33話 アギトとの戦い
これから一章完結にクライマックスに向けて一気に面白くしていきます!
【二章の1話】を見るまでは、毎日18時〜19時(都合によって前後する場合があります)に更新しているので是非リアルタイムでごらんになってください!
フレイパーラ新人大会2日目。
「さてさて! 栄えあるベスト8を飾るのはどちらの選手になるのでしょうか! さぁ今大会一番の番狂わせにして、優勝候補! 数々の強敵を圧倒してきたギルド『テンペスト』より【努力】の才能の持ち主! リヴェル選手の入場です!」
ワアアアアアアアアアアアアアアアア!
大気が震えるばかりの歓声。
ここまで来ると、かなり人気になったものだな。
俺たち三人は順調に勝ち進んでいき、ベスト8決定戦までやってきた。
「リヴェル、あんな奴ぶっ飛ばしちゃいなさい!」
「キュウ! (あるじ! ふぁいとっ!)」
「ありがとう。任せろ」
控え室からラルとキュウの声援を受けながら俺は闘技場に入場した。
そして、俺のベスト8決定戦での対戦相手は──。
「さぁこちらも同じく優勝候補! 新人冒険者のなかで最強と名高い彼はどう戦うのでしょうか! 解説のシドさんも所属するギルド『レッドウルフ』より天性の才能【最上位剣士】の持ち主! アギト選手の入場です!」
ワアアアアアアアアアアアアアアアア!
「まさかここまで勝ち上がってくるとはなぁ〜」
狼のような耳に鋭く睨みつけてくる目つき。
闘技場の中央に立ったこの時点で間髪入れずに挑発してくる。
アギトとはギルド選びの際に軽い因縁がある。
「運が良かったようだ」
俺はそう答えておく。
アギトは【最上位剣士】の才能を持つ実力者。
今までに戦ったどの相手よりも強いだろう。
そしてコイツは俺を見下していることもあり、油断させておいて損はない。
「クックック、運でここまで上がってくることは出来ねェ。それに冒険者達の間ではもう随分と噂になってるんだぜ? お前を道端に転がっているただの石だと思っていたが、俺は評価を改めることにした。──お前は俺の敵だ」
……なるほど、俺もアギトを少しみくびっていたようだ。
カルロと似たようなタイプであることは間違いないが、実力は遥かにアギトの方が上だろう。
それは戦闘においてのものではなく、行動、精神面、考え方もカルロを超えている。
初めて会ったとき、ギルドであれだけ好き勝手やっていたようだが、周囲に嫌われているような雰囲気は無かった。
それはアギトのカリスマ性がそうさせているのだろう。
本人に自覚はないだろうが。
そして今、アギトは俺に対する評価を変えた。
これがカルロとアギトの大きな違いと言っても良いだろう。
自分の価値観や考えを変えるのは簡単じゃない。
【最上位剣士】であることのプライドもあるだろうし、カルロにはできなかったことだ。
「そうか。それはなによりだ」
「ああ、だからこそ楽しみになったぜ」
「何がだ?」
「どっちが強いか試せるのがよぉ!」
「……まるで狂犬だな」
俺とアギトは剣を構えた。
程よい緊張のなか、俺の集中力はかなり高まっていた。
今なら《剛ノ剣》を取得できるか……?
少しだけその考えが頭をよぎったが、すぐに流した。
そんな余裕があるほど、俺は強くなったわけでもないのだから。
現状の最善を俺は尽くし、優勝するだけだ。
「それでは試合開始!」
実況の合図と共に俺たち二人は動き出した。
そして交わる剣は今までで最も強烈な音を発した。
それは観客が騒いでる中でもしっかりと闘技場全体に響き渡っていた。
「ハッハッハ! こうでなくっちゃなぁ!」
アギトは笑いながら剣を乱暴に振り回す。
だが、その剣撃全てが俺を明確に捉えており、少し受けにくいものだった。
怒りに身を任せたものとは違う。
本能で動いているような、そう野生の魔物を相手にしているような印象だ。
「こ、これはなんとハイレベルな戦いでしょうか! これが優勝候補のぶつかり合い! 両者、一歩も引きません!」
実況の通り、一歩も引かない展開が続きそうだと思った。
「さすがだな。【最上位剣士】の才能を持つだけはある」
「まだ実力を出し切っていないのによく言うぜ」
「それはお互い様だろ?」
「ハハハ……やっぱお前面白ェわ」
そう言うと、アギトの剣撃は鋭さを増した。
一撃が重く、手数も多い。
仕方ない。
俺もギアを上げるか。
《身体強化》を使い、魔力を消費する。
「ほぉ、やるねェ」
アギトの剣撃に対応していくと、アギトは更に実力を見せてくる。
お互い一歩も引かない状態が続いたが、先に一撃を浴びせたのはアギトだった。
これは単純に剣術の実力がアギトの方が上だったということだ。
その剣筋は才能を貰ってから、鍛え上げたものではない。
幼い頃から地道に積み重ねてきたものだと分かる。
「ハハ、勝負アリだな」
一撃を浴びせたアギトは勝ち誇るように笑った。
「本当にそう思っているのか?」
俺はアギトから一撃をもらうのは仕方ないと打ち合いの最中で思った。
重要なのはその後の展開。
一見ピンチに見える状況をどうチャンスに変えることができるか。
今まで俺はずっと剣だけで戦ってきた。
それゆえに、打ち合いを制することは試合を制することと同じに思えてしまう。
油断が生まれるのは仕方のないことだ。
だが、その隙を俺は見逃さない。
剣を握っていない左手からアギトの顔面に向けて火魔法を放った。
顔全体を覆うほどの大きさの火の玉が直撃する。
「なにィィィッ!?」
そして、ここでたたみかける。
ダメージを闘技場により肩代わりされており、痛みは感じないものの火魔法の直撃により、視界は遮られている。
これにより、次の一撃を回避することも防ぐことも不可能だ。
《身体強化》の出力を出来る限り上げ、今放つことのできる最強の一撃をお見舞いする。
「悪いな」
正々堂々とは言えないやり方に少し罪悪感を覚えた俺はそう言いながら、剣を振った。
俺の一撃がアギトに炸裂する。
そして、HPバーはゼロになった。
「な、な、なんと! 勝負が決まったのはわずか一瞬の出来事! リヴェル選手、咄嗟の機転により試合を制しました! リヴェル選手、ベスト8決定!!!」
ワアアアアアアアアアアアアアアアア!
「まじかよ! あいつ剣術だけじゃなくて魔法も使えるのかよ!」
「【最上位剣士】のアギトを倒しちまうとはな! これはもう優勝決まったも同然だろ!」
俺が魔法も使えることは、これで周囲に知れ渡ってしまったな。
一度しか使えない奥の手を使ったようなものだな。
だが、この手を使わなければアギトに勝つのはもう少し苦労する。
それに……最善を尽くすと決めたからにはなんとしてでも勝たないといけないからな。
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