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31話 一回戦

「さてさて! 異質な才能【努力】の少年の対戦相手はギルド『ソードクラウン』よりオスカー選手! 才能は【上位剣士】です!」



 わー! わー!



 会場が盛り上がる。

 それだけ【上位剣士】の才能の持ち主は優秀だということか。



「こりゃ一方的な試合になりそうだな」

「ちげえねえや」


 観客席からそんな会話が聞こえてきた。


 俺と対戦相手のオスカーは闘技場の中央で向かい合わせになる。


「せっかく勇気を振り絞って参加してくれたみたいだけど、ここで終わりだ」


 オスカーは剣をこちらに向けて言った。



 フレイパーラの闘技場は一つの魔道具だ。

 そして、魔道具の中でも最上位クラスであり、効果が凄まじい。


 肉体に与えるダメージを一定のレベルまで肩代わりしてくれるのだ。

 その限界を示すのは、俺たち対戦者の上に表示されているHPバー。

 これがゼロになった方が敗者であり、強制的に試合は終了される。


 だからこそ、ここまで多くの人を魅了するのかもしれない。



「お手柔らかに」


 俺はオスカーに返事をした。


「それは無理だな。手加減は苦手なんだ」


 そうかい。



 俺たち二人が剣を構え、会場の熱気が最大になったとき、



「それでは試合開始!」



 その合図を聞き、オスカーは真っ先に動き出した。

 一度俺は【上位剣士】の才能を持つカルロと戦ったことがある。

 そのおかげで余裕はあるが、当時は《模倣》で上位剣士レベルにまで実力を落とした父さんを再現して勝っただけ。

 油断はできない。


 剣と剣がぶつかり合う。


 甲高い金属音が鳴る。


 カルロと戦ったときは、一撃、一撃がかなり重く感じた。

 だが今はそう思わない。

 むしろ、この程度なのか……? と油断してしまうレベルだ。


 しかし、この考えは良くない。

 オスカーが俺を見下していたことを考えると、実力のほとんどを出していない可能性がある。

 それに手加減は苦手だとも言っていた。

 このことから何か奥の手を隠しており、今は俺を油断させるための罠だとも考えられる。



 ……俺の思考とは裏腹に会場は、全く一方的でない試合展開にざわざわとどよめいていた。



「おーっと!? これは予想外の展開! リヴェル選手、なんとか攻撃に耐えています!」


「見たところ互角の戦いを繰り広げていますね。【努力】の才能なんて聞いたこともありませんが、これはあなどれないですね」


「なるほど! シドさんが認めるほどリヴェル選手の実力は高いようです!」



 戦いの最中にこうして実況と解説を聞いていると少し恥ずかしい気分になるな。



「クソッ!」 



 オスカーが気に食わなそうな表情をする。

 その怒りは剣筋に現れているようだった。

 先ほどよりも力が入り、その反面正確さが損なわれていた。

 そのおかげで俺はオスカーに2回ほど剣撃を当てることに成功した。


「初めにダメージを与えたのはリヴェル選手! オスカー選手のHPバーは既に半分ほどになっています!」


「リヴェル選手には余裕が感じられますね。彼の動きからは、まだ底が見えない」


「な、なんと! リヴェル選手は、まだ力を隠しているようです!」


 流石はSランク冒険者なだけはある。

 シドさんの言っていることは的中している。


 観客の反応は最初とかなり変わっていた。


「いけー! リヴェルー!」

「がんばれー!」


 俺を応援する声がチラホラと聞こえるようになってきた。



「てめぇ俺の晴れ舞台に泥を塗ってくれたな! 俺よりお前が目立ってどうする!」



 オスカーの剣撃に更に力が込められた。



「仕方ないんじゃないか? それだけ俺の印象が変わったってことだろ」


「ああそうかい! だったら早急に終わらせてやるよ!」



 オスカーは後ろに飛んだ。



「おっと、オスカー選手! リヴェル選手と距離を取りました!」


「何か秘策があるようですね。次の一撃で決着がつくでしょう」



 あの言動から考えるにオスカーは何かしてくるつもりだ。

 解説の言うとおり、次で決着がつく。



「まさかお前相手にスキルを使うことになるとは思わなかったぜ」



 オスカーからわずかな魔力の反応が見えた。

 そのとき、空気の流れにかすかな変化が生じていた。



「斬り刻まれろ──《疾風蓮華》」



 オスカーは風魔法を応用したスキル《疾風蓮華》を繰り出してきた。

 オスカーが駆け出した瞬間に俺の背後へ回り込んでいた。

 その姿はまさに疾風とでも言うべきか。




 だが、俺がスキルの取得を優先せずに身体能力を強化していたのには訳がある。




「なにッ!?」




 オスカーの剣撃は空を斬った。



 それもそのはず、俺は更にオスカーの背後へ回り込んでいたのだから。



 多くのスキルは身体能力を瞬間的に上げ、自身の能力以上のものを発動させる。

 しかし俺はそれが落とし穴だと感じた。





 ──なぜなら、身体能力を上げればスキルが無くともそれと同様の動きが出来るからだ。






「終わりだ」




 オスカーはそれ以上成すすべなく、俺の剣に斬られた。


 そして、HPバーはゼロになった。



「な、な、なんと! リヴェル選手がオスカー選手の動きを上回りました! そして消え失せるHPバー! 無傷でフレイパーラ新人大会の初戦を制したのはリヴェル選手です!」



「「「「うおおおおおおおおおおおおおおお!!!!!!!」」」」




 鳴り止まぬ歓声。




「すげえな! とんでもねえやつが現れたもんだ!」

「リヴェル! これから俺はお前を応援するからよ! 頑張れよ!」




 ……あれ、優勝せずとも評価がくつがえってないか?


 まぁいい。


 周りの評価などは気にせず、俺はただ目標のために優勝を目指すとしよう。




【皆様へのお願い】


「面白そう」

「続きが気になる」

「更新応援しています」

「書籍化おめでとう!」


少しでもそう思って頂けたら、


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(……評価してもらえると、モチベがめちゃくちゃ上がるので最高の応援になります)


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[気になる点] 登場人物の口調がほぼ同じであること
[良い点] いいね、面白い。
[一言] アルファポリスから来ました。努力と馬鹿にされてからの手の平返しが凄いですwリヴェルがどう強くなっていくのかが楽しみです。
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