40話 分の悪い賭け②
「アンナ、お前は絶対に死なせないからな」
「私のことなんていいからリヴェルは逃げて!」
逃げて、か。
アンナらしいな。
このままだとアンナは逃げずにマンティコアに立ち向かうだろう。
「お前を守りながら戦う余裕なんてない。邪魔だから早く逃げろ」
これで逃げてくれればいいんだが。
……いや、アンナが逃げても逃げなくても関係ない。
少し弱気になっていたようだ。
マンティコアを倒せば、それで全て解決だ。
マンティコアの殺気が凄い。
口からよだれを垂らしており、こうして間近で魔力の大きさを見ると、とてつもない化物であることが分かる。
ヤツの好物は人間。
食事の邪魔でもされたのだと思っているのだろう。
素早い動きで目の前にやってきたマンティコアは前足を振り下ろし、攻撃をしてきた。
上に飛び、マンティコアの頭に乗る。
俺のいた場所はえぐれており、一発貰えば致命傷であることが分かる。
「くらえ」
マンティコアの頭に剣を突き刺す。
しかし、表面の肉に刺さるだけ。
中には達しない。
これではわずかなダメージしか与えられていないだろう。
そこに背後から尻尾の毒針が伸びてきた。
マンティコアから飛び降りて、その攻撃をかわす。
「さて、どうするかな……」
策が無いわけではない。
魔法を放ちながら距離を取る。
マンティコアはそれをものともせずに距離を詰めてくる。
火、水、風、土、どの属性の魔法を使おうともマンティコアに弾かれる。
魔法に耐性を持っているのか、それとも俺の魔法の威力が低いのか。
真偽は分からないが、無策で全力で魔法を使い倒せなかった場合、俺の勝ち筋は消える。
勝機の薄い戦いであることは間違いない。
それに攻撃も速い。
マンティコアの攻撃で一番怖いのは毒針だ。
一番正確に、そして少しの軌道修正ぐらいは問題ないようで避けるのも困難。
防ぐのをミスれば身体が猛毒に侵される。
今までで一番、死が明確に感じられる。
集中しろ。
もっと集中力を高めろ。
……やるしかないんだ。
マンティコアを倒すには必殺の一撃《剛ノ剣》が必要不可欠だ。
おそらく俺が今放つことの出来る最大火力の魔法よりも破壊力は上だろう。
それだけ《剛ノ剣》は強さを秘めている。
だが、これは賭けだ。
《剛ノ剣》を放てば勝てるかは分からない。
これで決まらなかったときは……考えたくもないな。
「ハァ……ハァ……」
既に呼吸は荒い。
化物相手にいつまで体力が持つか……。
それでも俺がやることはただ一つ。
「……マンティコアに《剛ノ剣》をぶちかます」
これが最も勝率が高いなんて……分の悪い賭けだな。
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