターだ。
この依頼は確かにCランクの冒険者に推奨すべきものだろう。
「ヘリミア村までは馬車で2時間ですね。少し時間がかかると思うので、Dランクのときみたいに一気に終わらせたりは出来ないと思いますが、頑張って進めて行きましょう!」
「馬車で2時間ですか……じゃあ、馬車で行かないので今日中にもう一つクエストをこなせると思います」
「…………そういう判断しちゃいます?」
エレノアさんは困惑しているようだ。
あれ、昨日はノリノリでクエスト押し付けてきたのに……。
「そこまで長距離の移動でもないので、馬車に乗る必要性は無さそうですし、走ったほうが鍛錬になります」
「え、えーっと……体力とか不安になりませんか?」
「はい。体力はあまり鍛えられていないので、こういう機会に鍛えていこうと思っていたんですよ」
冒険者としてクエストをこなしていく上で、移動することは必要不可欠。
今まで体力面を鍛えてこなかったのは、これを見越してのことだった。
だが、体力が尽きてクエストに失敗したー! なんてことは許されない。
それを補うために、色々と対策できそうな魔法は考えてある。
まぁ体力が尽きることなんて無いと思うが、一応な。
「発想が他の冒険者とかけ離れすぎていますね、リヴェルさんは……」
「そ、そうですか……?」
「でもちゃんとクエストをこなしてくれるでしょうし、仕事も早いなら、何も言うことはないですね。むしろそのストイックさを見習っていきたいぐらいです」
「そんなことないですよ。エレノアさんがサポートしてくれるおかげです。じゃあ、早速行ってきますね」
「はい! 頑張ってきてください!」
◇
リヴェルがいなくなったギルド内でエレノアはリヴェルが引き受けたクエストの事務処理を行なっていた。
「エレノアさんお疲れ様〜」
エレノアの前に現れたのはラルだった。
「あ、ラルさん! お疲れ様です〜!」
「見たわよ、あの報告書。リヴェルのやつ1日で7個もクエストを終わらせたの?」
ラルは年上であるエレノアを相手に少し砕けた口調で話した。
それは立場上ではラルの方がエレノアよりも上であるからだ。
そのことを理解している二人は、自然と会話を進めていく。
「そうですね、たった今Cランクのクエストを引き受けてギルドを出て行ったところです。……それも馬車を使わずに走って行くそうです……」
「流石リヴェルね……。本当に訳のわからないことをしてくれるものよ」
ラルは笑いながら頭を抱えた。
そして、思い出すのはリヴェルがしてきたとんでもない出来事の数々だった。
魔力枯渇状態を利用した誰も真似できない努力。
塩づくりに《アイテムボックス》の取得。
フレイパーラ新人大会の優勝。
もうラルはリヴェルのとんでもない実態に慣れつつあった。
「既にリヴェルさんは実力だけで言うならもうSランク冒険者と引けを取らない気がしますよ」
「……やっぱり? だからこそ、今までに例のないBランクに配属された訳だよねぇ」
「それにまだまだ強くなるでしょうね。リヴェルさんは、あの強さを手にしているというのに全く慢心がないですから」
「あーそうかも。リヴェルが目指しているのは世界最強らしいから」
「世界最強……ですか。リヴェルさんならもしかすると、なれるかもしれませんね」
「……エレノアさんが言うと説得力が違うね」
「いえいえ、そんなことありませんよ。もうかなり鈍っていますし、当時でもリヴェルさんの方が圧倒的に実力は上だと思います」
「ふふ、その真相の追求をするのは今は止めにしておくわね。とにかく、エレノアさんにギルドの受付嬢を任せて正解だったわ。みんなのサポートよろしくね」
「はい、お任せください!」
◇
ヘリミア村までの道のりをどう行こうかはある程度考えていた。
当たり前だが、ヘリミアまでの移動を短くするには、道のりを走るよりも最短距離を走るほうがいい。
だから、ついでにあのスキルを取得しておこう。
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○スキル《空歩》
魔力で空気を蹴って空中を翔ることが可能になる。
○取得方法
足の裏に魔力を巡らせ薄い膜を形成し、歩行時に吸着させる。
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魔力の扱いには長けているので、割とすぐに取得できるんじゃないだろうか。
取得方法は、まず足の裏に魔力を巡らせる。
これは《魔力循環》で代用可能だった。
そして、薄い膜を形成する──うん、完璧だ。
あとは、この薄い魔力の膜を空気に吸着させれば良いんだな。
俺はジャンプして、空を歩こうとした。
……だが、そう簡単にはいかない。
俺は空を歩くことが出来ずに、地面に着地した。
この吸着という工程、少し難しいな。
コツを掴むのに何度も挑戦することとなった。
ジャンプ、ジャンプ、ジャンプ。
その間にフレイパーラから出てくる人たち、主に冒険者たちに「なんだアイツ……?」という風な白い目で見られていた。
しかし、15分ほど練習すると、
[スキル《空歩》を取得しました]
無事、取得することができて俺は空を歩くことに成功した。
「おお……本当に空を歩いている……不思議な感覚だ」
地上を歩くのとは訳が違う。
地面を蹴ることが出来ないので、移動するにもコツがいりそうだ。
「……ア、アイツ、空を歩いてないか!?」
「おいおい、人が空を歩けるわけ──ホンマや!」
あ、周りの人が混乱している。
白い目で見られるのは良かったが、混乱させるのは迷惑になるだろう。
人目のつかないところで練習するべきだったな。
俺は地面に降りて、立ち止まっている人たちにペコリと頭を下げた。
そして《空歩》は最短距離の行く手を阻む森を越えるために使うことを決めた俺は、足に魔力を溜めて《身体強化》を使い、この場から逃げるようにヘリミア村に向かって走り去った。
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